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美香編
美香、敗北感を味わう
しおりを挟むもんもんもん。
もう頭の中は煩悩で一杯。
ここに超能力者がいなくて良かった。もしも頭の中を覗かれたら、『こいつドエロだな』と気持ち悪がられてしまうに違いない。
ん?思考を読むのは何だっけ?サイコキネシスは念動力でテレポーテーションは瞬間移動、パワポはパワーポイントって全然違うやん、ソレ。…という感じで脳内で1人突っ込みをしていると向こうも昼休憩なのか望月からメッセージが届いた。
>今晩、予定はどうですか?
もうダメだ私。望月の名前見ただけで胸がキュンキュンする。だから、いつもなら思わせぶりに時間を空けて返信するところを、慌てて返信してしまう。
>大丈夫です!
>19時に駅前のモツ鍋屋でどうですか?
「ほっ、無事OKが出た…」
駅前を選んだのは近くにホテルがたくさん有るからで。食後にすぐイチャイチャしたいと考えたのである。ああ、今晩も抱いて貰える。そう思うだけで子宮がジンジンする。
恐るべし望月プロ!
この私を虜にするなんて!!
初めてそうなってから三日にあげず何度も体を重ねている。体から始まる関係なんて信じられなかったけど今の私ならばそれを否定することは無いだろう。
とにかく全部が愛しい。
望月の望月を一日中、挿れていたい。
そんな変態的な思考を抱くほど好きだ。
「…ごめん、待たせちゃったかな?」
待ち合わせ時間に20分も遅れてくるなんて。いつもの私なら威圧的に怒るところだが、残念ながらそんなことで空気を悪くしたくなかった。
「ううん、全然。仕事、忙しいの?」
「ええ、今日は突発的に会議が入ってしまって。その…本当は一秒でも早く美香さんに会いたかったんですけどね」
キュン!…どうしよう、望月が可愛い。ああ、今なら私、唾液も喜んで飲むのに(※どんどん変態になっていく美香さんです)。
なんだかもう自分でも分からないのである。カラダ目当てなのか、それとも望月自身を好きになったのか。いや、それ以前に望月が私のことをどう思っているのかすら確認していなかったりして。
そこ、一番重要じゃない??
「あのね、望月…」
「はい、なんですか美香さん」
軽く首を傾げる望月を直視出来ないので、仕方なくモツ鍋の湯気越しに目を細めて見つめ返す。
「えっと、確認したいん」
話の途中で誰かが私たちのテーブルに近づいて来て、いきなり望月の肩を叩く。
「遼太郎?うわあ、久しぶり~。最近、誘ってくれないんだもの。もう、私には飽きちゃった?あ、もしかして新しいセフレ?」
露出多めな私とは正反対で、清純そうに見えるその可愛らしいお嬢さんはどうやら過去に望月のセフレをしていたらしく。人は見た目に寄らないな。ていうか、この人とそういう仲だったということはEDなんて大嘘だったんじゃないの?
…なんだろう、この敗北感。
私の中で何かが音を立てて崩れ始めた。
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