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美香編
お前はクリオネみたいな奴だな
しおりを挟むあらやだ。
私、騙されちゃったみたい…。
あは、あはは。うわあ、そっかそっかあ。
どうやら望月は最初から私のカラダ目当てで。だってほら、もうすぐ内藤の紹介で見合いするような女だからそれまでなら遊べるし、後腐れなく別れられる!と思ったに違いない。
>美香さんに恋愛感情は無いですから。
何度もそう言われたクセに色ボケした私は望月の気持ちがもしかして変わったのかもしれないと勝手に期待してしまったのだ。
恥かしい。なんかもう消えてしまいたい。
向こうは遊びだったというのに、このイケイケな見た目にそぐわぬ純真無垢な恋心を抱いて、一方的にときめいていただなんて。
望月にバレたら確実に死ぬ。
ぷるぷると震える手で大好きなマンゴーサワーを一気飲みする私と、何やら深刻そうな表情で元セフレ嬢とヒソヒソ話をする望月。
「ん~、じゃあ私はもう行くね」
「ああ、さようなら!」
陽気に手をブンブン振って元セフレ嬢は去って行き、それから望月はしばらく無言のまま鍋を突いていたが何やら思い詰めた表情で口を開く。
「あのっ、美香さん、俺は…」
「いいよ、許す」
そう、何もかも望月の策略に乗せられただけだ。騙される方が悪いし…その間は幸せだったから。
「ほ、ほ、ほんとですかッ?!」
「EDなんて嘘だったんでしょ?でもまあ、私もノリノリで楽しんじゃったしね」
首の骨が折れそうなほど激しく頷く望月。
ちくしょ、そんな簡単に嫌いにはなれないな。やっぱり情が湧いたというか、ホニャ~と安堵の笑みを浮かべる望月がとっても可愛く見える。
まったく、お前はクリオネみたいな奴だな。そんな愛されキャラの見た目をしておいて、突然頭をパカッと開いて獲物を捕食するとかさ。
「じゃあこのまま付き合ってくれるんですね?その…俺とッ」
さすがツバ男改め・望月プロ改め・クリオネ!この私にセフレ関係を続けろと?いや、ムリムリ。私、そういうの生理的にNG。
『もしかして、このまま恋人同士になれるかも』などと期待していたから今まで何とか頑張れたけど、そうじゃないと分かった時点でもうキッパリとアンタのことは諦めます。
「ごめん、望月。私が先に片付かないと香奈と内藤が困るのね。だからこん…」
「大丈夫!」
こら、最後まで言わせろ。
このセッカチめ!
「は?何が大丈夫なのか教えてよ」
「俺、たぶん出世間違い無しなんで、美香さんの1人や2人余裕で養えます!だから安心してこのまま付き合ってくださいッ」
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