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第2章:四角い恋愛関係

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「だから、そのタルカン・バートルって何なの?」
 謁見の間の次の間に向かいながら、ボクはラートリーにそう訊いた。
「称号だ。意味は『勇士の中の勇士』。草原の民の部族長会議の『クリルタイ』が何か大きな功績をあげた者に授ける。ただし……この称号を誰かが授かるのは、草原の6部族の部族長が全会一致で賛成した場合だけだ」
「じゃあ、今は、誰が、その称号を授かってるの?」
「居ない……4ヶ月前まで、私は草原に居たけど……その時点では、誰も居なかった筈だ」
「じゃあ、誰かが授かったとしたら、その後? 誰か、心当り無い?」
「いや……待て……まさか……」
 ラートリーの顔色が……どんどん真っ青になっていく。
「イルビスっ‼」
 その時、背後から女の子の声……。
 ラートリーが「やれやれ」って感じで顔に手を当てた。
「イルビスって……何?」
「草原の民の言葉で……雪豹の事だ」
 そう言って、ラートリーが指差したのは……自分の胸。
 そこに描かれているのは……。
 ボク達は、声のした方を見る。
「やはり……貴様か……。だが、何故、ここに居る?」
 声の主は……ボクより少し齢下の女の子。
 黒い髪と目。
 首のあたりで三つ編みにした髪で後頭部の左右に2つの輪っかが形作られている。
 齢の割に「可愛い」というより「美人」系の顔立ちだけど……目は冷たく、表情からは何の感情も読み取れない。
 ラートリーと似た服を着てるけど……胸に描かれた紋章は……鷲か……鷹か……もしくは隼。
「聞きたいのは、こっちだ。何でここに居る?」
「『グリフォンガルーダ』の部族の族長の供の1人として王都に来た。だが、私としては、ややこしい話は苦手だし、国王の手を煩わせるのも、どうかと思っている。なので、早速、本題に入らせてもらう。?」
「おい、一体全体、部族長会議クリルタイは誰に『勇士の中の勇士タルカン・バートル』の称号を授けた?」
「……お前、いつも『私が一番嫌いなのは馬鹿だ』と言っていたよな?」
「それが、どうした?」
「そのお前が、馬鹿のフリをしてしらばっくれる気か?」
「あいつか……。あいつが……『勇士の中の勇士タルカン・バートル』の称号を授かったのか?」
「まだ、本人は知らないようだがな」
「ヤツに会ってどうする? 草原の民の英雄になった事を祝うだけか?」
「貴様も、この王都出身とは言え、何年も草原で暮していた。知っている筈だ。草原の民の総意が何かをな」
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