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第三章:Do the right thing

シルバー・ローニン(3)

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 何とか、奴らが1発も銃を撃たない内に鎮圧する事が出来た。
 そして、すぐにやって来たレスキュー隊に後の処理を委託する事になった。
「1つ疑問なんだが……あんな絵に描いたような『多重人格』って……有り得るのか?」
「多重人格?」
 しかし、TCAから来た少女は、事態を把握していないらしい。
「1人は『悪霊憑き』だ。だから、あたしが対処した」
 あさひが、そう説明した。
「残りのは……多分だけど、普通の解離性障害じゃない……。脳手術か薬物か心理学的な方法かは判んないけど……人工的に、精神医学の知識が無い人達がイメージする『多重人格』そのものの状態にされたんだろ」
 続いてビンガーラ。
「ちょっと待って……多重人格だと……何で、私の能力が効かない訳?」
「効いてる」
「効いてなかったでしょ」
「一瞬だけ効いてた。だが、すぐに精神操作された人格が引っ込んで別の人格が表に出て来た」
「そ……そんな……」
「レスキュー隊がやってる奴らの持ち物検査……良く見ろ」
 その時、あさひが、そう言い出した。
 レスキュー隊は、気絶した3人の持ち物を路面に広げたブルーシートの上に並べ、写真を撮っていた。
「どうかしたか?」
携帯電話ブンコPhoneが旧式だ……状況証拠だけど、あいつらもTCAの奴だ」
「どう云う事だ?」
「TCAは、多くの国や地域から『テロリストが支配している地域』と見做されてる。なので、最新技術を使った製品モノの『輸出』が制限されてる。そして、あの携帯電話ブンコPhone、全部、5~6年前の型式のヤツだ」
「ねえ……私……ずっと、貴方達に護ってもらえる訳じゃないのよね?」
 TCAから来た少女は、不安気にそう訊いてきた。
「ああ……残念ながら……」
「えっと……その……さっきの話からすると……貴方、同性愛者?」
「はぁ?」
「だ……だから……その……私の側室になって、ずっと、私を護ってくれる……とか……」
 ビンガーラは顔に手を当てて下を向き……あさひは空を見ながら、困ったような表情。
「ふざけるな」
 私は、わざと冷たい口調で、そう言うしか無かった。
「でも……その……ラノベだったら……」
「ここは現実だ。そして、万が一、君が私に特別な感情を抱いているなら……それは単なる吊り橋効果だ」
「でも……」
「ああ、判った。お互いに、もう少し大きくなってから、ゆっくり話そう。それまで、何としても君を生き延びさせる。それで良いか?」
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