25 / 45
その25
しおりを挟む>…俺は
>…俺は七海が
>…俺は七海が死ぬほど好きなんだ
こんな決めゼリフも湊が言うとサマになるというか、余りにも嵌り過ぎていて違和感が無いな。
でも祥の不器用だけど一生懸命な告白を聞かされた後だと、若干、湊の告白の有難味が薄れた気が。ごめん、湊。アナタはアナタなりに勇気を出してその言葉を紡いでくれたはずなのに、如何せん、その美しい顔が邪魔をするのだ。
『決まった!俺ってカッコイイ!』(ドヤア)…と、私の脳内で勝手に補足修正されてしまうんだな。
「なな…み?何だよ、何か返事してくれよ」
「えっ、ああ、うん…」
気付けば脇汗がダラダラと流れていた。何故なら祥が真横に座り、私達の会話に聞き入っているからだ。そうじゃなくても、こんなラブシーンもどきの…いや、もうこれラブシーンだよね、とにかくそんな気恥ずかしい場面を第三者に見られていること自体、辛いのに。その第三者が義弟で、しかも自分のことを好きだと数分前に告白してくれた相手だなんていったいコレ、何の罰ゲームだ?
祥の肩が少し揺れたので視線を彼に移すと、どうやら体を湊に向けて座り直したらしく、そのまま祥はポツリと言った。
「姉ちゃんを俺に返してください」
先程の告白では『七海』呼びだったはずが、『姉ちゃん』に戻ったのは緊張しているせいだろうか。いつの間にか右手を祥に握られていて、ジットリと濡れたその手の平からもそのことが伝わってくる。
「いやだ、返さない。…そんなのズルイよ、だって、俺、これでも随分譲歩してるんだぞ?普通だったらさ、この同居生活を無理矢理にでも解消させるはずだ。七海のことを好きな男と同じ空間に住まわせるって、そんなの何が起こるか分からないじゃないか。たまに愛を囁いたりなんかして、隙さえあればキスも出来るし、突然押し倒されるかもしれない。そんな状態を許しているのは七海がこのままの生活を望んでいるからで、俺が七海のことを信じているからだ。そう、俺は七海を信じている。すっごくすっごく信じているんだぞ!」
「湊…」
興奮した湊は、祥が握っていた私の右手を奪い取り、まるで祈っているかの如く私の両手を自分の手で包む。
「だけどっ、たまに不安が押し寄せて来るんだ!俺のこと、本当はそんなに好きじゃないって知ってる。それでも七海は俺を選んでくれたから、この関係を1日でも長く続けるため頑張るしかないじゃないか。…なのに酔ってあんな女と寝ちゃって、俺、バカだ。絶対にもう他の女とはしないから、それでもダメ?なあ、七海…どうすれば俺のこともっと好きになってくれる?」
驚いて声が出なかった。
湊が、泣いている。
それもちょっぴり鼻水を垂らし、まるで地団駄を踏んでいる小学生みたいに『七海が欲しいよ~』と全身で叫んでいる。
「湊…、可愛い…」
無意識に呟いたその言葉に彼は一瞬だけ目を見開き、そして優しく笑った。
「なんだよ、ソレ…」
「だって、そう思っちゃったんだもん」
仕方ない、この人はきっと私がいないとダメなんだ。星の数ほどの女性と付き合ってきただろうに、その中から選んだのがパッとしないこの私って、
ほんと女を見る目無いよね。
「ごめんね、祥」
先程とは違う想いを込めて、この言葉を吐く。それで全てを悟った義弟は、静かに頷いた。
「何度でも言う。俺は七海が好きだ」
「私も好きだよ、湊」
それは口にしてみると、とても自然で。
拍子抜けするほどシックリと唇に馴染んだ。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます
氷雨そら
恋愛
本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。
「君が番だ! 間違いない」
(番とは……!)
今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。
本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。
小説家になろう様にも投稿しています。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
元男装傭兵、完璧な淑女を演じます。――嫁ぎ先はかつての団長でした!?
中野森
恋愛
貧乏男爵家の長女クラリスは、弟の学費を稼ぐために男装して傭兵団へ入団した。
副団長にまで上り詰め、団長をはじめとした仲間から信頼を得るが、決して正体は明かさなかった。
やがて戦争が終わり、傭兵団は解散となる。
出稼ぎするために流した嘘の悪評により、修道院入りを覚悟していたクラリスだったが、帰郷した彼女を待っていたのは父からの「嫁ぎ先が決まった」という一言だった。
慌ただしく始まる淑女教育、そして一度も未来の夫と顔合わせすることなく迎えた結婚式当日。
誓いの言葉を促され隣からきこてくる声に、クラリスは凍りつく。
……嘘でしょ、団長!?
かつての想い人でもある傭兵仲間が今は夫となり、妻の正体には気づいていない――気づかれてはいけないのだ、絶対に!
本作品はゆるふわ設定、ご都合主義、細かいことは気にしたら負け!
※この小説は、ほかの小説投稿サイトにも投稿しています。
番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~
雨宮羽那
恋愛
魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。
そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!
詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。
家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。
同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!?
「これは契約結婚のはずですよね!?」
……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……?
◇◇◇◇
恋愛小説大賞に応募予定作品です。
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"
モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです!
※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる