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第二章:邪悪之曙光/Dawn of Injustice
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何とか俺は自分の車に辿り着き……車載コンピュータを起動……。
ああ、助かった。
指紋認証で車載コンピューターを起動するタイプの最新モデルのEVだったんで、昔の映画やドラマみたいにパニクって車のキーどこ行ったなんて事は……事は……。
ああああ……。
脱げない……。
脱げない……。
指紋認証しようにも手袋が脱げないないない~ッ‼
たたたた助け……ん?
何で、警官が追って来な……ああっ⁉
そいつは……今の俺に似た姿をしていた。
悔しい事に、俺と違って腹は出てないし……体型もスマートだ。
ライダースーツを改造したらしい服に……バイザーがミラーグラスになってるフルヘルメット。
だが……。
今の俺と逆な点も有った。
身に付けてるモノは全て……黒一色だった。
新手の「正義の暴徒」か?
しかし、黒一色のコスとは、中二病な奴も居たもん……あ……。
そいつの足下には何人もの警官が倒れていた。
おおおおお俺を警官から助けようとした訳じゃなさそそそそそ……。
落ち着け。
落ち着け。
落ち着け。
俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。
俺は落ち着いてるぞ。
俺は大人の男だ。
女みたいに感情的になったり怖がったりしてなんかいね~ぞ。
俺は理性的な大人の男だ。
俺は合理的な大人の男だ。
俺は現実的な大人の男だ。
えっと……。
そうだ、車で逃げ逃げ逃げ……。
ああ、やっと走り出せる……。
行けええ……。
うわあああっ……。
目の前にガキが飛び出して来て、車のAIが運転乗っ取って、明後日の方向を向いて急停止。
「おい、このボロ車っ‼ 緊急時の運転乗っ取りの機能をOFFにしろ、OFFっ‼」
『ご命令通りの事を行なった場合、地域によっては法令違反となる可能性が有りますがよろしいですか?』
「いいに決ってるだろ、やれっ‼ 後の確認も全部省略だっ‼」
『了解しました。車載AIによる緊急時の運転補助機能を停止しました。本機能を再度ONにする場合は……』
うるせえぞ、ボケAI。
ああ、良かった。
これで、この車で安心して人を轢き殺せ……いや、違う。
ともかく、俺は逃げて逃げて逃げ続け……。
と思ったら、交差点で横から衝撃。
韓国のアクション映画かっ⁉
横から車が突っ込んで来……えっ? パトカー?
いや、でも、幸いにもパトカーが突っ込んで来たのは……あ……あれ? どっちが右で、どっちが左? 左ってどっちで、右ってどっち?
ともかく、パトカーが激突したのは……助手席側だ……。
俺はドアを開けて車の外に飛び出し……。
だが、俺の頭上を黒い何かが飛び越え……。
「よう……2代目……。久し振りだな」
えっ?
「誠実に接していれば、いつか判ってくれると思っていた。まったく……とんだ勘違いだったよ。すまないな……全部、俺のミスだ。失敗を繰り返さない為に……『人道的』なんて甘っちょろい感傷は、あの日、生きて帰れた時に川底に捨てて来たよ」
……な……何の……事だ?
「ん? 何だ、何も気付いてないのか? まったく……先代のクリムゾン・サンシャインも救い難い阿呆だったが……お前も同程度には阿呆なようだな」
な……なんだ……。
この声……聞き覚えが有る。
でも……どこでだ?
そ……それに……何で……俺が2代目クリムゾン・サンシャインだと……あ、クリムゾン・サンシャインの格好をしてるからか。
「『戦士』が白いコスチュームとはフザケてるにも程が有る。白は愚か者の色……そして臆病者の色だ」
「な……なんだと……?」
俺は……目の前に居る黒いコスチュームの男に言い返そうとした。
俺は、どれだけ馬鹿にされても構わない。
馬鹿にされるのは慣れてる。
でも……これは……「正義の味方」を名乗る暴徒どもの「正義の暴走」から何度も俺達を護ってくれた、初代クリムゾン・サンシャインから受け継いだモノだ。
俺を馬鹿にする事は許してやるが、あの人を馬鹿にする事は許さない。
理性的で合理的で現実な大人の男らしく理路整然とそう論破してやるつもりだった。
だが……。
「おれおれおれおれおおおあれれっ?」
おい、何で、巧くしゃべれない?
