31 / 83
第四章:DEAD STROKE
(6)
しおりを挟む
「話は、かなり前に遡る。二〇〇一年の九月一一日だ」
「そこからか?」
説明を始めたスキンヘッドの大男さんに、弁護士さんが当然のツッコミ。
「我々みたいな中高年にとっては、それなりの齢になってからリアルタイムで経験した事ですが……ここに居る大半が十代ですから」
「たしかに……」
会議室に居るのは、あたし達「プリティ・トリニティ」の3人に「フラワレット・カルテット」の4人、スキンヘッドの大男さんに、六〇ぐらいの弁護士さん、千明さんと陽さんと青円さんに……何故か眞木さんのお姉さん。
「二〇〇一年九月一一日に精神操作能力者によって起こされたとされるニューヨークのテロ事件とその対応の失敗の結果、当時のアメリカ大統領は暗殺され、副大統領が跡を継いだ。しかし、その結果、アメリカ合衆国は2つに分裂し、政治的に保守派の州からなるアメリカ連合国とリベラル派の州とカナダ連邦が合併して生まれた北米連邦に分裂した。現在では北米連邦の方が一般的に『アメリカ』と呼ばれている事からも判る通り、最終的に優勢になったのは北米連邦だったが、在日米軍の大半はアメリカ連合国側に付いた」
「今の方がマシとは口が裂けてもいいたくないが……世の中の狂い方が酷かったのは、あの頃の方だったな……」
そうか……あたし達にとっては生まれる前だけど……2人にとっては……自分が経験した事なんだ……。
「日本政府は……日本を、アメリカ連合国……正確には在日米軍に明け渡す事を決定し、日本はアメリカ連合国ないしは在日米軍の完全属国と化した。アメリカ本土では、アメリカ連合国はどんどん勢力を失なっていったが……日本有る限り、アメリカ連合国は存続し続ける、という事態に陥った。当然ながら、政府が危惧したのは……自衛隊が政府を日本と日本国民の敵と見做しクーデターを起こす事だった」
「自衛隊って……富士の噴火より前の軍隊の事でしたっけ?」
「話がややこしくなる……世界には自国の軍隊が複数系統有る国が存在している。例えば、二〇世紀後半に革命が起きたイランでは、革命前からの軍隊を存続させてはいるが、革命政権は、その軍隊を完全には信用していなかった。そこで、革命前から有る軍隊の抑止力として革命防衛隊と呼ばれる別系統の軍隊を作った。似たような事が、アメリカ連合国の属国となった日本でも起きた……。自衛隊に対する抑止力となる軍事組織『特務憲兵隊』が作られた……が、当然ながら、人数分も構成員の質も元から有った自衛隊には劣る。自衛隊が日本政府を国と国民の敵と見做しクーデターを起こした場合に、特務憲兵隊が抑止力として機能するには……マトモな方法では困難だった」
「で、作られたのは……例えば、コレ」
眞木さんのお姉さんが、モバイルPCを操作すると……会議室のスクリーンに……何とも言えないずんぐりむっくりした体型に明らかに悪役顔の変な格好のロボットの写真が表示された。
たしか「ガンダム」とかいう昔のアニメに出て来たロボットに似せようとした筈が……結果として、この残念な姿になった高さ4mぐらいの戦闘用パワーローダー「国防戦機」だ。
「他にも……『魔法使い』部隊なんかも設立された。富士の噴火以後にテロ組織と化した通称『i部隊』も、その1つだ。『魔法』の中でも近代西洋オカルティズム系……特にいわゆる『黒魔術』系を専門にしている」
「そのiって何ですか?」
「学校の数学で『虚数』は、もう習っていますか?」
「一応……」
「虚数を表わす記号のiだそうだ。イマジナリー・ナンバーの略」
「へっ?」
「その部隊では……例えば、普通は第1小隊・第2小隊などと呼ぶ所を第1i小隊・第2i小隊と呼んでいたらしい」
「何で?」
「ユダヤ系の神秘思想のシンボルである『生命の樹・セロフィト』の構成要素には、それぞれ番号がふられているが、それを引っくり返したシンボルである『悪の樹・クリフォト』では、1番の番号がふられている要素に対応するものには1iの番号がふられる場合が有るんだそうだ。実数が『善』の数なら、虚数は『悪』の数だと考えたらしい」
なぜか……「やれやれ」と言った口調で、そう説明したのは眞木さんのお姉さん。
「あの……学校の数学で習った虚数って……そんな数でしたっけ?」
「んな訳あるか。近代以降のオカルトってのは、近代科学から用語や概念だけを借りて、全く見当違いの意味に使う事が良く有るらしい。生物学からは進化の概念を借りて霊的進化って事を言い出したり、量子力学から波動関数の概念を借りて、いわゆる『気』だか『霊力』だかの事を『波動』って呼んだり……でも、全部デタラメだ」
「でも……じゃあ……近代西洋オカルティズム系の『魔法使い』って……」
「居るよ。ゾロゾロと。そして、インチキでも何でもなく『魔法』を使える」
「ちょ……ちょっと待って下さい。理屈はインチキなのに……魔法そのものはインチキじゃないって……どう云う事……なんですか?」
「ややこしい事に……理屈は出鱈目でも、魔法そのものは発動するんだよ。あたしら『魔法使い』にとっても訳がわかんね~事だけどさ」
続いて……陽さんが……更にとんでもない事を言い出した。
