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その25
しおりを挟む>…俺は
>…俺は七海が
>…俺は七海が死ぬほど好きなんだ
こんな決めゼリフも湊が言うとサマになるというか、余りにも嵌り過ぎていて違和感が無いな。
でも祥の不器用だけど一生懸命な告白を聞かされた後だと、若干、湊の告白の有難味が薄れた気が。ごめん、湊。アナタはアナタなりに勇気を出してその言葉を紡いでくれたはずなのに、如何せん、その美しい顔が邪魔をするのだ。
『決まった!俺ってカッコイイ!』(ドヤア)…と、私の脳内で勝手に補足修正されてしまうんだな。
「なな…み?何だよ、何か返事してくれよ」
「えっ、ああ、うん…」
気付けば脇汗がダラダラと流れていた。何故なら祥が真横に座り、私達の会話に聞き入っているからだ。そうじゃなくても、こんなラブシーンもどきの…いや、もうこれラブシーンだよね、とにかくそんな気恥ずかしい場面を第三者に見られていること自体、辛いのに。その第三者が義弟で、しかも自分のことを好きだと数分前に告白してくれた相手だなんていったいコレ、何の罰ゲームだ?
祥の肩が少し揺れたので視線を彼に移すと、どうやら体を湊に向けて座り直したらしく、そのまま祥はポツリと言った。
「姉ちゃんを俺に返してください」
先程の告白では『七海』呼びだったはずが、『姉ちゃん』に戻ったのは緊張しているせいだろうか。いつの間にか右手を祥に握られていて、ジットリと濡れたその手の平からもそのことが伝わってくる。
「いやだ、返さない。…そんなのズルイよ、だって、俺、これでも随分譲歩してるんだぞ?普通だったらさ、この同居生活を無理矢理にでも解消させるはずだ。七海のことを好きな男と同じ空間に住まわせるって、そんなの何が起こるか分からないじゃないか。たまに愛を囁いたりなんかして、隙さえあればキスも出来るし、突然押し倒されるかもしれない。そんな状態を許しているのは七海がこのままの生活を望んでいるからで、俺が七海のことを信じているからだ。そう、俺は七海を信じている。すっごくすっごく信じているんだぞ!」
「湊…」
興奮した湊は、祥が握っていた私の右手を奪い取り、まるで祈っているかの如く私の両手を自分の手で包む。
「だけどっ、たまに不安が押し寄せて来るんだ!俺のこと、本当はそんなに好きじゃないって知ってる。それでも七海は俺を選んでくれたから、この関係を1日でも長く続けるため頑張るしかないじゃないか。…なのに酔ってあんな女と寝ちゃって、俺、バカだ。絶対にもう他の女とはしないから、それでもダメ?なあ、七海…どうすれば俺のこともっと好きになってくれる?」
驚いて声が出なかった。
湊が、泣いている。
それもちょっぴり鼻水を垂らし、まるで地団駄を踏んでいる小学生みたいに『七海が欲しいよ~』と全身で叫んでいる。
「湊…、可愛い…」
無意識に呟いたその言葉に彼は一瞬だけ目を見開き、そして優しく笑った。
「なんだよ、ソレ…」
「だって、そう思っちゃったんだもん」
仕方ない、この人はきっと私がいないとダメなんだ。星の数ほどの女性と付き合ってきただろうに、その中から選んだのがパッとしないこの私って、
ほんと女を見る目無いよね。
「ごめんね、祥」
先程とは違う想いを込めて、この言葉を吐く。それで全てを悟った義弟は、静かに頷いた。
「何度でも言う。俺は七海が好きだ」
「私も好きだよ、湊」
それは口にしてみると、とても自然で。
拍子抜けするほどシックリと唇に馴染んだ。
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