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第一章:屍病汚染

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 あたしとアカリちゃんは強化装甲服「水城みずき」の格納室に入った。
 この「水城みずき」には、通常型・パワー型・対NBC型などのタイプが有るが、あたし達「異能レスキュー隊」が使用するのは人命救助仕様だ。
 高校の頃、あたし達が「魔法少女」をやめた日に初めて使った時には、着装者以外に作業員が2名必要で、着装完了まに一〇分以上かかったけど、今では、着装補助装置が開発され、5分以内で済む。
 装甲は「不均一非結晶合金」と言われる特殊素材で出来ていて……理屈はイマイチ理解出来てないけど「合金と複合素材の中間」だそうだ。
 基本は、銀色に近いけど、構造色とか言う虹のような光沢が浮かぶ外見だけど、「水城みずき」の装甲に使われているものは腐食防止用の半透明な塗料が塗られている。
 その塗料の色は「人命救助」を象徴するオレンジ色。救助対象が視認し易い色だ。
 体の各部には緊急時にはサイレンとしても使用出来るライトが取り付けられている。
 両胸と鳩尾みぞおちに有る大き目の円形のライトには、異能レスキュー隊と所属チームのマークと個人識別マークが表示される。
 人工筋肉と筋電位や予備動作を検知するセンサが仕込まれたインナースーツを付け、着装補助装置に入る。
 装甲が次々と装着される。
 最後にヘルメットを装着。ヘルメット内の網膜投影式モニタがONになる。
「制御AI起動。着装者『カヴン∴オブ∴カメリア』所属、遠藤美桜みお
『起動承認。承認者『カヴン∴オブ∴カメリア』所属、藤原葵』
 葵ちゃんの声と共に、起動ログが表示され、最後にヘルメット前面の「目」に相当する位置にある2つの小型カメラから送られる画像が映し出される。
『2人とも、手順通りに軽く動いてみて』
 葵ちゃんからの無線通話による指示に従い、あたしとアカリちゃんは、昔、少しだけやった事が有る武道の型の動きをする。
『大丈夫、「先読み」の適合率は2人とも九五%以上。問題なし』
 「水城みずき」の制御AIには、着装者の癖を学習し、次の動きを予想出来るようになる機能が付いているそうで、言われてみれば、初めて使った時よりも、動きは自然で滑らかなものになっている。
 準備が終ったあたし達の前に、ほぼ無音で2台の電動三輪バイクトライクがやって来た。
「現場まで最短時間で着けるルートの指示をお願い」
了解Affirm
 あたし達は三輪バイクトライクに乗るとサイレンを鳴らしながら走り出した。
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