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彼らの言い分・7
しおりを挟む[彼のその後~龍side~]
……
別れを電話で切り出すとか、最低だと思う。でも、本当に無理だった。顔も見たくないし本当は声だって聞きたくない。
「もしもしっ?飲み会、終わったの?今からウチに来るんでしょう」
電話の相手…中村紗希は俺の今カノだ。
それをこれから元カノにするのである。
バカだな、俺。いい様に手の平で転がされてただけだったなんて。真実を知り、1人になってからジックリと駅のホームで考えた。確かに未来は一匹狼みたいな女で、同期の中では誰ともツルまず浮いていて。しかも純粋で、人を疑ったりしない性格だったから紗希の嘘を丸ごと信じてしまったのだろう。
でもさ、付き合ってる彼氏がいるのにその彼氏の男友達を狙うだなんて普通は思わないよな?ヒトの彼女に『彼はアナタを騙しているのよ!』とか有ること無いこと吹き込んで、別れさせた挙句に自分と付き合うように仕向けるとかさ、まともな人間のすることじゃ無いって。
ちょっとしたサイコパスじゃん。
コイツさえいなければ俺と未来は今頃、仲良く一緒に暮らしていたはずなのに。込み上げてくる怒りをどうにか抑え、俺は言う。
「…あのさ、もう全部知っちゃったんだ」
「えーっ、何のこと?」
「ごめん、ほんともう無理、気持ち悪い。俺がデジタルコンテンツ部に行きたい一心で、未来を騙したんだって?俺が未来を好きでも何でも無いって…そう言ったんだってな?」
「なっ、し、知らないよ、そんな話」
あーそうか、やっぱりそういう反応か。
「汚いなあ、本当に汚い。俺さあ、そういう嘘吐くヤツって大嫌いなんだ。お前んちに置いてある俺の物は全部捨ててくれ。ほんと顔も見たくないし絶対にもう会わないぞ。これで連絡しないから、そっちもしてくんなよ」
「ま、待ってッ。龍…」
この期に及んで、紗希はこう言った。
「騙されてるのよ、アナタ。全部、秋山さんの作り話なのッ!!ほら、あの人って誰からも相手にされないから、過去の栄光じゃないけど龍という存在に縋って、私から奪い返そうとか思…」
「また嘘か。お前、本当に腐った女だなあ。未来が誰にも相手にされないって?バカなことを言うなよ。アイツ、今日の飲み会でモテまくってたぞ。電広堂のイケメン王子と富樫副社長とで奪い合ってたっつうの!!」
余程ビックリしたのだろう。次の言葉を失った紗希に俺は続ける。
「未来はな、最高にイイ女なんだよ。お前とは似ても似つかない…そう、外見だけ磨いても中身カラッポのお前とはな。くっそ!お前さえいなければアイツは俺のモノだったのに、お前なんかに騙されなければ…。本当にムカつく!二度と俺に顔を見せるなよッ」
怒りに任せて電話を切り、それから再び駅のホームで項垂れた。…うん、分かってる。紗希も悪いけど俺も悪い。プライドが邪魔をして、離れて行った理由を未来に訊こうとしなかったから。時間が戻せるものならあの頃に戻りたい。そして毎日彼女に好きだと伝えて、もし少しでも離れようとしたら追い掛けるんだ。
…そう、あの頃に戻れたなら。
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