ああああっ……。
さささささっき……どどどどどどどこか頭でも打っておかしくおかしくおかしく……あああ……俺の人生、この先真っ暗なのか?
うっひゃ~あああっ‼
SNSかMaeveだったら、泣き顔マークを大量に入力してただろう。
「良く聞け……白いコスチュームとは、自分の血を流す覚悟も、敵の返り血を浴びる覚悟もない事を意味している。やはり、お前は、臆病者の愚か者のようだな……」
誰だ……貴様は……?
俺は……そう聞こうとした。
「だだだだだだれだれだれだれ?」
でも、俺の口から出た言葉は……。
だめだ……ちゃんとしゃべれない。
そ……それに、あれ? あれ? あれ?
おい、俺、いつの間に腰を抜かしてたんだ?
「『お前は誰だ?』そう言いたいのか?」
俺は首を縦に振る。
「何故、『正義の味方』と呼ばれている者達が……二〇世紀の子供番組のような……いかにもな『正義の味方』っぽい名乗りをしないか……良く判ったよ……。この名乗りを自分で練習していて……こっ恥かしくて仕方無かった」
えっ? 何を言っている?
「知ってるか、2代目? 太陽が紅く染まるのは……1日の内に朝日と夕日の2回だけだ。俺は……貴様と云う夕日が沈んだ後に来る……永遠の夜だ。そう……エーリッヒ・ナハトとでも呼んでくれ」
ふ……普段なら……あまりに中二病過ぎる台詞に笑い出してただろうが……でも……でも……でも……今は今は今は今は今はっ。
あわわわわわわっ‼
「束の間の神の恩寵が有ろとも、人間の怒りは永遠に消えぬ。涙の夜は明ける事なく……二度と喜びの朝が来る事は無い」
ああ、助かった。
指紋認証で車載コンピューターを起動するタイプの最新モデルのEVだったんで、昔の映画やドラマみたいにパニクって車のキーどこ行ったなんて事は……事は……。
ああああ……。
脱げない……。
脱げない……。
指紋認証しようにも手袋が脱げないないない~ッ‼
たたたた助け……ん?
何で、警官が追って来な……ああっ⁉
そいつは……今の俺に似た姿をしていた。
悔しい事に、俺と違って腹は出てないし……体型もスマートだ。
ライダースーツを改造したらしい服に……バイザーがミラーグラスになってるフルヘルメット。
だが……。
今の俺と逆な点も有った。
身に付けてるモノは全て……黒一色だった。
新手の「正義の暴徒」か?
しかし、黒一色のコスとは、中二病な奴も居たもん……あ……。
そいつの足下には何人もの警官が倒れていた。
おおおおお俺を警官から助けようとした訳じゃなさそそそそそ……。
落ち着け。
落ち着け。
落ち着け。
俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。俺、落ち着け。
俺は落ち着いてるぞ。
俺は大人の男だ。
女みたいに感情的になったり怖がったりしてなんかいね~ぞ。
俺は理性的な大人の男だ。
俺は合理的な大人の男だ。
俺は現実的な大人の男だ。
えっと……。
そうだ、車で逃げ逃げ逃げ……。
ああ、やっと走り出せる……。
行けええ……。
うわあああっ……。
目の前にガキが飛び出して来て、車のAIが運転乗っ取って、明後日の方向を向いて急停止。
「おい、このボロ車っ‼ 緊急時の運転乗っ取りの機能をOFFにしろ、OFFっ‼」
『ご命令通りの事を行なった場合、地域によっては法令違反となる可能性が有りますがよろしいですか?』
「いいに決ってるだろ、やれっ‼ 後の確認も全部省略だっ‼」
『了解しました。車載AIによる緊急時の運転補助機能を停止しました。本機能を再度ONにする場合は……』
うるせえぞ、ボケAI。
ああ、良かった。
これで、この車で安心して人を轢き殺せ……いや、違う。
ともかく、俺は逃げて逃げて逃げ続け……。
と思ったら、交差点で横から衝撃。
韓国のアクション映画かっ⁉
横から車が突っ込んで来……えっ? パトカー?
