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第一章:The Kingdom of Dreams and Madness
高木 瀾(らん) (4)
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祭の会場になるらしい「パンダ慰霊広場」では、露店や祭の運営のものらしいテントの準備が行なわれていた。
「あ、どうも、関口さん、その人がバイトの子?」
そう声をかけてきたのは、眼鏡をかけて、髪をバンダナで覆った、背は高い方だが細身の三十過ぎの男性。
「いや、呼び捨てでいいっすよ。こいつが……」
関口は「しまった」と云う顔になった。
どうやら、私を紹介しようとしたらしいが……私の名字は知らないし、名前は知ってるが……「御当地ヒーロー」としてのコードネームだと思い込んでいる。
「眞木です。眞木瀾」
とっさに妹の治水の名字(なお、子供の頃に両親が離婚したんで、父親に育てられた私と、母親に育てられた双子の妹の治水では名字が違う)と、本当の名前を組合せた偽名をデッチ上げた。
「高校生?」
「ええ」
「学校は?」
「福岡の久留米のS女学院ですが……」
「ええ? お嬢様学校だよね? 芸能人にも、結構、そこの出身の人が多かったりするような……」
「は……はい……」
実は同じ市内だけど結構離れてる進学校の理系コースなんだけど……まぁ、妹と中学の頃の同級生が行ってる学校なので、全く知らない訳じゃないからボロは出ないだろう。
「えっと……で、この人は?」
「撮影チームの統括の久留間さんだ」
「よろしく。じゃあ、これ付けてて」
そう行って渡されたのは「報道」の2文字の間に○に帆船の絵が描かれたマークの腕章。なお、帆船の帆には漢数字の旧字体の「七」が書かれてるので、多分、「入谷七福神」のマークなのだろう。
「じゃあ、ちょっと、私は制服に着替えてから、また来るよ」
「判った」
その時、久留間さんが「あ~」と云う顔になった。
「えっと……ウチ……ガチで体育会系気質って云うかヤンキー気質なんで……そのさ……『正社員』に聞かれてる所で、『正社員』のそれも前線要員の人にタメ口きいたら怒られるよ」
「へっ? ええっと……あぁ、なるべく気を付けます」
だが、どうやら、私は、一瞬「何言ってんだ?」と云う表情になったらしい。
「最近の『本土』の子って、そんな感じなの?」
「えっと……私は……親が年上の相手にも平気でタメ口をきくような人間だったので……」
「なるほどね……。とりあえず、バイトは『正社員』に敬語、『正社員』の中でも非戦闘員は前線に出る人に敬語、同じ立場だと年下は年上に敬語なんで、気を付けてね」
「は……はい……」
「じゃあ、あれの設置って手伝ってもらう事って出来る?」
「あ……ま……まぁ……オンラインゲームなんかが趣味なんで、多少は……」
これも嘘で、オンラインゲームが趣味なのは妹の治水だ。私が自宅が使ってるのは……性能はゲーム専用PC並だけど、あくまでCAD用のPCだ。
テント内に設置されようとしてるのは……タワー型のPC。しかも、CPU・グラフィックボードともに業務用・高速計算用のモノらしい。
「あの……設置するのはいいんですが、何で、こんな所に、こんな凄そうなPCを?」
「ああ、ここって、対馬のすぐ近くだよね。で、対馬に来た韓国からの観光客が、こっちにも寄る事が有ってさ」
「はぁ……」
「その中に、ここの『祭』を見に来た韓国の映画関係者が居て……で、韓国の映画では、撮影現場にPC持ち込んで、現場で撮影終ったそばから仮編集をやるって話を聞いたんで……で、こっちは、撮影終ったそばから、本編集までやって、そのまま『祭』の様子を動画サイトにUPする事にしたんだ」
「へえ……」
「もちろん、生配信も同時にやるけどね」
そして、十台弱のPCの設置をやり、起動確認まで終った所で関口が戻って来た。
「おお、やってるな……」
だが……。
「あの……制服着てるのは判るけどさ……」
関口の今の格好は、「自警団」の「制服」であるスカジャンに、厚手のカーゴパンツ、そしてウォーキングブーツ。
だが、両手で抱えてるのは……。
「あ……ごめん……流石にこんなモノ持って来たら気付くよな……」
関口が手に持っているのは「魔法」の「焦点具」を兼ねている両手持ちの大型ハンマー。
人の頭を思いっ切り殴れば、相手は死ぬサイズのヤツだった。
「急な『祭』だったんで、人手が足りないのに、お前しか当てがなかったんだけど、お前、こう云うの嫌いそうだったし……この『祭』、外国では有名だけど『本土』では知られてないみたいだから……わざと詳しい説明を省い……うわっ⁉」
「あ……ま……眞木さん……落ち着いて……」
背後からは久留間さんの声。
