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第一章:おい、「ここ」に元々居た筈の「地元」の「鬼」どもはどこへ消えた?
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「鬼類災害特務隊」の顧問と護衛の地元部隊の隊員達は、すっかり寂れきった地域の廃業したスーパーの駐車場に行事用のテントと机や椅子やノートPCを設置し、ドローンを操作していた。
「どう考えても偶然じゃないですか?」
陰陽師の佐藤は生物学者の矢野にそう言った。
「そうですけどね……。でも、ここで何かが見付かれば……鬼類災害で立ち入り禁止になった区域の調査の為の予算と人員が増えるかも……」
ドローンが撮影しているのは、矢野の知り合いの医大講師・井上弘の故郷だった。
2ヶ月ほど前、飛騨に現われた「鬼」が、死後、井上とそっくり……と云うよりDNAが同一の死体に変貌した。
ところが、その「鬼が変じた死体」には虫歯や骨折などの治療の痕跡が有ったが……虫歯などの治療を行なった歯は、同じDNAを持つ井上とは全く違い、右足には、井上に無い骨折の治療の痕跡が有った。
そして……偶然なのか思わぬ繋りが有るのかは不明だが、その井上の故郷は、鬼類災害が発生し、鬼の撃退に失敗した事により立ち入り禁止区域となっていた。
「あれ? 実家には盆暮れぐらいしか帰ってなかったんで、よく判んないんですけど……俺の記憶と何か違うような……」
同行する事になった「自分そっくりの『鬼の死体』」が出現した人物である井上は、ドローンのカメラから送られてくる映像を見てそう言った。
「そうですよ……あのコンビニ……」
ドローンから送られてくる映像には、この辺りにしては大き目の道路が映っており、その道路沿いに一軒のコンビニが有った。
「やっぱりだ。あの系列のコンビニは、ここが立ち入り禁止区域になった1年半前に他のコンビニチェーンに買収されてます。ここで鬼類災害が起きた頃には、店名や外装は買収先のチェーンのものに変ってる筈です」
佐藤は自分用のノートPCでWikipediaや過去のニュース記事を調べながら、そう言った。
「あと……あのガラスの黒い汚れ……何なんですかね?」
コンビニの外のガラスには……何か黒い液体をブチ撒けた後に水分が蒸発し、その液体の黒い色だけが残ったように見える汚れが付着していた。
「ちょっと待って……コンビニの駐車場に有るゴミみたいなモノと何か関係が有るかも知れないんで、そっちを拡大してみる」
「嫌な予感しかしねぇな……」
密教僧の小林がそう言った。
「覚悟はしてましたが……」
次は宗教学者のソン。
「大きさは……人間の子供……小学校高学年ぐらい……。でも、爪や牙や骨は頑丈そうで、頭蓋骨の形状も人間とはやや違う模様……と」
矢野は音声記録用のコメントを入れる。
「5匹って所ですか……。でも、記録では……」
「ここに現われたのは、身長5m台のが1匹」
「こいつらを……殺したのも……複数個体みたいですね」
「えっ?」
「だって……切り口を良く見て下さい」
腐乱死体と化した「小鬼」達は、手足や胴体、そして首を斬り落されていた。
だが、死体から除く、骨の切り口は……あるものは、鋭い刃物でスパッと鮮かに斬られているように見え、別のモノは厚みと重さの有る切れ味の悪い刃物により、力づくで叩き斬られているように見えた。
「そもそも、こいつらを殺したのも『鬼』なんでしょうか?」
結論の出ないまま、ドローンは廃墟となった町を飛び続けた。
「そろそろ、立ち入り禁止区域の中心部に到着します」
そのコンビニから、立ち入り禁止区域のほぼ真ん中にある公民館まで、1㎞以上にも関わらずドローンは……生きている……少なくとも動いている鬼には遭遇しなかった。
