ムズムズとドキドキのあいだ

ももくり

文字の大きさ
14 / 16

Lesson14

しおりを挟む
 
 
 バチン、と視線が絡み合う。

 すると彼はなぜか思いっきり笑顔を見せ、暫くすると私と川崎さんのいるテーブルにやって来た。

「有香。席つめて」
「え、あ、あの?!」

 動揺しすぎて素直に奥の席へと移動する私。向かいの席では川崎さんがポカンと口を開けたままだ。

「今日は日帰り出張だったんだけど、連絡を貰ってさ」

 連絡??

「…あの、三嶋さん。こちらは?」
「えと、弊社営業部の桐生です。桐生さん、こちらは仕事でお世話になっているキョウエイ株式会社の川崎さん」

 そういうことを聞きたいワケではないと、私も分かっておりますが。

「ど~も、有香の彼氏の桐生です」
「…あの、あの、私ね」

 最後まで言い切らないうちに彼は口を開く。

「想定内なんだよなあ」
「へ?」

「あ、川崎さん。今から御耳汚しをするかもしれませんが、ご容赦ください」
「え、あ、はい?」

「だいたい、最近おかしかったし。何か思い詰めてるんだろうなあ、とは思った。そしたら営業部の女性社員4人がだよ、入れ替わり立ち替わりで『有香には内緒に』つって密告に来たんだよ。お前が別れるつもりだとさ」

 杏さん、ルイさん、ハルカさん、進藤さ~ん。

「先月末付で別れるつもりだったんだろ?そのクセ、何を言うワケでもなく電話を着拒にしたりLINEをブロックしてみたり。バカなのか、お前」
「だ…って、別れるって言いたくなかったんだもん」

「その時点で、別れたくないってコトだろうよ」
「だって、このまま付き合ったとして桐生さん、一生浮気しないと約束出来る?」

 恐る恐る…という感じで、川崎さんが口を出す。

「あの~、三嶋さん?浮気をされてもいないのに、浮気されるのが怖くて別れることにしたの?あはは、そりゃあ理不尽だね~」

 援軍を得て、桐生さんは得意満面の表情になった。

「ほれ見てみろ、川崎さんもこう仰ってる。そんなの俺だけじゃなくて他の男でも浮気の可能性はあるだろうが。なんで俺限定にしてまだ起きていないことを心配するんだよ」

 ウンウン、と川崎さんは頷く。

「だって、川崎さん!この人100人斬りなんですよ!女たらしなの」

 一瞬、川崎さんは戸惑いの表情を浮かべる。

「う~ん。100人と聞くと状況変わるねえ」
「でしょでしょ?!」

 桐生さんは、チッと小さく舌打ちする。

「それは有香と付き合う前の俺で、今は違うってお前自身が一番よく分かっていることだろう?」
「分かるけど、でも。貴方のことが好きすぎて、だから、他の女性に心が移ったらきっと私…死んじゃうかもしれないもん!」

 あれ?
 あれれ?

 桐生さんと川崎さんが頭を抱えて項垂れている。私、何かおかしなことを言ったかな…。すると、真っ赤な顔をした桐生さんがキッとこちらを見詰めて言った。

「分かった。もう、結婚しよう」
「へ?なんでそうなるの??」

 戸惑う私を後目にニヤニヤ顔の川崎さんがボソリと呟く。

「こりゃあ、破壊力がスゴイ。こんな熱烈に好きって言われたら、コロリだな。堪んないですね、桐生さん」
「でしょ?本人だけがそれを分かってなくて」
「わ、分かってるよ。だから…えっと」

 そっか。
 私いま、『浮気したら死ぬよ』って言ったんだ。
 くう。は、恥ずかしい。

「有香が死なないように努力するよ。だからさ、結婚しちゃえば女の方から寄ってこなくなるだろ?もしも俺がフラッとしても、きちんと離婚だの慰謝料だのとペナルティも課せられるからいろいろと便利じゃんか」

 ニコリ、とそれはもう美しく微笑む。ふふっ、桐生さんは目尻の皺さえ美しいね。

「うほ。俺、帰りましょうか?」
「いえいえ。最後まで見届けてくださいよ」

 なぜか引き留められる川崎さん。奇妙な連帯感が3人の間で生まれ、そして何故か酒盛りが始まった。

「早く返事しろよ有香。プロポーズって結構勇気いるんだぜ」
「だって、そんなのスグに決められないよ」
「またもう。決まってるクセに、三嶋さん」

 ぐでぐでな感じで宴は進み。酔っているクセに、ちゃっかり電話の着拒とLINEのブロックは解除させられて。

 川崎さんがトイレに行っている間に、
 こっそりキスまでされてしまった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

処理中です...