朝日家の三姉妹<3>~奈月の場合~

ももくり

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愛なんて無い

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 唇を離した途端、羞恥心で死にそうになったがそれを感じさせまいと真顔で踏ん張る。そして、そっとその横顔を盗み見た。
 
『いちいち女の部分を出すなよ面倒臭い』とか、『女のクセに発情してんのかよ』なんて思われたりしていないだろうか?いや、そんなことを気にしていたら自分の方からキスなんて出来ないけどねっ。
 
「えと…、コーヒーでも淹れて来よっかな」
「じゃあ私も手伝います!」
 
 颯爽と立ち上がったのに、俺1人で大丈夫と言われスゴスゴと腰を下ろす。
 
 もしかして嫌われちゃったかな。
 でも、こうでもしないと距離が縮まらないし。
 
 ショボンと膝を抱えて座る私に熱々のコーヒーが入ったマグを渡しながら、志季さんは有り得ない言葉を口にした。
 
「キス、上手だね」
 
 それはつまり『大勢の男とキスしまくっただろ、このビッチ』的な意味合いなのだろうか?だとすれば何と答えれば良いのかな?
 
「は…あ。それなりに経験を積めば誰でもこうなりますよ。志季さんだって」
 
 ちょっとだけ皮肉も込めてみたのだが、そんなモノは伝わらなかったようだ。
 
「嘘、俺でも?」
「はい、志季さんでも」
 
「じゃあ、俺も上手くなりたい」
「……」
 
 向上心を持つことは良いことだと思いますけど、でも、あの、何マブタ閉じてんですか。まさかキス待ち状態ってこと?あたしゃ若殿様の筆おろしをする乳母なの?いや今はキスのみだけど、この調子だといつかソコに到達する気がする。
 
 んちゅ。
 
 仕方ない、してあげます。
 何となく悔しいけど。
 
 ふと、何が悔しいのかと自分で自分に問い掛けてみる。するとその答えは簡単だった。私はこの恋が上手くいかないことを知っていて、近い将来、志季さんがどこかの誰かとキスすることを悔しがっているのだ。きっと相手の女性
はウットリするだろう…私が伝授した技術で。
 
 この人が選ぶのはどんな女性かな?
 
 残念ながら想像すればするほど、私とは真逆のタイプの女性だったので少しだけ落ち込む。うん、ヒグッチの言うとおりだね。この関係は私が諦めるまで続くらしいけど、どうやらその日は確実に訪れそうだ。
 
 心は別れの準備を進めているというのに、何故か体の方はどんどん接近してしまうワケで。それ以降、志季さんに会うたびキスをねだられ、次第にそれが当たり前の日常となってきて。
 
 数か月後、私たちは体を繋げる。
 
 多分、向こうは単なる好奇心からで、私の方は意地みたいなものだろうか。とにかく愛なんて無かったことだけは分かっていた。
 
 
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