「もっと早く気付くべきだった……。おい……この『祭』って、そもそも、どう云う『祭』だ?」
私は関口のスカジャンの襟元を両手で掴んで、そう言った。
「決闘だ」
「はぁ?」
「あ~、『上野』の『寛永寺僧伽』とウチの『自警団』の間でトラブルが有ってな……で、双方から代表を出して、決闘で決着を付ける事になって……ついでに、動画の撮影と生配信をやって『自警団』の宣伝に……」
「あ、どうも、関口さん、その人がバイトの子?」
そう声をかけてきたのは、眼鏡をかけて、髪をバンダナで覆った、背は高い方だが細身の三十過ぎの男性。
「いや、呼び捨てでいいっすよ。こいつが……」
関口は「しまった」と云う顔になった。
どうやら、私を紹介しようとしたらしいが……私の名字は知らないし、名前は知ってるが……「御当地ヒーロー」としてのコードネームだと思い込んでいる。
「眞木です。眞木瀾」
とっさに妹の治水の名字(なお、子供の頃に両親が離婚したんで、父親に育てられた私と、母親に育てられた双子の妹の治水では名字が違う)と、本当の名前を組合せた偽名をデッチ上げた。
「高校生?」
「ええ」
「学校は?」
「福岡の久留米のS女学院ですが……」
「ええ? お嬢様学校だよね? 芸能人にも、結構、そこの出身の人が多かったりするような……」
「は……はい……」
実は同じ市内だけど結構離れてる進学校の理系コースなんだけど……まぁ、妹と中学の頃の同級生が行ってる学校なので、全く知らない訳じゃないからボロは出ないだろう。
「えっと……で、この人は?」
「撮影チームの統括の久留間さんだ」
「よろしく。じゃあ、これ付けてて」
そう行って渡されたのは「報道」の2文字の間に○に帆船の絵が描かれたマークの腕章。なお、帆船の帆には漢数字の旧字体の「七」が書かれてるので、多分、「入谷七福神」のマークなのだろう。
「じゃあ、ちょっと、私は制服に着替えてから、また来るよ」
「判った」
その時、久留間さんが「あ~」と云う顔になった。
「えっと……ウチ……ガチで体育会系気質って云うかヤンキー気質なんで……そのさ……『正社員』に聞かれてる所で、『正社員』のそれも前線要員の人にタメ口きいたら怒られるよ」
「へっ? ええっと……あぁ、なるべく気を付けます」
だが、どうやら、私は、一瞬「何言ってんだ?」と云う表情になったらしい。
「最近の『本土』の子って、そんな感じなの?」
「えっと……私は……親が年上の相手にも平気でタメ口をきくような人間だったので……」
「なるほどね……。とりあえず、バイトは『正社員』に敬語、『正社員』の中でも非戦闘員は前線に出る人に敬語、同じ立場だと年下は年上に敬語なんで、気を付けてね」
「は……はい……」
「じゃあ、あれの設置って手伝ってもらう事って出来る?」
「あ……ま……まぁ……オンラインゲームなんかが趣味なんで、多少は……」
これも嘘で、オンラインゲームが趣味なのは妹の治水だ。私が自宅が使ってるのは……性能はゲーム専用PC並だけど、あくまでCAD用のPCだ。
テント内に設置されようとしてるのは……タワー型のPC。しかも、CPU・グラフィックボードともに業務用・高速計算用のモノらしい。
「あの……設置するのはいいんですが、何で、こんな所に、こんな凄そうなPCを?」
「ああ、ここって、対馬のすぐ近くだよね。で、対馬に来た韓国からの観光客が、こっちにも寄る事が有ってさ」
「はぁ……」
「その中に、ここの『祭』を見に来た韓国の映画関係者が居て……で、韓国の映画では、撮影現場にPC持ち込んで、現場で撮影終ったそばから仮編集をやるって話を聞いたんで……で、こっちは、撮影終ったそばから、本編集までやって、そのまま『祭』の様子を動画サイトにUPする事にしたんだ」
「へえ……」
「もちろん、生配信も同時にやるけどね」
そして、十台弱のPCの設置をやり、起動確認まで終った所で関口が戻って来た。
「おお、やってるな……」
だが……。
「あの……制服着てるのは判るけどさ……」
関口の今の格好は、「自警団」の「制服」であるスカジャンに、厚手のカーゴパンツ、そしてウォーキングブーツ。
だが、両手で抱えてるのは……。
「あ……ごめん……流石にこんなモノ持って来たら気付くよな……」
関口が手に持っているのは「魔法」の「焦点具」を兼ねている両手持ちの大型ハンマー。
人の頭を思いっ切り殴れば、相手は死ぬサイズのヤツだった。
「急な『祭』だったんで、人手が足りないのに、お前しか当てがなかったんだけど、お前、こう云うの嫌いそうだったし……この『祭』、外国では有名だけど『本土』では知られてないみたいだから……わざと詳しい説明を省い……うわっ⁉」
「あ……ま……眞木さん……落ち着いて……」
背後からは久留間さんの声。
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