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ある日、スミレは考えた
しおりを挟む心理学の本を読んでいたら、
自分の個人情報を開示する量と、
相手への好感度は比例するらしい。
ってことは私、
アナタのことがべらぼうに好きなのかも。
ええ、ええ。
悔しいけど大好きみたいなんです。
………………
「ええっ、とうとう佳純も結婚するの?!うわっ、うほっ、おほっ」
ゴリラ状態になった私に、正面に座っている藤井がトドメを刺す。
「これで独身は残り2人…か」
今日は会社の同期仲間で集まっており。
月日の流れというのは残酷なもので、最初は20人近く集まっていたというのに結婚や出産を理由に1人消え、2人消え、最終的には6人となってしまった。
私こと高梨董32才。
大学卒業後、いわゆるゼネコンに入社。
建築系の資格を所有せずに採用されたのは、父の縁故をフル活用したお陰である。いや、私が望んだことでは無く、入社後にそうだと知ったのだが。
父は業界ではそこそこ有名な不動産会社の社長で。兄2人に続いてようやく生まれた私は、幼い頃から『蝶よ花よ』と可愛がられ、何の苦労も知らずに育った。
母も生粋のお嬢様で、生まれてから1度も勤労という行為をしたことが無く。湯水の如く金銭を遣い、花を愛でて暮らす日々。
そりゃもう平和過ぎる毎日はとても退屈そうで、ある日、私は気づいてしまったのである。
「いらっしゃい!あら、スミレちゃん!大きくなったわね。ウチの子より2つ下だから、今年10歳になったところかな?うふふ、内緒でオマケしておいてあげるわね」
この人は幼馴染のタカちゃんのお母さんだ。
…朝早くからパン屋でレジを打つ、この人の方が楽しそうなのは何故なのかと。いつだったか我が家でママ友同士がお茶会を開き、母がその際にこう言っていた。
「そうそ、大場さんのところ、離婚したみたい。大変よねえ、小さなお子さんもいるのに。朝はパン屋で働いて、昼は運送会社で事務をしているんですって。そんなの私には絶対無理だわあ~」
…確かに無理だろう。
しかし、私は心の中で叫んでいた。
>タカちゃんのお母さんの方が、
>皆んなから必要とされてて、
>楽しそうだよ!
それにウチの母は気づいていないのだろうか?だって見ていれば分かる。あっちは目がキラキラしているけど、お母さんは目が死んでるよ。
「うふふ、失礼かもしれないけど私、『自分って恵まれているな』と思ったの。皆さまも今の生活に感謝致しましょうね」
>違う!違うんだよ、お母さん!!
「ええ、そうですわね。さあ、特別にブレンドして頂いた紅茶葉ですの。皆さま、冷めないうちに召し上がれ。この香り、ほんと幸せ…」
そんなの全然幸せそうじゃない。タカちゃんのお母さんの方が、10倍は幸せそうに見えるよ?
…こうして私は気付いてしまったのだ。
恵まれすぎると人は退屈する生き物で、多少の“苦労”は生きていく上で絶妙なスパイスにとなる。甘味を引き立てるため少量の塩を隠し味として使うように、“苦労”は万人に必要なアイテムなのだと。
残念ながらそのアイテムはなかなか入手出来ず、考えあぐねた私は人間関係で苦しむことにした。
計画を練りに練り、実行したのは高3の春。
当時、異常にモテていた矢野航平に告白し、交際を始めた途端、様々な困難に襲われる。雨の中、屋上に締め出されて風邪を引き、教科書をゴミ箱に捨てられ、見るに耐えない言葉を机にデカデカと書かれ。
──そう、何もかも狙い通り。
私は自ら望んでその嵐へ突入して行ったのだ。
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