いや、でも、幸いにもパトカーが突っ込んで来たのは……あ……あれ? どっちが右で、どっちが左? 左ってどっちで、右ってどっち?
ともかく、パトカーが激突したのは……助手席側だ……。
俺はドアを開けて車の外に飛び出し……。
だが、俺の頭上を黒い何かが飛び越え……。
「よう……2代目……。久し振りだな」
えっ?
「誠実に接していれば、いつか判ってくれると思っていた。まったく……とんだ勘違いだったよ。すまないな……全部、俺のミスだ。失敗を繰り返さない為に……『人道的』なんて甘っちょろい感傷は、あの日、生きて帰れた時に川底に捨てて来たよ」
……な……何の……事だ?
「ん? 何だ、何も気付いてないのか? まったく……先代のクリムゾン・サンシャインも救い難い阿呆だったが……お前も同程度には阿呆なようだな」
な……なんだ……。
この声……聞き覚えが有る。
でも……どこでだ?
そ……それに……何で……俺が2代目クリムゾン・サンシャインだと……あ、クリムゾン・サンシャインの格好をしてるからか。
「『戦士』が白いコスチュームとはフザケてるにも程が有る。白は愚か者の色……そして臆病者の色だ」
「な……なんだと……?」
俺は……目の前に居る黒いコスチュームの男に言い返そうとした。
俺は、どれだけ馬鹿にされても構わない。
馬鹿にされるのは慣れてる。
でも……これは……「正義の味方」を名乗る暴徒どもの「正義の暴走」から何度も俺達を護ってくれた、初代クリムゾン・サンシャインから受け継いだモノだ。
俺を馬鹿にする事は許してやるが、あの人を馬鹿にする事は許さない。
理性的で合理的で現実な大人の男らしく理路整然とそう論破してやるつもりだった。
だが……。
「おれおれおれおれおおおあれれっ?」
おい、何で、巧くしゃべれない?
ああああっ……。
さささささっき……どどどどどどどこか頭でも打っておかしくおかしくおかしく……あああ……俺の人生、この先真っ暗なのか?
うっひゃ~あああっ‼
SNSかMaeveだったら、泣き顔マークを大量に入力してただろう。
「良く聞け……白いコスチュームとは、自分の血を流す覚悟も、敵の返り血を浴びる覚悟もない事を意味している。やはり、お前は、臆病者の愚か者のようだな……」
誰だ……貴様は……?
俺は……そう聞こうとした。
「だだだだだだれだれだれだれ?」
でも、俺の口から出た言葉は……。
だめだ……ちゃんとしゃべれない。
そ……それに、あれ? あれ? あれ?
おい、俺、いつの間に腰を抜かしてたんだ?
「『お前は誰だ?』そう言いたいのか?」
俺は首を縦に振る。
「何故、『正義の味方』と呼ばれている者達が……二〇世紀の子供番組のような……いかにもな『正義の味方』っぽい名乗りをしないか……良く判ったよ……。この名乗りを自分で練習していて……こっ恥かしくて仕方無かった」
えっ? 何を言っている?
「知ってるか、2代目? 太陽が紅く染まるのは……1日の内に朝日と夕日の2回だけだ。俺は……貴様と云う夕日が沈んだ後に来る……永遠の夜だ。そう……エーリッヒ・ナハトとでも呼んでくれ」
ふ……普段なら……あまりに中二病過ぎる台詞に笑い出してただろうが……でも……でも……でも……今は今は今は今は今はっ。
あわわわわわわっ‼
「束の間の神の恩寵が有ろとも、人間の怒りは永遠に消えぬ。涙の夜は明ける事なく……二度と喜びの朝が来る事は無い」
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