杜撰なる全体主義国家

蓮實長治

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杜撰なる全体主義国家

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「帝都新聞の丸太川です。あのぉ……総理、例の伝染病の流行が終息していない状態で、本当にオリンピックを開催されるのですか?」
「当然です。今更、中止を決めても、動き出しているモノを止めるのは無理です」
「しかし、海外から変異株に感染した選手が来日したり、逆に、海外の選手が日本で感染した場合は……」
「問題行動を起した選手は国外追放します」

「総理。無理です」
「何でだ?」
「理由は2つです。民主主義国家である我が国で、官憲が何の容疑もない外国の選手を常時監視するなど、いくつの法律に引っ掛かるか判ったモノじゃありません」
「オリンピック後の国会選挙より前なら、都合の悪い法律などいくらでも……」
「あの……もう1つの理由は、より重大です」
「何だ?」
「人手が足りません」

「おい……何だ、これは……?」
「はい、スマホを保有している全国民にインストールを義務付けた『外国人選手監視アプリ』での通報第一号です。オリンピックに向けた調整の為に、一早く来日した選手がマスクもせずに屋外に居たとの通報が……」
「待て、人っ子一人居ない場所でランニングしてるようにしか見えないぞ」
「ですが追放しないと示しが付きません。御決断を……」

「あの……アメリカの人権団体からクレームが」
「何だ?」
「問題行動で国外追放になったオリンピック出場者に明らかな人種的な偏りが有るが、どう云う事か? と」
「い……意味が判らんぞ?」
「ええっと……『外国人選手の問題行動』と言われた場合に、反射的に白人・黒人のみを思い浮かべてしまう人が多いので、アジア系の選手についての通報が少ないからかと……」
「なら、アジア人も監視対象にするように国民に呼び掛けろ」

「すいません……手違いで日本人選手が追放対象になりました」
「おい、どう云う事だ?」
「あの……たまたま路上でコーチと話している時に、マスクをずらしたのですが……訛りが酷くて……それを耳の遠い高齢者が聞いて、外国人と誤解したようです」
「ふざけるな」
「あと、選手団全員が国外追放になったK国とT国ですが……今になって、通報の写真が合成で作られた偽物と判明しました」
「何がどうなってんだ?」
「日本の状況に恐れをなして、早々に逃亡する為に、自作自演の通報をやった模様です」

『では、選手入場を開始します。終りました。では、明日からの世界初の無観客・無選手の画期的なオリンピックをお楽しみ下さい』
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