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美香編
女の正体
しおりを挟む>1人や2人余裕で養えます!
>1人や2人…
>2人…?!
この期に及んでまだそんなことを言うつもり?だから私はっ、結婚しないとっ、ダメなの!!その他大勢のセフレになってる場合じゃないんだってばッ。
なんなのそのドヤ顔。
ケンカ売ってんの、この私に。
「あのさあ、こう見えて私、男を見る目が無いのね。だから慣れてるの」
ゆっくりと望月の頭が右に傾く。
だから何なの、その『仰ってる意味が分かりません』と言わんばかりの態度はッ…と思いながらも私は子供を諭すかのように優しく語り続ける。
「分かり易く言うと、他の男にしますってこと。例えばアンタみたいに平気でセフレとか作っちゃうような人は、結婚後も公然と愛人を囲うわよね?私、そういう荒んだ家庭は嫌だもの。
ウチみたいに、お父さんはお母さんが大好きで、お母さんもお父さんが大好き、だからその子供のことも愛します!!…という家庭が理想なのよね。何か私、間違ったことを言ってる?」
しゅるるると、右に傾いていた望月の頭が正しい位置に戻った。どうやら今の話は納得してくれたようだ。
「あの、それは凄く分かります。そして言い訳じゃないんですけど、さっきの女は俺の姉でッ、自分の恋愛が上手くいかないと、ああやって弟の恋愛を壊そうとする恐ろしい女なんですッ」
「はいはい、そういうのはもういいから」
咄嗟にしてはなかなか上手い言い訳ね。こんな場面でもプロ感を醸し出すとは、さすが望月!
「ええ…っ、信じてくれないんですか~?」
「信じるも何も。私と望月はそんなんじゃないでしょう?だって常日頃、私のことを好きじゃ無いと繰り返し言ってたクセに、何を今さら」
飲み物を追加するために店員を呼ぶと、こちらに駆け寄ろうとする店員を、望月が言うところの『姉』が引き留めた。そして何やらやり取りをした後でようやく店員がこちらに来る。ちょっとヤサグレ風味で薄っぺらい体型のその店員は、いきなり私にメモを差し出した。
「これ、アッチのお客さんからッス」
「え?ああ、有難う…ございます。それと追加で生中1つ。あとチョコアイスも」
だるそうに返事をして店員が去って行った途端、望月が口を開く。
「チョ、チョコアイスと生中…って」
「だって食べたくなったんだもの」
そう答えながら2つ折りにされたメモを開くと、そこにはこう書かれてある。
>本当に姉でーす。
>驚かせてしまいましたか?
ええ、驚きましたとも。そしてお陰様で目が覚めました。自分を好きにならない男とこれ以上一緒にいても時間の無駄だと気づきましたッ!
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