1 / 1
ヤクザな客層
しおりを挟む
「ここ数回の大会で起きた数々の不祥事によって、歴史有るこの大会を取り止めねばならぬ事態となった事は……誠に遺憾であり……」
その大規模な国際的スポーツ大会の主催団体の会長は、記者会見でそう述べた。
「おい、『遺憾』で謝ってるつもりって、あんたは、自分を日本の天皇だとでも思ってんのか?」
その声は、会見会場ではなく、ネット経由で会見に参加している記者のものだった。
ネット会見となった理由は、ある年の大会で、ようやく終息に向かっていた、あの伝染病の世界的再拡大を招いた為だった。
その次は、国内の少数民族や民主派への弾圧を続けている国で実施され、世界は、ボイコット派の国・地域と、参加国で真っ二つに割れ……。
更にその次では、主催団体の不祥事や不正・腐敗が一気に明みに出た……。
そして、近代オリンピックの約一三〇年の歴史は一端、幕を降す事になった。
「ふざけんじゃねぇぞ。おい、お前らも、ちょっとガツンと言ってやれ」
オリンピックを楽しみにしていた、「彼」とその部下達の間には……ヤクザやマフィアのように擬似的な家族関係が有った。
「いや、でも、親父……時代の流れってやつですよ」
「他にも楽しみは有るでしょ。諦めましょうよ」
「うるさい。とっととやれ」
世界各地で異常気象が続き……戦争が発生し……新しい疫病や……これまで流行していた伝染病の変異株が生まれ……。
人類は……急速に滅亡に向かっていた。
最早、人類は二二世紀を迎える事は絶望的となり……それどころか、早ければ二〇五〇年には、文明の維持すら困難になる、との予想さえ行なわれる事となった。
当然ながら、人類の中に、オリンピックの再開など考える者は1人として居なかった。
自分に捧げられた祭である「オリンピア競技祭」が取り止めになった事で、ゼウスは人類に神罰を与えたが……。
「どうすんですか? 滅んじゃいましたよ。もう、オリンピック開催どころじゃないですよ……」
「何、言ってんだ? 今回が初めてじゃないだろ。また作り直せばいいだろ。残りの面子を集めろ」
「はぁ……」
伝令の神ヘルメスは「新しい人類を生み出すのを手伝え」と云うゼウスの命令を他の神々に伝えるべく出立しようとしたが……。
「あの……兄貴たち……何で、親父の暴走を止めなかったんすか?」
「そう言われてもさぁ……」
「親父が、ああなのは、今に始まった事じゃないだろ……仕方ねえよ」
たまたま、その時、天界に居た疫病の神アポロンと、戦争の神アレスは、やれやれと言った口調と表情で、そう答えた。
その大規模な国際的スポーツ大会の主催団体の会長は、記者会見でそう述べた。
「おい、『遺憾』で謝ってるつもりって、あんたは、自分を日本の天皇だとでも思ってんのか?」
その声は、会見会場ではなく、ネット経由で会見に参加している記者のものだった。
ネット会見となった理由は、ある年の大会で、ようやく終息に向かっていた、あの伝染病の世界的再拡大を招いた為だった。
その次は、国内の少数民族や民主派への弾圧を続けている国で実施され、世界は、ボイコット派の国・地域と、参加国で真っ二つに割れ……。
更にその次では、主催団体の不祥事や不正・腐敗が一気に明みに出た……。
そして、近代オリンピックの約一三〇年の歴史は一端、幕を降す事になった。
「ふざけんじゃねぇぞ。おい、お前らも、ちょっとガツンと言ってやれ」
オリンピックを楽しみにしていた、「彼」とその部下達の間には……ヤクザやマフィアのように擬似的な家族関係が有った。
「いや、でも、親父……時代の流れってやつですよ」
「他にも楽しみは有るでしょ。諦めましょうよ」
「うるさい。とっととやれ」
世界各地で異常気象が続き……戦争が発生し……新しい疫病や……これまで流行していた伝染病の変異株が生まれ……。
人類は……急速に滅亡に向かっていた。
最早、人類は二二世紀を迎える事は絶望的となり……それどころか、早ければ二〇五〇年には、文明の維持すら困難になる、との予想さえ行なわれる事となった。
当然ながら、人類の中に、オリンピックの再開など考える者は1人として居なかった。
自分に捧げられた祭である「オリンピア競技祭」が取り止めになった事で、ゼウスは人類に神罰を与えたが……。
「どうすんですか? 滅んじゃいましたよ。もう、オリンピック開催どころじゃないですよ……」
「何、言ってんだ? 今回が初めてじゃないだろ。また作り直せばいいだろ。残りの面子を集めろ」
「はぁ……」
伝令の神ヘルメスは「新しい人類を生み出すのを手伝え」と云うゼウスの命令を他の神々に伝えるべく出立しようとしたが……。
「あの……兄貴たち……何で、親父の暴走を止めなかったんすか?」
「そう言われてもさぁ……」
「親父が、ああなのは、今に始まった事じゃないだろ……仕方ねえよ」
たまたま、その時、天界に居た疫病の神アポロンと、戦争の神アレスは、やれやれと言った口調と表情で、そう答えた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる