私たちは恋をする生き物です

ももくり

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もしや私は浮気相手なのでしょうか

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 だって仕事の話しかしないんだもん。
 …だから断り様が無いのである。

 かれこれ1カ月が経過し、その間、圭くんからは毎日電話もしくは直接会って仕事関連の話をしていた。そのオマケみたいな感じで、とってもサラリと『好きだよ』と言われるので拒絶出来ず。しかも電広堂とのタッグが強固になったお陰か仕事がどんどん舞い込み、副社長の多忙っぷりに拍車が掛かったせいで私は放置状態に。週に数回あったお泊りもほぼ皆無となったため、逆に在宅時間が増えてしまい。寂しいので思わず電話に出てしまうという悪循環。

 いや、だって、何度も言うけど仕事の話しかしないんだもん。着拒する理由が無いでしょう?

 電広堂側の動向もよく伝わってくるから、それを情報提供することでデジタルコンテンツ部内での私の評価も著しく急上昇した。洋楽で例えるとビルボード圏外から、いきなり1位にランクインという感じなのである。…ごめんなさい副社長。毎日アナタ以外の男性と連絡を取り合っているバカ彼女で。しかもそれを一切報告していないなんて、裏切り以外の何モノでも有りませんよね?一応、罪悪感を持ち合わせているので、副社長の目を真っ直ぐ見れないことが増え。ほんの少しギクシャクしていたところに更なる事件発生。

 既に異動完了し、単なる同僚として接していた龍が、MTGの後片付けをしている私を手伝いながらボソリと呟いたのだ。あ、ちなみにMTGってミーティングの略だから。最初は妙にTKGを連想してお腹がすいてねえ。って、ええっ?TKGを知らない??卵掛けご飯ですよ、卵掛けご飯!…って、えっと、コホン。話を戻して、龍が言うには、副社長には他に付き合っている女性がいるんじゃないかと。

「それって浮気してるってこと?」
「いや、言い方は悪いけど、どっちかは不明だ」

 へ?それって私の方が浮気ってことなのかな?残念ながらそれでも全然おかしくないワケで。何故なら私と副社長では余りにも差が有り過ぎるからで。例えるならば、アラブの富豪とスラム街の貧民少女くらいの差であろうか。

「ごめん、実際にその人と一緒にいるのを何度か目にしたことが有ってさ。副社長にも直接訊いてみたんだけど、『付き合ってはいないが誰よりも大切な女性だ』とかいう歯切れの悪い返事だったんだよ。もしかして未来が直接、その2ショットを目にしてショックを受ける前に耳に入れておこうと思ってね」

 『誰よりも大切』って、それ、本命彼女ってことじゃないの?じゃあどうして付き合っていないんだろう?眉間にクッキリと皺を寄せる私に向かって龍は続ける。

「あのさ、別に俺は未来と元サヤとか期待してない。だからそういう下心で話しているとか思うなよ。俺は未来が幸せになればそれで満足なんだから」
「うん…どうもありがとう」

 幸せっていったい何だっけ??

 誰もが羨む素敵な彼氏が出来て、めでたしめでたしのはずなのに。それほど幸せでも無いと思ってしまうのは、私が贅沢に慣れてしまったせいだろうか。シンデレラもきっとこんな感じだったんだろうなあ。全て他力本願で、誰かが幸せにしてくれるのを待っていただけの女のコ。でも彼女は結局、自分では何もしていないのだ。もしかして王子様は次の誰かを幸せにしようと奮闘しているのかもしれない…なんてことを思っていたある日。

「コトリ、お前は本当に可愛いなあ」
「はいはい。もうソレ聞き飽きたよ」

 急に寒くなったので、新しいコートでも買おうかと思って出掛けたところ、とあるデパートの一角で副社長が女性と腕を組んで歩いていた。その女性はどこをどう見てもシンデレラなんかでは無く、生粋のお姫様という感じの人で、その余りの美しさに誰もが息を呑む。

 いや、そんな、だって。
 もし私が男だったら絶対にあっちを選ぶって!

 心の中でそう叫びながら、2人が私に気付く前に姿を隠そうと周囲を見渡す。ヤングレディースコーナーというセンスもクソも無いネーミングのこのフロアは、名前どおり若い女性向けの服飾ブランドが並んでいて。その中で最も高級な店でコトリ姫は足を止め、慣れた感じでカシャカシャとラックに掛かった洋服を眺め出す。残念ながら私はその高級店の奥の方にいたので、何とか試着室へ入ろうと適当な服を2枚ほど掴んで店員に声を掛けた。

「あの、これを着てみたいんですがッ」
「まあ!お客様でしたらきっとお似合いですよ」

 嘘吐け!こんなトップス、私が着るとまるでパジャマだよッ。しかもパジャマのクセして2万円もするのね。もう1枚は…わあお3万円。こんな薄いニットがッ?!もちろん家では洗濯不可、しかもすぐ毛玉が出来そうなヤツじゃん。

 いや、買わないし。ていうか買えないし。

 そもそもこの店に入ったのも、冷やかしだから。私ごとき庶民にこんな服は着こなせないって。仕方なくノロノロと袖を通していると、どうやら2人が接近して来たらしく、店員と副社長の会話が聞こえてきた。

「いらっしゃいませ。どのようなモノをお探しですか~?」
「ああ、こちらの女性が誕生日でね。この店の洋服が好きだからプレゼントして欲しいと言うもので、数着ほど見繕ってやってくれませんか?」

「はい、かしこまりました。ご安心ください、中林様はお得意様ですからだいたいの好みは把握しておりますよ。それにしても何とお似合いの二人なのでしょうか。本当に羨ましいです」
「あ…、ああ。どうも有難う」

 へえ、そこんとこは否定しないんだな。ふうん、そっかあ、プレゼントに数万円レベルの物を贈るような間柄なんだ。よく考えてみると私、セフレから彼女に昇格したけど特に何も変わっていないんだよね。休日に会うワケでもなく、それどころか平日ですら一緒に過ごせない状態が続いてて。仕方ない、だって忙しそうだからと遠慮していたのに、こうしてコトリ姫の誕生日を祝う時間は有るということか。

 卑屈な感情に呑み込まれそうになり、試着室の鏡に映った自分の姿を見てトドメを刺される。パジャマ確定、しかもなんだこのチンチクリン。温情でブスとまでは言わないが、やはり正統派の美人を見た後のコレはキツイ。敗北感に打ちのめされながらも私はどうにかその店を脱出した。




 …………

「えっ、中林コトリ??」
「うん、店員がそう呼んでた」
「ああ、俺、それが誰か分かるぞ」

 週明けのMTGが終わり、ランチの場で龍にその事件を報告したのだが。何故かMTGに参加していた圭くんも強引について来て、チャッカリ話に加わっている。ついでに相変わらずあざとそうな柘植さんまで一緒だったりして。

 そしてこの後、例のコトリ姫の正体が判明するのだ。
 
 
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