私に彼氏は出来ません!!

ももくり

文字の大きさ
32 / 45

その32

しおりを挟む
 
 
 湊からのLINEメッセージに既読をつけてしまったことを悔いながらも、取り敢えずスルーした。どうしてかと言うと、美空オンステージが終了したことにより、隠れた主役であるこの私に注目が移ったからだ。

 以前から顔だけは見知っていたが、ガッツリ話すのは初めての人ばかりのこの席で、全てを無視してスマホをポチポチするなんて度胸、私には無かったのである。

 しばらく話してみると、男性陣は全員真面目な性格の様に思えた。まあ、リーダーである松原さんからして堅物なので、その部下達も同類なのかもしれない。かと言って真面目一辺倒では営業職は成り立たないだろうし、それぞれが試行錯誤した結果、こんなチャラ風味の仕上りになったのだろう。

 などと考えながら、改めて4人の男性を観察してみる。

 上品で大人の魅力を振りまく松原さん、
 インテリメガネで低体温っぽい甲斐さん、
 トミーの愛称ピッタリの愛くるしい富井さん、
 そして茶髪でいかにも軽そうな番場さん。

 中でも番場さんは、先入観のせいで苦手意識を抱いたまま接してしまったが、話せば話すほど実直な性格が伝わってくる。果たしてこんな人が本当に二股なんてするのだろうか?やはり噂なんてアテにならないぞと実感しながら私は、目の前のその人に質問を投げた。

「あのう、番場さんが二股相手の女性からバケツの水をかけられたという話は本当なのでしょうか?」
「…っふ?ゲホッ、ゴフッ」

 唐突過ぎる質問に、激しく咽まくっている。

「ご、ごめんなさい。今までの私は番場さんが遊び人だと決めつけていたんですが、実際にこうして会ってみるとなんだか随分印象が違うな…と。軽いのは口調だけで、周囲の人に気配りが出来るし、優しいし、何と言うか…物凄く繊細な感じがするんですよ。だからこそ、事実が知りたいなと思いまして」
「…あ…はは、そんなことを言われたの、…初めてだよ」

 最初は口籠っていた番場さんも、ゆっくりと静かに語り出す。
 
 番場さんには1つ年上の兄がいるのだと。2人きりの兄弟で、見た目はソックリなのに何故か中身は真逆らしく、人付き合いが苦手で不器用な兄と、人懐っこくて世渡り上手な弟は幼い頃からずっと比較されて育ったのだと。

「兄の方が頭もいいし、何をやっても優秀だったんだけど。…でも、母親は放っておいても大丈夫なシッカリ者の長男よりも、危なっかしくて手の掛かる次男の方が気になったみたいで。なんか、俺にばかり世話を焼いてるな~とか思ってたら、中学、高校と進むにつれてそれが顕著になっちゃって」
「顕著に?」

「兄の進路相談の日に俺がたまたま風邪を引いたんだ。熱はそんなに高くなかったし、大丈夫だからと言ったのに、母は兄の将来を決める大切な面談よりも俺の看病の方を選んでしまった。兄が難関校を受験し、合格した時だって『おめでとう』の一言も無くて、反対に俺がその辺の高校に受かった時は大喜びしてテーブル一杯にご馳走を並べたりとか…万事が万事この調子。いつしか兄は俺と母を憎む様になってしまったというワケ」
「あらまあ…」

 話だけ聞いていると、番場さんに非は無い様に思えるが、お兄さん側の理屈では『弟さえいなければ自分はこんな目に遭わなかったはず』となるのかもしれない。そして長年培われた恨みはお兄さんが大学に入り、一人暮らしを始めた時に爆発したそうだ。

「兄は母からロクに小遣いが貰えなくて…というか要求自体を諦めていたから凄く質素な生活をしていたんだけど、俺の方はかなり好き放題にさせて貰ってて、茶髪で服装もイマドキだったんだ。で、大学に入った兄が家庭教師のバイトとか始めて、それが結構高給だったみたいで、ある日突然その姿が変わってしまった」
「えっと、それってもしかして」

 私の問いに、番場さんは大きく頷く。

「高校までは黒髪で地味な服装だった兄が、大学に入ってから急に派手な格好をし出した。俺達兄弟は顔も体格もソックリだったから、親友でさえ『見間違えた』というほど見た目はまるっきり俺だ。しかも兄は、俺の名前を騙って女遊びや、悪酔いして喧嘩したり誰かを傷つけたり。犯罪ギリギリのレベルで俺の評判を落としているらしい」
「う…わあ…」

 何と言っていいのか分からなくなった私は、思わず美空の方を見てしまう。するとここで驚きの言葉を妹は発するのだ。

「バンちゃん、大丈夫だよ!お姉ちゃんが何とかしてくれるから!!」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

元男装傭兵、完璧な淑女を演じます。――嫁ぎ先はかつての団長でした!?

中野森
恋愛
貧乏男爵家の長女クラリスは、弟の学費を稼ぐために男装して傭兵団へ入団した。 副団長にまで上り詰め、団長をはじめとした仲間から信頼を得るが、決して正体は明かさなかった。 やがて戦争が終わり、傭兵団は解散となる。 出稼ぎするために流した嘘の悪評により、修道院入りを覚悟していたクラリスだったが、帰郷した彼女を待っていたのは父からの「嫁ぎ先が決まった」という一言だった。 慌ただしく始まる淑女教育、そして一度も未来の夫と顔合わせすることなく迎えた結婚式当日。 誓いの言葉を促され隣からきこてくる声に、クラリスは凍りつく。 ……嘘でしょ、団長!? かつての想い人でもある傭兵仲間が今は夫となり、妻の正体には気づいていない――気づかれてはいけないのだ、絶対に! 本作品はゆるふわ設定、ご都合主義、細かいことは気にしたら負け! ※この小説は、ほかの小説投稿サイトにも投稿しています。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」  ……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……? ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募予定作品です。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。

処理中です...