ボクと契約して異世界に転生してよ

蓮實長治

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ボクと契約して異世界に転生してよ

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 最初に、ヤツに遭ったのは、何て世界の……何て国だったっけ?……ともかく、こことは違う世界で学校に行く途中にトラックに轢かれた時だった。
 いや、俺が最初の人生を送った世界の記憶は既に曖昧になってるので、トラックとは何なのか、何の学校なのか、最初の世界が、他の世界とどう違うのかと聞かれても、正確に答える自信は無いが。
 生きられれば良いと思って、その「何か」と「契約」したら……そいつは傭兵の手配師で、俺は数合わせの傭兵として、ロクな装備も支給されないまま地獄のような戦場で戦わされる羽目になった。
 まぁ、俺が傭兵デビューした世界の記憶も、最早、曖昧だが、俺は獄卒オニか悪魔のような姿になって、更に別の世界の魔物と戦っていた気がするので、本当に「地獄」に「転生」したのかも知れないが……。
 そして、その世界での死の間際、傭兵の手配師と「契約」を更新してしまい……。
 オスだった事も、メスだった事も……性別が「オス・メス」では分類出来ない「何か」だった事も有る。
 様々な生物に転生した。それどころか、機械の体や、魔法で作られた傀儡に入った事も有る。
 1つの体に複数の魂が入ってる存在や、魂は1つだが体は複数有る存在になった事や、集合知性体の一部になった事も有るので、ひょっとしたら、俺自身が、複数の魂が入り混じった存在になったり、別の誰かの記憶を俺の記憶だと勘違いしている可能性も有るが……。
 侵略者の手先だった事も有れば、侵略者を撃退する側だった事も有る。
 今は、他の恒星系からやって来た侵略者を撃退する為に戦っている。
 そして……今回の戦いは終りつつ有った。

「次の仕事が入ったんだけど、契約は更新するかい?」
 俺達がもたらした平和は……1世代近く続いているらしいが、俺は、その平和を享受する事など出来なかった。
 兵器倉庫の中で俺の体は朽ち果てつつ有り……もし、再び、この世界に戦乱が訪れても、俺の体は、最早「旧式」らしいので、役には立つまい。
「また来たか。勘が鈍らない内に、次の場所に連れていけ」
「ところで、報酬が積り積って……平和な世界に転生して、のんびり暮す事も出来るんだけど、どうする?」
「平和はしょうに合わねぇ」
「君とは長い付き合いだけど、殺伐とした性格になっちゃったね」
「誰のせいだと思ってんだ?」

 次の雇い主は、どこかの滅びかけた世界の支配者だった。
 自分が支配している世界の住人を丸ごと、もう少し長く持ちそうな世界に移住させる為に、移住先の世界の住人を適当に間引いて、残りを奴隷にするつもりらしい。
 俺は、光輝く巨人に転生して、次元の門から、その世界に降り立った。
 俺の担当区域は、その「地球」って世界の「日本」とか言う国だ。
 何か……懐しさを感じたが……まぁ、これも仕事だ。
「じゅわっ‼」
 俺は、構えを取り、目の前に有る大都市に向けて、容赦なく浄化の炎を放射した。
 この世界の軍隊も、俺に立ち向かったが……今回の体と、幾多数多の世界で戦い続けた俺の敵では無かった……。
 あの手配師は、「いつか平和な世界でのんびり暮す」と云う報酬を提示しているが、俺にとっての報酬は戦いそのものだ……。
 しかし、今回の「報酬」は……正直イマイチ……おやっ?
 上空で何かが爆発し……俺の体は焼け爛れていく……。
 これだ……俺が求めていたのは恐怖だ。この死の恐怖だ……。転生を続けるほぼ不死の存在と化した今も、魂の奥底に眠っている本能的な感覚。俺の中に残る唯一の感情。
「この世界の連中は、君達を撃退するのに、核爆弾を使ったみたいだね」
「馬鹿だな。この世界の連中は……それほど放射能への耐性はねぇのにな」
 待て。俺は、何で、こんな事を知ってる? 前にこの世界に来た事が有ったか?
「君の今回の雇い主も、この惑星ほしから手を引くだろうけど……多分、この惑星ほしの環境がマトモになる前に、この惑星ほしの支配種族は滅びるだろうね。まったく馬鹿な生物も居たもんだ。ああ、そうだ、まだ核爆弾は降って来るよ。多分、このままでは君は死ぬ」
「で、契約は更新出来るのか?」
「ああ、もちろん。君さえ望めば、この体が死んだらすぐに次の仕事だ」
 そりゃあ、良かった……。次は……もっと長く死の恐怖を味わいたいものだ。
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