魔導兇犬録:哀 believe

蓮實長治

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第四章:DEAD STROKE

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「話は、かなり前に遡る。二〇〇一年の九月一一日だ」
「そこからか?」
 説明を始めたスキンヘッドの大男さんに、弁護士さんが当然のツッコミ。
「我々みたいな中高年にとっては、それなりの齢になってからリアルタイムで経験した事ですが……ここに居る大半が十代ですから」
「たしかに……」
 会議室に居るのは、あたし達「プリティ・トリニティ」の3人に「フラワレット・カルテット」の4人、スキンヘッドの大男さんに、六〇ぐらいの弁護士さん、千明さんとひなたさんと青円さんに……何故か眞木さんのお姉さん。
「二〇〇一年九月一一日に精神操作能力者によって起こされたとされるニューヨークのテロ事件とその対応の失敗の結果、当時のアメリカ大統領は暗殺され、副大統領が跡を継いだ。しかし、その結果、アメリカは2つに分裂し、政治的に保守派の州からなるアメリカとリベラル派の州とカナダ連邦が合併して生まれた北米連邦に分裂した。現在では北米連邦の方が一般的に『アメリカ』と呼ばれている事からも判る通り、最終的に優勢になったのは北米連邦だったが、在日米軍の大半はアメリカ連合国側に付いた」
「今の方がマシとは口が裂けてもいいたくないが……世の中の狂い方が酷かったのは、あの頃の方だったな……」
 そうか……あたし達にとっては生まれる前だけど……2人にとっては……自分が経験した事なんだ……。
「日本政府は……日本を、アメリカ連合国……正確には在日米軍に明け渡す事を決定し、日本はアメリカ連合国ないしは在日米軍の完全属国と化した。アメリカ本土では、アメリカ連合国はどんどん勢力を失なっていったが……日本有る限り、アメリカ連合国は存続し続ける、という事態に陥った。当然ながら、政府が危惧したのは……自衛隊が政府を日本と日本国民の敵と見做しクーデターを起こす事だった」
「自衛隊って……富士の噴火より前の軍隊の事でしたっけ?」
「話がややこしくなる……世界には自国の軍隊が複数系統有る国が存在している。例えば、二〇世紀後半に革命が起きたイランでは、革命前からの軍隊を存続させてはいるが、革命政権は、その軍隊を完全には信用していなかった。そこで、革命前から有る軍隊の抑止力として革命防衛隊と呼ばれる別系統の軍隊を作った。似たような事が、アメリカ連合国の属国となった日本でも起きた……。自衛隊に対する抑止力となる軍事組織『特務憲兵隊』が作られた……が、当然ながら、人数分も構成員の質も元から有った自衛隊には劣る。自衛隊が日本政府を国と国民の敵と見做しクーデターを起こした場合に、特務憲兵隊が抑止力として機能するには……マトモな方法では困難だった」
「で、作られたのは……例えば、コレ」
 眞木さんのお姉さんが、モバイルPCを操作すると……会議室のスクリーンに……何とも言えないずんぐりむっくりした体型に明らかに悪役顔の変な格好のロボットの写真が表示された。
 たしか「ガンダム」とかいう昔のアニメに出て来たロボットに似せようとした筈が……結果として、この残念な姿になった高さ4mぐらいの戦闘用パワーローダー「国防戦機」だ。
「他にも……『魔法使い』部隊なんかも設立された。富士の噴火以後にテロ組織と化した通称『i部隊』も、その1つだ。『魔法』の中でも近代西洋オカルティズム系……特にいわゆる『黒魔術』系を専門にしている」
「そのiって何ですか?」
「学校の数学で『虚数』は、もう習っていますか?」
「一応……」
「虚数を表わす記号のiだそうだ。イマジナリー・ナンバーの略」
「へっ?」
「その部隊では……例えば、普通は第1小隊・第2小隊などと呼ぶ所を第1i小隊・第2i小隊と呼んでいたらしい」
「何で?」
「ユダヤ系の神秘思想のシンボルである『生命の樹・セロフィト』の構成要素には、それぞれ番号がふられているが、それを引っくり返したシンボルである『悪の樹・クリフォト』では、1番の番号がふられている要素に対応するものには1iの番号がふられる場合が有るんだそうだ。実数が『善』の数なら、虚数は『悪』の数だと考えたらしい」
 なぜか……「やれやれ」と言った口調で、そう説明したのは眞木さんのお姉さん。
「あの……学校の数学で習った虚数って……そんな数でしたっけ?」
「んな訳あるか。近代以降のオカルトってのは、近代科学から用語や概念だけを借りて、全く見当違いの意味に使う事が良く有るらしい。生物学からは進化の概念を借りて霊的進化って事を言い出したり、量子力学から波動関数の概念を借りて、いわゆる『気』だか『霊力』だかの事を『波動』って呼んだり……でも、全部デタラメだ」
「でも……じゃあ……近代西洋オカルティズム系の『魔法使い』って……」
「居るよ。ゾロゾロと。そして、インチキでも何でもなく『魔法』を使える」
「ちょ……ちょっと待って下さい。理屈はインチキなのに……魔法そのものはインチキじゃないって……どう云う事……なんですか?」
「ややこしい事に……使
 続いて……ひなたさんが……更にとんでもない事を言い出した。
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