魔導兇犬録:哀 believe

蓮實長治

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第四章:DEAD STROKE

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「たとえば、私もこいつも、どっちも密教系だけど……」
 そう言って千明さんはひなたさんを指差した。
「こいつの流派でも私の流派でも『守護尊』って考えが有る。要は守り神みたいなモノだ」
「で、あたしの流派では誰それの守護尊はナニナニってのは得意な術の系統を一言で言い表す為の『記号』だ。摩利支天だの金剛蔵王権現だの普賢菩薩だのが本当に居るかは……えっと……不可知論だっけ……」
「おい、普段使わない単語を使っても頭良さげに見えるかは別問題だぞ」
 ひなたさんの説明に続いて、眞木さんのお姉さんがツッコミ。
「うるせえな……。要は、あたしの守護尊は金剛蔵王権現って神様だけど……同じ密教系の奴なら、その一言で、あたしの『気』のタイプとか、どんな術が得意かとかは何となく判るけど……あたしらの流派の考えでは、金剛蔵王権現サマが本当に居て、あたしを守ってくれてるかは知った事じゃない。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない」
「一方、私の流派は……『居る』に近い。で、あたしとこいつの流派では、何て言うのかな……世界観だっけ?」
「おい、らん、あたしにやったのと同じツッコミをやらねえのか?」
「元から頭良さげに見える奴に『小難しい事言っても頭良さげに見えないぞ』なんて言う意味は有るのか?」
「てめ……いいや、後で話が有る」
「漫才は他所よそでやれ。まあ……いいや。こいつと私の流派では、同じ密教系でも『魔法』に関する『世界観』が大きく違うが……人によって術の種類毎の向き不向きは有るにせよ、どっちの流派で修行しても似たような術が使えるようになる」
「ちょ……ちょっと……何か……おかしく……ないですか?」
りんちゃん、ついて行けてる……」
「……ごめん、わかんない……」
「その子『知性派』キャラが役割じゃないの?」
 向こうのチームから当然のツッコミ。
「あと……陰陽道で言う『式神』、西洋魔法で言う『使い魔ファミリア』『守護天使』、密教系で言う『護法』を従えたり契約したりする場合でも……『元から居たのを呼び出す』『霊力なんかを集めて自分で作り出す』『神サマやら魔王やらから授けてもらう』……どの考えに基いた『使い魔を従える』術でも、才能と努力と条件さえ揃えばだけど……どれでも、うまくいく」
「何が……どうなって……わけが……」
「こんな話は聞いた事は有るか? 野球のピッチャーがカーブを投げる場合、こう投げれば巧くいくって『定石』は有る。でも、プロ野球のカーブが得意なピッチャーがカーブを投げる様子を高速度カメラで撮影したら……『。更に、
 眞木さんのお姉さんが……そんな説明をやり始める。
「甚だしい場合は……プロ野球の歴史に名を残すレベルの名投手が、ほぼ同じ位置を狙ったほぼ同じコースのカーブを投げた場合、体の動きや、球を放すタイミングや、球の握り方が毎回違った。でも、
「た……たしかに……さっきの話とは似てますけど……野球と魔法じゃ……」
「『魔法』系の修行をやってない素人の愚にもつかない考えかも知れないけど……『魔法』も?」
「えっ?」
「スポーツや武道・武術や格闘技でも良く有る。『こう云うのをイメージして練習しろ』と言われて、その通りにやると、技や動きを身に付けられる練習法が有る。ところが、練習する時に浮かべるイメージは科学的には正しくない事も多い。けど……
「つまり……『こうイメージして練習すれば、この魔法を身に付けられる』ってのが有っても、練習する時に浮かべるイメージと実際に起きてる事は違う場合が有るかも、って事ですか?」
 瑠華ルカちゃんが、そうまとめてくれる。
「そ……それが……あんたの本性? あざとかわいいフリして実は頭がいいって……男性ファンから嫌われるよ……」
 向こうのチームの「一匹狼」担当さんが、そう言った。
「そう云う事。例えば、ある古武術では、剣を振る時に腕以外の筋肉を使うようにする為に『左肘が切断された状態をイメージして素振りをしろ』と教えてる。多分、『魔法』も同じなんじゃないかな? ある『魔法』を身に付ける事が出来るなら、実は、実際に起きてる事とは食い違いが有っても、修行方法としては妥当だろう」
「でもさぁ……あたしらみたいな『魔法使い』は、お前みたいな理系じゃなくて、どっちかって~と『職人』が多いからさぁ……」
「そこだ……。実際に起きてる事とは食い違っているかも知れない『修行の為のノウハウ』と実際に起きてる事の区別が曖昧なまま『修行の為のノウハウ』だけが増えていくとどうなると思う?」
「どうなんの?」
「蓄積されたノウハウの中に……有りもしないパターンを見出す奴が出る。霊的・魔法的なモノは通常のカメラに写らない筈なのに、写真の中に幽霊を見出してしまうようにな。多分だけど……それが……『魔法』の流派ごとに『魔法』についての理屈が食い違っている理由だ」
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