ムズムズとドキドキのあいだ

ももくり

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Lesson5

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「…で、無理だったと」
「はいぃ。結局、入りませんでした~」

 私は半泣き状態で桐生さんに訴える。

「だって、あんなの。大根を鼻の穴に突っ込むようなもんですよ?田之倉さんの異常に大きいんだもん。桐生さんのはもっと小さい?ねえ、お願いだから見せてくださいよお」
「日曜の昼間、しかもココは家族連れも多いドーナツショップだぞ。俺を逮捕させるつもりか?」

 昨晩は田之倉さんの頑張りも虚しくミッション成功とはならなかった。

 何故なら全然濡れなかったからだ。彼は『気にしないで』と朝まで抱きしめてくれたが、絶対ショックだったに違いない。

「私、嫌われちゃったかなあ」
「濡れない女なんて、有り得ないもんね」

 きいい!なんでこんなに笑顔なの?
 憎い、桐生さんが、憎い。

「そういえば、そっちはどうだったんですか?」
「ああ。もちろん、普通に濡れて普通にしたよ」

 …『普通』って何だろう。
 私、もしかして普通じゃないのかな?

「でもさあ。あのコと別れちゃった」
「へ?」

「先延ばしにしたワリに、気持ち良くないの」
「へ?」

「三嶋さんが悪いんだよ、『愛し愛されて』とか『最高に気持ちイイ』なんて煽るからさ」
「へ?」

「なのに全然なんだもん。で、気付いちゃったんだ。俺、あのコのこと好きでもなんでもないなって」
「絵梨奈ちゃん、怒りませんでした?」

「すっごい怒られた~。でも、無理して付き合うよりいいかな。俺的にはこうして三嶋さんとバカ言ってる方が楽しいもん」

 …そう、ですか。
 なんだかフクザツな感じ。

「皆んなスゴイなあ。あんなこと、いつもやってるんだ」
「女と男じゃ体の構造が違うからさ。女の方が損だよねえ~、最終的には孕まされちゃうし」

「また、そんな夢の無いことを。いいじゃないですか!ダイスキな人の子供を産めるなんて。自分とスキな人のブレンドですよ」
「へえ、三嶋さんって田之倉さんの子供を産みたいんだ?」

 …ん。
 ふと悩む。

 産みたいのかなあ?田之倉さんの子供を。いや、そこまででは無いような。いやいや、初めて体を繋げてもいいと思った相手なんだし、当然その覚悟があるはずじゃ…。

「ごめんごめん、真剣に悩まないでよ。今の忘れて。だってほら、そこまで覚悟してセックスをする人なんてそんなにいないし」
「ちょ、桐生さん、こんな場所でそんな単語を!」

 再び、ごめんごめんと謝る桐生さんを眺めつつボンヤリと考えた。

 私、田之倉さんのこと本当に好きだよね?
 あっ、でも、桐生さんのことも好き。
 シングルファザーの原田さんも好き。
 …まさか、全員同列?それってどうなの?

 自分で言うのも何だが、三島有香という人間は真面目すぎるのが玉にキズで。一度悩み出すとどうにも止まらなくなるのだ。

 >このまま一生処女だったらどうしよう。
 >本当に田之倉さんのこと好きなのかな?
 >ハッ!
 >実は私って特異体質だから入らないのかも。
 
 こちらは真剣に悩んでいると言うのに、桐生さんはニヤニヤ笑うばかり。それから時間を確認し、おもむろにこう言った。

「うん、じゃあ飲みに行こうか」

 時刻はまだ17:00、しかも今日は日曜だ。

「だって三連休の中日だぞ?こういうときはどこも営業してるんだよ。この時間から開いてる店を知ってるからさ、早く移動するぞ」
「よーし!じゃあ飲んじゃおっかな!!」

 気軽に肩を抱かれ、まるで同志みたいな感覚で私たちは居酒屋に入った。

 そして食事もそこそこに、あまり飲めない日本酒をガブ飲みすると桐生さんもそれに付き合って飲んでくれて。それから何故か2人揃って一青窈の『ハナミズキ』を繰り返し歌い続けた。

「好きな女と百年も続くかって~の!」
「続かないよ~!だって桐生さんだし」

 この調子で歌詞に難癖をつけ、気付けば田之倉さんが苦戦していた筈のアソコに何かが入っていた。真上にいる桐生さんと目が合ったが、彼は艶めかしく笑ったまま動きを止めようとしない。

「うっわ!桐生さんのが入ってる」
「う~ん。貫通~~。あはは~~」

 残念ながら酔っ払いの私は思考停止状態だ。

 『やったあ!処女じゃなくなったんだ!!』と大喜びし、対する桐生さんの方も『うん。俺も童貞じゃなくなった!!』などと冗談を言ったりして

 …後はもう、覚えていない。




「………」
「……よ」

 そこはどうやら桐生さんの部屋らしく。二日酔いでボロボロの頭を振っていると、彼はもう一度『おはよ』と言いながら掛布団をめくった。

 ん。私も見たよ。
 2人揃って全裸でした。

 それどころか、ヤッてしまった記憶が飛び飛びだけど鮮明に残っているから。

「なあ、三嶋さん」
「なんです?」

「すんごい、すんごい気持ち良かったんだけど」
「へ?」

 戸惑いを隠せない私。
 いったい何を言うつもりだ、この人。

「あんなの生まれて初めてかも~、最高に気持ち良かった!素面の状態でもう一回、してみない?」
「…い、いやあ。む、無理ですよ~」

 田之倉さんに申し訳ない。
 反省し過ぎて、死にたい。

 しかし、ヘッドボードに置いてあったコンドームの空き袋を眺めながら桐生さんは言う。

「昨夜2回もしてんだぞ。もう1回追加しても罪の重さは同じだ。むしろ、記憶に無いことを反省するより、記憶に残ったことを反省したいとは思わないか?」
「????」

 筋が通っているような、いないような。だが、今の私は田之倉さんに対する不義理よりも好奇心の方が勝っていた。

「じゃ、あの、1回だけなら…」
「よし!さあ、ヤルぞ!」

 掛布団を跳ね除け、真っ裸の桐生さんが私の上半身を起こすと、思わずその下半身に目が釘付けになる。

「あ。田之倉さんのより、ちょっと大きいかも」
「な、でも入るんだぜ?こういうのはテクだよ」

 返事に困って黙る私。

 桐生さんは本当に上手くて、みるみるうちに私は濡れていく。『田之倉さん、ごめんなさい』と幾度も心の中で謝りながら、私の体は桐生さんを受け入れる。

「締め付けがハンパないな、本当に気持ちいい」

 細かく腰を揺らす彼に身を任せていると、そのまま意識が遠ざかる。

 …うん、私も気持ちいいよ。

 そんなことは絶対に言ってはいけないような気がして目を閉じ、ひたすら唇を噛み続けた。

 
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