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第二章:Fair Game

シルバー・ローニン(9)

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「だ・か・ら、姉と弟であると同時に、フィアンセなの」
「何がどうなってる?」
 TCAから来た……そして、TCAの重要人物らしい少女は、あまりにもとんでもない事を言い出した。
「決ってるでしょ。より強い『精神操作能力』を持つ子供を産む為よ」
「でも……私達の後方支援要員の仮説が正しければ……単に精神操作能力が強いからと言ってTCAの『大阪派』が望んでいる人間になるとは限らないだろう?」
「えっ?」
「だから……君の弟が、強力な精神操作能力を持つと同時に、君以外と意志疎通が出来ない理由が『あまりにも強い精神操作能力を持つ子供を、周囲に精神操作能力への耐性が無い人間しか居ない状態で育ててしまったから』だとしたら、どうなる?」
「えっ……えっと……」
「例えば、柔道の選手には筋力は必要だろう。しかし、筋力だけで、優秀な柔道選手になれる訳じゃない。それと同じ事だ」
「な……なにが言いたいの……?」
「精神操作能力者を使って一般市民を支配する社会体制には倫理的問題が有るが……まずは、その点は無視しよう。だが、そんな社会を統治する精神操作能力者は、強力な精神操作能力は必要不可欠だが……それだけでは十分じゃないのは自明の理だ」
「た……例えば……」
「1つの社会を統治する人間には、必要なモノが山程有る。一般常識・コミュニケーション能力・論理的思考能力その他色々と」
 あ……待て……言い過ぎたか……?
 マズい……。
「あ……あなた……まさか……ま~君と私の人生は全部無意味だって言いたいわけっ⁉」
「おねがい、喧嘩は事態がマシになってからにして……」
 助手席の黒い虎男……コードネーム「ハヌマン・エボニー」がそう言った。
『人気の無い所まで、追手の車を誘い込め。そうすれば事態はマシになる』
 その時、後方支援チームからの連絡。
「何か手が有るのか?」
 運転席の銀色の狼男……コードネーム「ハヌマン・シルバー」が後方支援チームに質問。
『追手の車は半自動操縦だ。不測の事態が起きた時のみ、遠隔操作をしてる奴の割り込みが入る。つまり、自動操縦で対応出来ない場合には……車と遠隔操作をしてる「誰か」との間の通信量が増える』
「え……?」
『ビンガーラ達の車が、その「不測の事態」を起こしてくれた。そして、複数の容疑の中から、お前たちを追っている車を遠隔操作している車を特定出来た。近くの高速のサービス・エリアに停車しているトラックだ』
「お……おい……あいつらは……」
『今の所、無事だ』
「後で何やったか、あいつにゆっくり訊くか……」
「そうするよ……」
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