有ったのは、様々な方法で殺された身長1・2m~2・5mの何種類もの鬼達の腐乱死体だった。
外見や体格が似ている鬼の死体は一箇所に固まっている傾向が有ったが……4回に1回ほどの割合で、複数の「種類」の「鬼」の死体が一箇所に集っている光景をカメラが撮らえた。
「やっぱり、道なんかは井上さんが知ってるのと違う?」
「ええ……結構……」
「Google Mapとも一致しません……」
「ねぇ……鬼達って、人間に関心を持ってるのかな?」
「えっ?」
「どう云う理由でかは判んないけど……鬼同士で戦争が起きた……。そして……日本は……もしくは地球が……たまたま、戦場になってしまった。鬼達にとって人間は『たまたま戦場になった場所に住んでた野生動物』みたいなモノで……場合によって……ある時は、戦いの合間の気分転換に狩り……ある時は塹壕を掘ったり陣地や兵器を設置する邪魔になるので『駆除』し……ある時は深く考えないまま戦車で踏み潰し……そして、またある時は、足りなくなった食料の代りに食べる」
矢野は、そう言って溜息を付いた。
「ねぇ、これって……想像のしすぎかな?……ってえっ?」
「何ですか、今、一瞬映ったモノ?」
「矢野さんが『想像のしすぎかな?』って言った途端に、我々が想像もしなかったモノが出て来るって……何の冗談ですか?」
「あの……あれ、我々のじゃないですよね?」
続いて、地元部隊の隊員が空の一点を指差す。
そこには……鬼類災害特務隊のモノではないドローンが浮かんでいた。
「あっ……ちょっと待って、ドローンの撮影した映像の中から……さっき『あれ』が映った瞬間だけを切り出し終り……ええええ? 何これ?」
「立ち入り禁止区域」の中心部には、巨大な鬼の腐乱死体が横たわり……更にその先には、大型トラック一台は余裕で入りそうな……大きいが急拵えらしい建物と、それを取り囲むいくつもの太陽電池と……数年前にニュースになったが実用化までは後数年かかる筈の風車レス型の風力発電機が有った。
そして、静止画に映っていたのは……中生代の恐竜ヴェロキラプトルを模したような姿の金属製のロボットだった。
「どう考えても偶然じゃないですか?」
陰陽師の佐藤は生物学者の矢野にそう言った。
「そうですけどね……。でも、ここで何かが見付かれば……鬼類災害で立ち入り禁止になった区域の調査の為の予算と人員が増えるかも……」
ドローンが撮影しているのは、矢野の知り合いの医大講師・井上弘の故郷だった。
2ヶ月ほど前、飛騨に現われた「鬼」が、死後、井上とそっくり……と云うよりDNAが同一の死体に変貌した。
ところが、その「鬼が変じた死体」には虫歯や骨折などの治療の痕跡が有ったが……虫歯などの治療を行なった歯は、同じDNAを持つ井上とは全く違い、右足には、井上に無い骨折の治療の痕跡が有った。
そして……偶然なのか思わぬ繋りが有るのかは不明だが、その井上の故郷は、鬼類災害が発生し、鬼の撃退に失敗した事により立ち入り禁止区域となっていた。
「あれ? 実家には盆暮れぐらいしか帰ってなかったんで、よく判んないんですけど……俺の記憶と何か違うような……」
同行する事になった「自分そっくりの『鬼の死体』」が出現した人物である井上は、ドローンのカメラから送られてくる映像を見てそう言った。
「そうですよ……あのコンビニ……」
ドローンから送られてくる映像には、この辺りにしては大き目の道路が映っており、その道路沿いに一軒のコンビニが有った。
「やっぱりだ。あの系列のコンビニは、ここが立ち入り禁止区域になった1年半前に他のコンビニチェーンに買収されてます。ここで鬼類災害が起きた頃には、店名や外装は買収先のチェーンのものに変ってる筈です」
佐藤は自分用のノートPCでWikipediaや過去のニュース記事を調べながら、そう言った。
