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ヒグッチと急接近
しおりを挟む慌てて志季さんと樋口さんを見ると、2人とも無言で手を洗い、それからこれまた無言でオバさんたちを各自1人ずつ肩を抱いて歩かせたかと思うと、そのまま…勢いよく玄関から放り出した。続けてバッグや上着も。
廊下でギャアギャア喚く2人に、樋口さんがそれはもう爽やかな笑顔でこう言う。
「ごめんね~。行儀が悪いコは嫌いなんだ。もう個人的に会うことは二度と無いかな?ふふ、これ以上騒ぐと、警察に通報しちゃうよ。早く帰ってね~、バイバ~イ」
…というワケで。再び4人で餃子づくりを再開し、無事完食する。樋口さんとはこれが初対面だったのだが、何故かそれ以降も志季さん目当てで遊びに行くと必ずと言っていいほどそこにいて。
志季さんとの距離は全然変わらないと言うのに、樋口さんとの距離が急速に縮まってしまうのだ。
だって私は弱い人間だから、
ラクな方に流れてしまうのです。
「って、ポエム読んでるんじゃないわよ奈月。何を無駄に樋口さんと仲良くしてんの?アンタ、お兄ちゃんと付き合いたいんじゃなかった?!」
「うう、だって話、続かないし。ヒグッチは話題豊富で会話が続くんだもの~」
ここんとこ毎日、アッちゃんからのお叱りを受けている気がする。でも、だって、どうしろと。一緒にいても何を考えているか分からないし、たぶん私が志季さんを好きだということは伝わっていると思うけど、それに対しても無反応だからね!!
「攻め方が分かんない。ていうか私、自慢じゃ無いけど今まで相手から言い寄られて付き合い出すパターンしか経験したことないから、自分の方から動くなんて初めてなんだもんッ」
「うわっ、本当に自慢だわね。モテモテ自慢!それなら樋口さんの真似すればいいじゃない?あの人って狙った獲物は必ず仕留めるらしいし、せっかく仲良くなったのならそのテクを盗みなさいよッ」
なんとなく名案のような、そうでも無いような。しかし、八方塞がり状態だった私は藁にも縋る思いでその案に乗ることにしたのである。
「へ?志季を落とす方法を教えて欲しい??これまた直球で訊いてくれちゃうねえ」
「シーッ、声が大きいよヒグッチ。本人の耳に入っちゃうでしょ?!あのね、実は私、志季さんのことが好きで。だからどうにかして付き合いたいの」
一瞬だけ哀しそうな目をした気がしたけど多分それは私の勘違いで。すぐにヒグッチはいつもの軽い感じで私を口説き出す。
「あのさ、志季はイイ奴だ。それは俺も認めるけど、彼氏としてはどうかなあ?」
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