呪詛返死

蓮實長治

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第3章:半グレ系デリヘル業者

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 白昼、新宿の繁華街に機動隊が出動する事態になった。
 容疑者が銃を所持している可能性が有ったからだが……本当に容疑者の「事務所」に突入した機動隊員は銃撃を受け、怪我をした者も何人も出た。
 始まりは1人の素行不良な刑事の失踪だったのに……最終的には三〇近い死体が発見され、その死体の何倍もの人数の容疑者が逮捕される大事件と化してしまった。
 不良刑事から金を揺り取られていた……暴対法上はヤクザだが、事実上は「広域暴力団の2次団体に上納金を納めてるだけの年寄のチンピラ」が、半グレにその不良刑事の殺害を依頼した、死体は自分で始末した、これから言う場所に骨を埋めた、と言って自首してきたのだ。
 最初の内は、誰も、本気にしなかった。
 将来に不安を感じた高齢のチンピラが、刑務所内で余生を送ろうと目論んだのだろう……対応した警官は、そう考えた。
 年寄のチンピラが失踪した有村刑事の警察手帳を持っているのが判るまでは……。
 そして、年寄のチンピラの携帯電話に、新宿を中心に活動している半グレ集団のリーダーから、死体の始末を依頼する連絡が入り……。
 念の為、池袋署に連絡し、巡査2名が確認の為に現場に派遣されたが……殉職した。
「これ、どう調書作れば良いんだよ?」
 新宿署の組対マル暴の課長は頭を抱えていた。
 普通は管轄争いが起きるものだが……今回ばかりは池袋ブクロ署の方に全部任せたくなった。
「でも……そもそもの始まりは、何だったんですか?」
 新宿署の組対マル暴の「主」と化してるアラフィフの刑事がそう言った。
「そりゃ……有村さんが……ああ、これも、どう発表すりゃいいんだよ?」
「違いますよ。有村さんが、あの爺ィに金をたかったのは……あの爺ィが、近頃、景気が良さそうだったからですよね?」
「ああ、あの爺さんは、そう自白うたったそうだね」
「で、あの爺ィが景気良くなったのは、半グレからデカい仕事を破格の金で請け負ったからだ……少なくとも、あの爺ィが自白うたった事が本当ならですけどね」
「ああ、それも、捜査しなきゃいけないんだよなぁ……。明日、捜査本部が正式に設立できる事になったから、書類なんかの準備頼むよ」
 本当に、年寄のチンピラが自白した場所に、ガソリンまたは灯油で焼かれたと見られる人骨が埋められていたのだ……
「でも、半グレのリーダーは……最初の死体は、自分達が殺したものじゃない、って言ってますよ……。デリヘルの女どものと連絡が取れなくなったんで、行ってみたら、女どもとが全員死んでたって……」
「信じられるの、そんな事?」
「だって……変ですよ。あいつらは犯罪者でも、狂犬じゃない。?」
「何でって言われても……その件についても適当なを考えんのが、君達の仕事の一部だろ?」
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