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俺、頑張る(志季視点)
しおりを挟むだってっ、元はと言えば奈月ちゃんの方から『どうしても』と迫って来たから付き合い出したのに。それにキミは親友のお兄さんというだけで寝たりするのか?というかさ、もしかしてそっちの男の方が好みだったってこと?
こんなに好きにさせておいて、飽きたらポイッと捨てるんだな…。ああ、そうか、やっぱり女なんてそういう生き物なんだ…。
項垂れる俺の真横にピタッと接近して来たのは、樋口と明恵で。左右から2人同時に喋り出す。
「ここが正念場だぞ」
「お兄ちゃん、奈月は試しているのよ!」
おいおい。気が合うのは分かるけど、一緒に喋るのは止めてくれ。どっちを聞けばいいか分からなくなるだろッ。
「お前、ココで逃したら一生独りだからな!」
「『喧嘩中で拗ねているだけ、本当は俺が彼氏なんですよ』と余裕綽々な感じで言ってみて!」
「奈月ちゃんという極上の女を知ってしまったお前は、もう他の女じゃ満足出来ない体になってしまったんだ!」
「大丈夫、お兄ちゃんは顔だけなら勝ってる!」
うるせえな、おい。
耳元でギャンギャン騒ぐな。
俺は今、真剣に悩んでるんだぞ?!
──このまま手放すべきかどうか。もし付き合い続けたとしても、いつか別れが訪れるだろう。だって奈月ちゃんは魅力的すぎる。放っておいても言い寄られるだろうし、選択肢は明らかに他の女性たちよりも多いはずだ。これ以上深入りする前に離れておいた方が、傷つかなくて済む。
…と、これまでの俺ならそう言っていたよな。
でも、残念ながら今は違う。
何故なら、既に深入りしてしまったから!!
ずっぷりどっぷり奈月ちゃんに嵌ってて、抜け出せなくなっているのに何を今さら。多分、いま離れてもダメージは大きいワケで。それならもう少し頑張って続けようじゃないか。
大丈夫、覚悟は出来ている。
みっともなくても構わない。だって、恋ってそういうモノなんだから。グチャグチャしてて目を背けたくなるほどの汚い感情が、何故か美しいと思えてしまうんだ。
凄いよな、恋って。
自分の中にある劣等感とか羞恥心とか孤独とか、そんなものを思いっきり膨らませておきながら、それを乗り越える強さも同時にくれるんだ。
俺、いくよ。
樋口が頑張ったように、
いや、誰もが頑張ったように、俺も頑張る。
握りこぶしに力を込めたまま立ち上がり、俺は勇気を出して彼女に話し掛けた。
「…奈月ちゃん!」
※志季sideはここで終了です。次からは奈月視点に戻りまーす。
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