正偽の味方

蓮實長治

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どこにも終らない夜はない

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 ようやく、サービス・エリアに到着し、一〇分間の小休憩をする事になった。
「このまんまじゃ、予定、かなり押しちゃうよ」
「どうします? あの工場、土日しか使わせてもらえないんですよね?」
「いっそ、あっちに泊まるか?」
「最悪は、そうしますか……」
 監督・助監督・スクリプターなんかがジュースの自販機の前で、打ち合わせをやっている。
「ああ、そろそろ、時間だな」
「バスに戻るか」
 やがて、スタッフ・キャストはマイクロ・バスに分乗し……。
 あ……あれ?
くれないクン、居ねえぞ」
「ちょっと探して来ます。あ……誰か、男性の方、男性用トイレに居ないか見て来て下さい」
「しょ~がねえなぁ……」
 あたしは、喫煙スペースを探す。
 やがて……。
 ああ、やっぱりだ。
 ポケ~っとリラックスした表情で、チュ~の奴が煙草を吸ってる。
「あれ? 兄ちゃん、どっかで見た事が……」
 チュ~の近くに居たトラックの運ちゃんらしい中高年の男が、チュ~に、そう話し掛けていた。
 あたしは、一番近くのジュースの自販機に猛ダッシュ。
 走りながら、財布の中身を確認。
 よし、千円札は3枚。足りる。
 あたしは缶コーヒーを何本も買う。
 あと、バス内でチュ~が飲むであろうミネラルウォーターも。
 ギリギリだ。
 でも、間に合う筈だ。
「あ~、すいません、その子、実は芸能人なんで、煙草吸ってたのは黙ってて下さ~い」
 そう言いながら、あたしは、喫煙スペースに居た人達に缶コーヒーを配る。
「え……?」
「ああ、そう云う事か……。お堅い御時世だしなぁ……」
「ところで、兄ちゃん、その煙草、何て銘柄だ?」
「えっ?」
「何か、すげ~いい匂いがすんだけど……」
「あ……あの……」
 後から考えたら……気付いておくべきだった。
 何故、チュ~が吸ってる煙草は、のかを……。
 どうして、チュ~が吸ってる煙草ののかを……。
 もっと早い内に……何か変だと気付いとくべきだった。
「ためしに一本分けてもらえねえか?」
 喫煙所に居たおっちゃん達の内、一番、ズ~ズ~しそうなのが、そう言った。
「は……はい……」
「悪いね……。うん……いいな、この煙草……」
「あ、じゃあ、俺も一本もらえるか?」
「俺も……」
「は……はい……」
「いや、兄ちゃん、いい奴だね。きっと、芸能界でも成功するよ、あははは……」
「じゃ、ちょっと、もう時間が無いんで……はい、スタッフさん達も待ってるよ」
「え……ええ……」
 あたしは、強引に、チュ~を喫煙スペースから連れ出して……チュ~から煙草をもらったおっちゃん達は、呑気に手を振ってる。
 ようやく、マイクロ・バスに辿り着き……。
「あ~、監督さんから連絡が有りました。もう、現場に辿り着けるのは、昼過ぎになる可能性も出て来たんで、今日と明日はギリギリまで撮影して、向こうに泊まります。今、東京事業所経由で、撮影現場の工場との交渉と、向こうのホテルなんかを空きの確認や予約をやってもらってます」
 撮影部のスタッフがバス内で、そう説明。
「しまった……」
 バスに辿り着いたチュ~の顔色が悪い。
「どうした?」
「煙草……残ってないです」
「後で、コンビニか何かで買ってやるから……」
「それが……その……」
「はい、じゃあ、全員、シートベルトお願いします」
 運転手さんが、そう言うと、マイクロバスは発進し……。
 サービスエリアの出口を抜け……。
 そして……衝撃。
 ……って、何でだよッ?
 更に衝撃。
 おい、どうなってる?
 何だ?
 横を走ってたトラックが……あたしらが乗ってるマイクロバスに激突。
 更に、後ろを走ってたトラックも激突。
 特撮番組のキャスト・スタッフが乗ってるマイクロバスに起きたのは……まるで特撮そのまんまの事態。
「な……何だ……何が起きてんだ?」
 その時は……すっかり気が動転して訳が判らないままだった。
 でも……繰り返すが……後から考えると、もっと早い内に気付いとくべきだった。
 けどさ……。
 いくら何でも、こんな無茶苦茶な出来の悪いギャグみたいな事が起きるなんて……。
 
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