「そこからか?」
説明を始めたスキンヘッドの大男さんに、弁護士さんが当然のツッコミ。
「我々みたいな中高年にとっては、それなりの齢になってからリアルタイムで経験した事ですが……ここに居る大半が十代ですから」
「たしかに……」
会議室に居るのは、あたし達「プリティ・トリニティ」の3人に「フラワレット・カルテット」の4人、スキンヘッドの大男さんに、六〇ぐらいの弁護士さん、千明さんと陽さんと青円さんに……何故か眞木さんのお姉さん。
「二〇〇一年九月一一日に精神操作能力者によって起こされたとされるニューヨークのテロ事件とその対応の失敗の結果、当時のアメリカ大統領は暗殺され、副大統領が跡を継いだ。しかし、その結果、アメリカ合衆国は2つに分裂し、政治的に保守派の州からなるアメリカ連合国とリベラル派の州とカナダ連邦が合併して生まれた北米連邦に分裂した。現在では北米連邦の方が一般的に『アメリカ』と呼ばれている事からも判る通り、最終的に優勢になったのは北米連邦だったが、在日米軍の大半はアメリカ連合国側に付いた」
「今の方がマシとは口が裂けてもいいたくないが……世の中の狂い方が酷かったのは、あの頃の方だったな……」
そうか……あたし達にとっては生まれる前だけど……2人にとっては……自分が経験した事なんだ……。
「日本政府は……日本を、アメリカ連合国……正確には在日米軍に明け渡す事を決定し、日本はアメリカ連合国ないしは在日米軍の完全属国と化した。アメリカ本土では、アメリカ連合国はどんどん勢力を失なっていったが……日本有る限り、アメリカ連合国は存続し続ける、という事態に陥った。当然ながら、政府が危惧したのは……自衛隊が政府を日本と日本国民の敵と見做しクーデターを起こす事だった」
「自衛隊って……富士の噴火より前の軍隊の事でしたっけ?」
「話がややこしくなる……世界には自国の軍隊が複数系統有る国が存在している。例えば、二〇世紀後半に革命が起きたイランでは、革命前からの軍隊を存続させてはいるが、革命政権は、その軍隊を完全には信用していなかった。そこで、革命前から有る軍隊の抑止力として革命防衛隊と呼ばれる別系統の軍隊を作った。似たような事が、アメリカ連合国の属国となった日本でも起きた……。自衛隊に対する抑止力となる軍事組織『特務憲兵隊』が作られた……が、当然ながら、人数分も構成員の質も元から有った自衛隊には劣る。自衛隊が日本政府を国と国民の敵と見做しクーデターを起こした場合に、特務憲兵隊が抑止力として機能するには……マトモな方法では困難だった」
「で、作られたのは……例えば、コレ」
眞木さんのお姉さんが、モバイルPCを操作すると……会議室のスクリーンに……何とも言えないずんぐりむっくりした体型に明らかに悪役顔の変な格好のロボットの写真が表示された。
たしか「ガンダム」とかいう昔のアニメに出て来たロボットに似せようとした筈が……結果として、この残念な姿になった高さ4mぐらいの戦闘用パワーローダー「国防戦機」だ。
「他にも……『魔法使い』部隊なんかも設立された。富士の噴火以後にテロ組織と化した通称『i部隊』も、その1つだ。『魔法』の中でも近代西洋オカルティズム系……特にいわゆる『黒魔術』系を専門にしている」
「そのiって何ですか?」
「学校の数学で『虚数』は、もう習っていますか?」
「一応……」
「虚数を表わす記号のiだそうだ。イマジナリー・ナンバーの略」
「へっ?」
「その部隊では……例えば、普通は第1小隊・第2小隊などと呼ぶ所を第1i小隊・第2i小隊と呼んでいたらしい」
「何で?」
「ユダヤ系の神秘思想のシンボルである『生命の樹・セロフィト』の構成要素には、それぞれ番号がふられているが、それを引っくり返したシンボルである『悪の樹・クリフォト』では、1番の番号がふられている要素に対応するものには1iの番号がふられる場合が有るんだそうだ。実数が『善』の数なら、虚数は『悪』の数だと考えたらしい」
なぜか……「やれやれ」と言った口調で、そう説明したのは眞木さんのお姉さん。
「あの……学校の数学で習った虚数って……そんな数でしたっけ?」
「んな訳あるか。近代以降のオカルトってのは、近代科学から用語や概念だけを借りて、全く見当違いの意味に使う事が良く有るらしい。生物学からは進化の概念を借りて霊的進化って事を言い出したり、量子力学から波動関数の概念を借りて、いわゆる『気』だか『霊力』だかの事を『波動』って呼んだり……でも、全部デタラメだ」
「でも……じゃあ……近代西洋オカルティズム系の『魔法使い』って……」
「居るよ。ゾロゾロと。そして、インチキでも何でもなく『魔法』を使える」
「ちょ……ちょっと待って下さい。理屈はインチキなのに……魔法そのものはインチキじゃないって……どう云う事……なんですか?」
「ややこしい事に……理屈は出鱈目でも、魔法そのものは発動するんだよ。あたしら『魔法使い』にとっても訳がわかんね~事だけどさ」
続いて……陽さんが……更にとんでもない事を言い出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる