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第一章:屍病汚染

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「現時点で判ってる事を、全部、説明お願い」
 私は、現場に居た「正義の味方」にそう訊いた。
 現場に居たのは、戦闘服の上から「揚羽蝶の羽根」をイメージしたコートを装った「赤揚羽」と「青揚羽」。
 2人共「魔法使い」系の女性ヒーローだが「赤」が「魔法」と武術を組合せた接近戦系で、「青」が中距離攻撃と索敵・解呪などの支援系の術を得意としている。
「投入したドローンは5台。今の所、警察署内の約四〇%を調査完了。生存者は未発見です。ドローンが発見した人達は、全員死んでます」
「生者の気配がほぼ無い代りに、『呪い』系の気配も同様。剣呑ヤバい『異界』へのポータルが開いてる気配も有りません」
「ね、今気付いたけど、『迂闊に解呪した時に被害が出る』タイプのトラップ系の『魔法』の可能性は?」
 「赤」の方が、そう指摘したけど……。
「その場合は、『被害』は非『魔法』性のモノがほとんど。その点を確認するのは後。あなたの推測通りでも、今やるべき事は大して変らない」
「たしかに……」
 つまり、その手のトラップ系の『魔法』を、警察署内で誰かが、うっかり解呪した結果がコレだとしても、あたし達がどんな後始末をすればいいかには、大した関係は無い、って事だ。
 要は爆弾テロの場合なら、どんなタイプの起爆装置が使われたかって情報は、犯人が連続して同じような事件を起こそうとしてて、それを防ぎたい場合には重要な情報だろうけど、爆弾が爆発した直後の人命救助には有っても無くても、あんまり意味がないようなモノだ。
『バイオ・テロだった場合、病原体は飛沫感染の可能性大。なお、ここで言う「飛沫」には血液の飛沫も含まれます』
 続いて、無線通信で、地元の「正義の味方」の1人「ピンガーラ」が説明。
門司もじの「工房」から、病原体を持ち帰る事が出来そうなドローンを運搬中です』
 更に分署に居る葵ちゃんより連絡が入る。
『同じく門司もじの「工房」から「水城みずき」の対NBCオプション装備を輸送中。え~っと、ウチと第2チームに、それぞれ、人数分プラス2個。あと、唐津の「渦文の護り手ウォーデン・オブ・ワールプール」から除染装備を借りて輸送中』
 「渦文の護り手ウォーデン・オブ・ワールプール」は異能レスキュー隊の唐津チームだが、異能力災害以外にも、玄海原発の解体現場で事故が起きた際に出動する可能性が有る為、対放射能・放射線装備が普段から充実している。
「唐津チームだったら……放射性物質用じゃない? 細菌やウイルスでもOKなの?」
『放射性物質専用じゃなくて、汎用タイプのを借りてる。ちょっと型は古いけど、十分使える筈』
判ったConfirm。じゃ、アカリちゃん、お願い」
了解Affirm
 アカリちゃんが答えると同時に……仏教の「護法童子」のような姿の一六体の「使い魔」が姿を現わし、警察署への突入した。
『あと……バイオ・テロだったら、こっちの行動には制約が出ると思う』
 ピンガーラの声は、無線通信越しでも……暗かった。
「エース級のメンバーが出張中以外にも何か有るの?」
『バイオ・テロ……それも血液含めた飛沫感染って事は……わざと病原体を自分に感染させて警察署を壊滅させた「何者か」が居た場合、そいつを鎮圧するのに手間がかかりそう』
「あ……そうか……」
 そんなのが居た場合……「殺す」という一番安易で楽そうな方法は、迂闊に使えない。
 血が飛び散るような殺し方はNGだ。
『焼き殺す系の能力を持ってる応援を呼んでるけど……海外からなんで、到着に時間がかかるし……最悪、焼き殺すなら類焼の可能性が有る所に逃げ込まれたら詰み。あと……獣化能力や妖怪系の変身能力者は……変身後は防毒マスクなんかが使えないんで、人間態のまま行動してもらう事になる』
 つまり、地元の「正義の味方」でも……獣化能力者系の2人は戦闘能力を十分に発揮出来ない状態で行動するしか無いらしい。
『あと……もう1つ……えっと……ここに居る人達を信用してない訳じゃないけど……』
「何? そもそも『ここ』って、どこの事? 現場? あなたが居るその場所の事?」
『えっと……戦闘要員だけじゃなくて、後方支援要員も7年以上の実務経験が有る人達は出張中。医療チームにも出張中の人達が結構……』
 マズい……。
 それが一番、地味に効いてくるかも知れない。
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