私に彼氏は出来ません!!

ももくり

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その42

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「ジャジャ~ン、俺の可愛い七海ちゃんでーす」
「…ブスでは無いが、言うほど可愛いくも…無いな」

 ちょっ。
 正直過ぎない?この人!

「あはは、俺も最初はそう思った!」
「…やっぱり」

 ちょっ。
 湊まで!

「あのさあ、七海の何が凄いかと言うと、とにかく後味がさ、最高なんだよ」
「後味?」

 『おいおい下ネタかよ』と思い、真っ赤になって俯いているとどうやらそうでは無さそうだ。

「あのさあ、人と会話した後って自己嫌悪に陥ってしまうことが多くないか?例えば…そうだな、経緯だけを述べればいいはずが、場を盛り上げようとして本心ではないことを自分の感情として織り交ぜてみたり。他にも、相手の望む答えを返そうとした挙句、その反応が予想と違ったせいで焦ってしまって、最終的には噛み合わなくなったり」
「…まあ、よく有ることだよな」

「それがな、七海と一緒にいると無いんだよ。こいつ、本当に絶妙で…とにかく一緒にいて俺を疲れさせないし、後悔させない。最初は俺も地味な女だと思ってたんだ。だけど、今ではもう世界で一番可愛いと思ってる。ふふっ、夜、寝る前に瞼を閉じて七海の顔を浮かべるだけで幸せを実感出来るんだ」
「はああ…」

 番場兄のわざとらしい溜め息が響いたその時、湊がいきなり右手を挙げた。

「はい、じゃあ、今から不幸自慢しよっか。えっと…そうだな、取り敢えず中島さんからどうぞ」
「えーっ、私からでいいんですかあ?」

 そして語り出されたのは、中島さんが生まれ育った家庭環境だ。

 浮気ばかりする父親と、それを許す母親。しかし、母親の精神状態は常に父親の言動に左右され、父親が帰って来なくなると家事を放棄して生活費の全てを散財してしまうのだと。

「最初は父だけが悪いと思ってたんですけどね。私も大人になってさすがに気付きましたよ、あんな男と別れられない母も同罪なんだと。そんな母が大学の奨学金を勝手に使い込み、海外旅行なんかした時にはさすがの私も怒り狂いましたが。結局、そのお金は母が伯父に頭を下げて借りて来たので難を逃れたんですけど。…頼れないし、心を許せない、そんな親子も存在するということです」

 そう纏めると、少し照れ臭そうに俯く中島さんを横目で見ながら今度は美空が手を挙げた。

「えっと、ウチの両親はバツイチ同士の再婚で、でも愛なんか無いんです」

 そのまま語られたのは、我が家の赤裸々な事情だ。母は元夫の借金返済の為、義父は3人の息子の子育ての為に結んだ事務的な結婚。暫くして家事は13歳の長女と11歳の長男に丸投げされたと。

「5人の子供のうち、長男長女は性格が似ていたせいもあって凄く仲良しだったんですよ。で、末の双子達もいつも一緒…つまり次女の私だけがはみ出してしまった感じかな。それなら長女達と共に家事をすればいいんでしょうけど、そういうのが苦手というか、何となく邪魔になると思ったんですね。まあ、誰が見ても長男長女は相思相愛でしたから。…で、家庭内で孤立していたところに、優しくしてくれた義父とデキちゃうワケです」

 ガタン!

 初耳だったらしく、竹中さんがパイプ椅子を豪快に倒した。それに驚いた中島さんも固まっている。

「美空?!あんた義理とは言え父親と…」
「うん、そう。あっ、勿論すぐに別れたよ!たぶん向こうも手を出した後でヤバイと思ったんじゃないかな?いきなり拒絶モードに入っちゃって、それで思い詰めた私は義理の兄である祥ちゃんの布団に潜り込んじゃった。そうやって騒動を起こせば、お義父さんも私を無視できないと目論んだんだけど、結果は惨敗。思いっきりスルーされちゃってさ、そのせいで長男長女の仲まで壊しちゃったというワケ」

 
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