「あと……あのガラスの黒い汚れ……何なんですかね?」
コンビニの外のガラスには……何か黒い液体をブチ撒けた後に水分が蒸発し、その液体の黒い色だけが残ったように見える汚れが付着していた。
「ちょっと待って……コンビニの駐車場に有るゴミみたいなモノと何か関係が有るかも知れないんで、そっちを拡大してみる」
「嫌な予感しかしねぇな……」
密教僧の小林がそう言った。
「覚悟はしてましたが……」
次は宗教学者のソン。
「大きさは……人間の子供……小学校高学年ぐらい……。でも、爪や牙や骨は頑丈そうで、頭蓋骨の形状も人間とはやや違う模様……と」
矢野は音声記録用のコメントを入れる。
「5匹って所ですか……。でも、記録では……」
「ここに現われたのは、身長5m台のが1匹」
「こいつらを……殺したのも……複数個体みたいですね」
「えっ?」
「だって……切り口を良く見て下さい」
腐乱死体と化した「小鬼」達は、手足や胴体、そして首を斬り落されていた。
だが、死体から除く、骨の切り口は……あるものは、鋭い刃物でスパッと鮮かに斬られているように見え、別のモノは厚みと重さの有る切れ味の悪い刃物により、力づくで叩き斬られているように見えた。
「そもそも、こいつらを殺したのも『鬼』なんでしょうか?」
結論の出ないまま、ドローンは廃墟となった町を飛び続けた。
「そろそろ、立ち入り禁止区域の中心部に到着します」
そのコンビニから、立ち入り禁止区域のほぼ真ん中にある公民館まで、1㎞以上にも関わらずドローンは……生きている……少なくとも動いている鬼には遭遇しなかった。
有ったのは、様々な方法で殺された身長1・2m~2・5mの何種類もの鬼達の腐乱死体だった。
外見や体格が似ている鬼の死体は一箇所に固まっている傾向が有ったが……4回に1回ほどの割合で、複数の「種類」の「鬼」の死体が一箇所に集っている光景をカメラが撮らえた。
「やっぱり、道なんかは井上さんが知ってるのと違う?」
「ええ……結構……」
「Google Mapとも一致しません……」
「ねぇ……鬼達って、人間に関心を持ってるのかな?」
「えっ?」
「どう云う理由でかは判んないけど……鬼同士で戦争が起きた……。そして……日本は……もしくは地球が……たまたま、戦場になってしまった。鬼達にとって人間は『たまたま戦場になった場所に住んでた野生動物』みたいなモノで……場合によって……ある時は、戦いの合間の気分転換に狩り……ある時は塹壕を掘ったり陣地や兵器を設置する邪魔になるので『駆除』し……ある時は深く考えないまま戦車で踏み潰し……そして、またある時は、足りなくなった食料の代りに食べる」
矢野は、そう言って溜息を付いた。
「ねぇ、これって……想像のしすぎかな?……ってえっ?」
「何ですか、今、一瞬映ったモノ?」
「矢野さんが『想像のしすぎかな?』って言った途端に、我々が想像もしなかったモノが出て来るって……何の冗談ですか?」
「あの……あれ、我々のじゃないですよね?」
続いて、地元部隊の隊員が空の一点を指差す。
そこには……鬼類災害特務隊のモノではないドローンが浮かんでいた。
「あっ……ちょっと待って、ドローンの撮影した映像の中から……さっき『あれ』が映った瞬間だけを切り出し終り……ええええ? 何これ?」
「立ち入り禁止区域」の中心部には、巨大な鬼の腐乱死体が横たわり……更にその先には、大型トラック一台は余裕で入りそうな……大きいが急拵えらしい建物と、それを取り囲むいくつもの太陽電池と……数年前にニュースになったが実用化までは後数年かかる筈の風車レス型の風力発電機が有った。
そして、静止画に映っていたのは……中生代の恐竜ヴェロキラプトルを模したような姿の金属製のロボットだった。
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