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Lesson15
しおりを挟む「俺はこんな感じの欠陥品だけど、有香もそこそこ欠陥品なんだよなあ。不真面目な男と真面目過ぎる女。足して2で割ればちょうどなんじゃないか?こんなベストカップル、そうそういないぞ」
シミジミとそう言われたので、思わず勢いで答えてしまう。
「結婚、しちゃおうかな」
「よっしゃああああ!!」
周囲が振り向くほどの大音量だったから、トイレから戻ってきた川崎さんもキョトンとしている。そのいたたまれない空気のなか、私はギュウギュウと桐生さんに抱き締められていた。
「あ!もしかして上手くまとまった?」
身体的にもスッキリした川崎さんが、そりゃもう爽やかな笑顔で言う。
「証人になってくださいよ、川崎さん。有香が結婚してもいいって今、な?」
「武士に二言はありません」
「知らなかった、三嶋さんって武士だったんだね」
すると、桐生さんが突然スマホを取り出す。
「報告、報告っと」
「誰に?」
シッと、ひとさし指を唇の前にあてて彼は電話相手と話し出す。
「もしもし。あ、宮下さん?密会情報、サンキュっす。お蔭様で現場を押さえまして、結婚しちゃうことになりました。ええ、ハイ」
ウヒウヒ笑う彼を横目に、私と川崎さんは腑に落ちていた。
「なるほど、密告者は美玖かあ」
「そういえば傍で電話を聞いていましたもん」
そっか。こうしていろいろな人のお世話になりながら、先へと進んで行くんだな。…隣りで微笑む、優しいこの人と。
「もしかして川崎さんって、美玖さんのことが好きなんですか?」
「うん、好きだよ。片思い歴なんと10年。高1んときからだし」
そっか。でも、美玖さんには白井さんという彼氏がいるもんね。イイ人なんだけどなあ、川崎さん。
「ところでさ、知ってる?パンダの発情期って毎年3月から5月の間だけで、妊娠可能なのは最大で3日程度。しかも人間並みに恋愛感情が有って好きな相手としか交尾しないのに、出会い自体が異常に少ないんだって。人工飼育の場合だとオス1頭につき対象となるメスは50頭、その中から選ぶのは結構厳しいらしいよ。
それに比べると人間って相手を選び放題だと思わないか?だって日本だけで1億2600万人もいるんだぞ。なのに、どうして俺は1人なんだろう。よく考えたらその方が奇跡っぽくない?なんで見つからないのさ、俺の相手」
「も、物知りですね川崎さん」
「ラジオ番組で知った」
『いない方が奇跡だって?そんなことないよ』と隣りで彼は明るく笑う。
「両想いを当たり前とは思いたくないし、1人でいるのがおかしいとも思わない。ただ、適当な女と寝まくった俺としては有香と出会ってシミジミ感じたね。好きな女と一緒にいるの、幸せだなあって。俺のために一生懸命、何かをしてくれるから俺もそれを返そうと頑張る。『好き・嫌い』だけじゃなく、そんな『思いやり』を与え合うのも『両想い』なんじゃないかな」
…この人、本当に桐生さん?
あのアンドロイドはどこに消えたの??
「俺を変えたのは有香だよ。よくぞ目の前に現れてくれましたって感じ。ほんと今まで何処にいたんだよ」
杏さんの言葉が、ふんわりと私を包む。
>きっとハッピーエンドになる。
>大丈夫。世の中は有香が考えているよりも、
>ずっとずっと優しいんだから。
あは、本当に。
嬉しすぎて涙が出てきちゃいました。
私は声をあげて大泣きする。
だって、酔ってるから。
お酒にもだけど、幸せに。
今夜だけは思いっきり酔わせてください。
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