13 / 69
第一章:凡夫賊子/Ordinary People
(12)
しおりを挟む
「なあ、下手な『悪』より『正義の暴走』の方が恐いって言うよなぁ……」
俺は、猿渡のおっちゃんと酒を飲みながら、そう言った。
「どこの自称『ネット論客』が言ってる非現実的かつ御花畑なタワ言ですか、それ?」
しょ~もないツッコミは無視するに限る。
「ねぇ、警察でも『正義の暴走』をやらかした奴こそ取締ってもらえないの?」
「誰の事を言ってんですか?」
「自称『御当地ヒーロー』とかさ……」
「無理ですよ。もう、あいつらが居ないと、治安が保てない……。警察が昔からやってきたやり方は、もう古臭くて使えない代物なり下った……そんな時代になっちまったんですよ」
「そんなモノなの?」
「警察ほど体育会系の組織は無いけど……体育会のメンタリティってのは『精神操作』系の異能力への抵抗力訓練と相性がクソ悪い。だから……この御時世、警察のやり方は行き詰まる。警察が昔の警察じゃない『何か』に変らない限りはね。……もう、二〇年以上前から判ってた事ですよ。で……とっとと用を済ませていいですか?」
「あとさ……俺の親父、どうしてる?」
「あのねぇ……親子でしょ。直接、聞けば……」
「いや、色々と有ったからさぁ……」
「薄々は知ってますよ。実の娘とその亭主を監禁してるのが、実の息子だって事は……。ただ、周囲には、優斗さんは病気で寝込んでる事にしてますが……。まだ、県警には届けてません」
「ああ、そう。一応、実の妹とその亭主なんで……飯は、ちゃんと食わせてる」
「どうする気なんですか? 解放したって、家庭崩壊は確実ですよ」
「そう言うけどさ。あいつらがやろうしたのも……『正義の暴走』だよなぁ……。下手な悪より……タチが悪い真似をやらかそうとしてたのは、あいつらだよ」
「あのねぇ、実の兄が人1人殺したかもと知ったら警察に通報するのが、普通の……」
「いや、普通じゃねえよ。『正義の暴走』だよ。表沙汰になったら、親父の政治生命は終る。そうなったら、迷惑を被るのは親父だけじゃない」
「あのねぇ……冗談にしても……その……」
えっ? 冗談って何だ? 俺の言ってる事ってド正論だろ?
「とりあえず、頼んでた情報は?」
「はい」
そう言って、猿渡のおっちゃんは……封筒を渡した。
「今時、紙の資料?」
「昔からの慣習ですよ」
だが、封筒の中に入っていた資料は……。
「何……この、県警の公安って……?」
「富士山が御機嫌斜めになって、関東が壊滅してから、公安も仕事が無いんですよ。文字通り、世の中が引っくり返ったんだから……。『反政府団体』や『国益を損う輩』を監視したくても、もう、政府も国も消えちまったせいでね。だから、各県警の公安は、『関東難民』を監視して、仕事してるフリをして、給料をもらってんですよ」
俺は、猿渡のおっちゃんと酒を飲みながら、そう言った。
「どこの自称『ネット論客』が言ってる非現実的かつ御花畑なタワ言ですか、それ?」
しょ~もないツッコミは無視するに限る。
「ねぇ、警察でも『正義の暴走』をやらかした奴こそ取締ってもらえないの?」
「誰の事を言ってんですか?」
「自称『御当地ヒーロー』とかさ……」
「無理ですよ。もう、あいつらが居ないと、治安が保てない……。警察が昔からやってきたやり方は、もう古臭くて使えない代物なり下った……そんな時代になっちまったんですよ」
「そんなモノなの?」
「警察ほど体育会系の組織は無いけど……体育会のメンタリティってのは『精神操作』系の異能力への抵抗力訓練と相性がクソ悪い。だから……この御時世、警察のやり方は行き詰まる。警察が昔の警察じゃない『何か』に変らない限りはね。……もう、二〇年以上前から判ってた事ですよ。で……とっとと用を済ませていいですか?」
「あとさ……俺の親父、どうしてる?」
「あのねぇ……親子でしょ。直接、聞けば……」
「いや、色々と有ったからさぁ……」
「薄々は知ってますよ。実の娘とその亭主を監禁してるのが、実の息子だって事は……。ただ、周囲には、優斗さんは病気で寝込んでる事にしてますが……。まだ、県警には届けてません」
「ああ、そう。一応、実の妹とその亭主なんで……飯は、ちゃんと食わせてる」
「どうする気なんですか? 解放したって、家庭崩壊は確実ですよ」
「そう言うけどさ。あいつらがやろうしたのも……『正義の暴走』だよなぁ……。下手な悪より……タチが悪い真似をやらかそうとしてたのは、あいつらだよ」
「あのねぇ、実の兄が人1人殺したかもと知ったら警察に通報するのが、普通の……」
「いや、普通じゃねえよ。『正義の暴走』だよ。表沙汰になったら、親父の政治生命は終る。そうなったら、迷惑を被るのは親父だけじゃない」
「あのねぇ……冗談にしても……その……」
えっ? 冗談って何だ? 俺の言ってる事ってド正論だろ?
「とりあえず、頼んでた情報は?」
「はい」
そう言って、猿渡のおっちゃんは……封筒を渡した。
「今時、紙の資料?」
「昔からの慣習ですよ」
だが、封筒の中に入っていた資料は……。
「何……この、県警の公安って……?」
「富士山が御機嫌斜めになって、関東が壊滅してから、公安も仕事が無いんですよ。文字通り、世の中が引っくり返ったんだから……。『反政府団体』や『国益を損う輩』を監視したくても、もう、政府も国も消えちまったせいでね。だから、各県警の公安は、『関東難民』を監視して、仕事してるフリをして、給料をもらってんですよ」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる