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第三章:Do the right thing

シルバー・ローニン(1)

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君は世界を護れ。
僕は今日を護る。

パティ・ジェンキンス監督「ワンダーウーマン」より

 男の方の治療をやってるバンには護衛でハヌマン・シルバーとハヌマン・エボニーが付いて行った。
 2人の子供の保護者の男性も同じくバンに乗っている。
 そして……。
「『精神操作能力者』を確実に殺せる手って……今まで使われた以外に何が有ると思う?」
 そう訊いてきたのはビンガーラだった。
「基本的にあたしら『魔法使い』系には……『精神操作』は効かないです。超化物チート級の精神操作能力者 対 超ヘボな『魔法使い』って場合でも無ければ」
 あさひはそう答える。
「あとは……『神の力』を持つ者にも効かないな……」
 私の故郷で上霊ルシファーと呼ばれていた超越者より力を授かった人間が稀に存在している。それが「『神の力』を持つ者」だ。その者達は、魔法に似て非なる……そして通常の魔法を遥かに超えた強力な力を行使出来るが……。
「それは……考えても無駄だ。気紛れで町1つ一瞬で滅ぼせる相手が出て来たら……どうしようもない。万が一、「神の力」を持つ者が出て来たら、まずは、どうすれば逃げ切れるかを考えて……次は、こっちに居る「神の力」を持つ者か『護国軍鬼』におでまし願うしかない」
「あとは……古代種族妖怪系にも、結構、精神操作が効かないのが居た筈……」
「あ……実際、あたしにも効かない」
 そう答えたビンガーラは「鬼」の血を引いているらしい。ただし、日本における「鬼」と云う概念は、複数のたまたま外見・能力が似ている「古代種族」が混同されたモノで……日本における「鬼」系の二大勢力である西日本に多い「電撃を操る青鬼」と東日本に多い「冷気を操る赤鬼」を除いては「1人1系統」に近い状態……らしい。
「えっと……あの……私達って……その……」
 私達の話を横で聞いていたTCAから来た少女の顔は……心なしか青冷めていた。
「残念なお報せだ……。君が今まで思っていたよりも……『精神操作能力者』を殺せる方法はかなり多岐に渡る」
「発想を変えよう。『精神操作能力者を殺せる奴を見分ける』じゃなくて『単なる人間を護衛する』って考えで行動した方が失敗率を下げられそうだ。敵が、たった1人か2人を殺す為に、人通りが多い所に爆弾撃ち込むような奴でない事を願……後方支援チーム、裏に居る奴は、まだ、特定出来てないの?」
『残念なお報せだ……。どうやら、TCAの東京派内の複数の派閥が動いてるらしい。圧力をかけたり、交渉をするにしても……どの派閥がリーダー格か……調べるには時間がかかる』
「どうしたもんかね……」
 どうやら、TCAから来た2人の子供を狙っている連中が……自分達の側に犠牲が一定数出れば諦めるような相手か、それとも自分達の側に犠牲が出れば出るほどヤケクソな手を使ってくるような相手かも、まだ判っていないようだ。
 つまる所、思っていたよりも、八方塞がりの状況らしい。
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