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その40
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バンバユウダイ。
なんだか名前だけ聞くと某カワイコ系俳優に似ている気がする(それはきっと千葉雄大)。あと、銭湯の受付なんかも思い浮かんだり(それはたぶん番台)。ついでに老舗の玩具会社なんかも連想してしまう(それは株式会社バン●イだな)…って、もうこの辺で止めておこう。
「こんな大人数で…いったいアナタ達は何ですか?!」
「あはは、怒っちゃった?ごめんごめん。俺、瀧本湊っていうんだけど、知ってるかな?」
番場兄の勤務先は大手化粧品会社だ。
ディストリビューション部とかいう部署に所属しているらしいのだが、何をしているのかは不明というか、その部署名を覚えるだけで精一杯だった私にこれ以上の知識を求めないで欲しい。
それにしても、雄大とかいう名前のクセして全然大きくないからね!だって、仕事終わりに待ち伏せしたところ、この人、黒髪の七三分けにメガネという格好で現れたのだ。悪さする時だけ弟に間違われる目的でワザワザ茶髪のチャラ男に変身していたって、溢れ出る小物感がハンパ無いんですけど。
…そんなこんなで引っ越し準備で忙しいはずの私が、何故かこうして金曜の夜に商業ビルの一室にいる。しかもこの商業ビルは番場兄の勤務先の自社ビルに隣接しており、正面玄関から出て来た彼をバンバ・エンジェルスが両脇からホールドし、その背中を湊が押してアレヨアレヨという間に連れ込んだ次第だ。
そりゃあ驚くよね、私だったら腰を抜かしちゃうかもしれない。
用意周到な湊はいつの間にかこの商業ビルのオーナーに連絡し、破格の値段でレンタル契約をしたのだと言う。普段は会議スペースとして利用されているらしいこの部屋は、コの字型に長机が配置され、パイプ椅子が端に積み重ねられている。私がその椅子を人数分並べると、誰も指示をしていないのに中島さんと美空が番場兄の両脇に座り、美空の隣りに竹中さんが腰を下ろした。
戸惑いながらも、逃げようとしないのはオスとしての悲しい性かもしれない。だって、中島さんは『男のファンタジーを全て詰め込んだ女』と呼ばれているし、美空だって姉の欲目かもしれないけれど超美人だ。そして女子アナっぽい竹中さんもマニアには堪らない存在だろう。こんな美女軍団に囲まれれば、そりゃあウホウホに決まっている。
コの字の縦棒部分に座っていた番場兄だったが、その正面に湊と私が座る。それまでは両手に花で口元を微かに緩めていたその人も、湊と対峙したことに寄り、瞬時に顔を引き締めた。
そして、先の台詞を発したワケである。
自分のことを知りませんか?という湊の問いに、番場兄は『RIDEでよく見かけたことが有る』とだけ答えた。ちなみにRIDEというのはクラブの店名らしい。ニコニコ笑顔のままで湊は要求を伝え始める。
「今日はお願いが有って参りました。弟さん…隆広くんのフリをして悪さをするのは金輪際、止めて頂きたいのです」
「は?そんなことしていません、とんだ言い掛かりだな」
「こちらの調べだと大学時代は相当派手にされていたみたいだが、就職後は忙しくなったのか…それともリスクが怖いのか、少しだけ大人しくなった様ですね」
「だ~か~ら~、してませんって。品行方正、至って真面目」
と答える表情は思わせぶりにニヤニヤしている。
「あはは、真面目って…。デビルパピヨンで働いてるのに?あそこって確か出張ホストの店だよね?それにキミ、本番行為は禁止のはずなのに『真剣に好きになっちゃった』とか上手いこと言って、たまに客と寝てるでしょ?しかもそんな客の好意として多目に貰ったお金を、店側に報告せずそのまま自分の懐に入れている」
「…な…にを言ってるのか…全然…」
どうやら図星だったのだろう、顔面蒼白で目も虚ろだ。湊は相変わらずニコニコ笑顔のまま続けた。
「デビルパピヨンのオーナーって、ヤバイ稼業の人だって知ってるよね?いや、規則を破ったこと自体は百歩譲って知らなかったことにして貰えるかもしれない。でも、追加料金をネコババしたことがバレたらきっと怒るだろうなあ」
「お…れは…本当に知らない…し、そんなこと…はして…な」
「えへへ、証人もいるんだよね。えっと、昨晩のお相手だった…」
「まさかミチルちゃんが?!」
最早、湊は嬉しさが隠せないらしく、肩を震わせて笑っている。
「あはは、ビンゴ~!手っ取り早く囮作戦を決行してみたんだ。あの子、純情そうに見えるけど、生粋のビッチだからね。ノリノリで協力してくれたよ」
「えッ?!だって、今まで彼氏がいなかったから、俺に処女を奪って欲しいって言ってたのに?!」
「だからビッチだってば。その昔、ヤリ過ぎて入院したこともあるんだぞ」
「は…?!だって、…そんな…」
むしろそのミチルちゃんを見てみたいと思うのは、私だけでは無いはずだ。
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