投稿サイトに小説を載っけてるそうですね。貴方の名前は出せませんが、お金になる仕事が……。

蓮實長治

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投稿サイトに小説を載っけてるそうですね。貴方の名前は出せませんが、お金になる仕事が……。

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 キュイイイイ~ン。
 歯医者の治療の時のあの音は、いつ聞いても嫌なモノだが……今日は流石に洒落にならなかった。
「OKなら片手を上げて下さい……。そう……アメリカの大統領の就任の宣誓の時みたいな感じで……」

「親不知が虫歯になってますね……。これ神経抜く必要が有りますね……」
 歯医者に行って、レントゲンを撮った後に、そう言われた。
「は……はぁ……」
「結構、大掛かりになりますね。今度の水曜の午後一でどうですか?」
「は……はい、それでお願いします」
 だが……この時に気付くべきだった……。何かおかしいと……。

「あれっ?」
 有給休暇を使って、歯医者に行ってみると……駐輪場の自転車がいつもより少ない。
 まぁ、平日の昼間だからだろうと、軽く考えていたら……。
 歯医者の玄関のドアを良く見ると……。
「水曜・日曜・祝日はお休みさせてもらいます」
 えっ?
 まさか、俺一人の治療の為に、わざわざ、定休日なのに……?

 俺以外に誰も居ない待合室……。
 ふと……待合室に置いてある本を見ると……あれ? いつも有る手塚治虫の「ブラック・ジャック」が無い。
 その代りに……な……何だ、こりゃ……。
 「霊言」と称するインチキで有名な新興宗教団体の本だ……。
 おい……どうなってる?
 そう言や、あそこが作ってる宣伝映画のエンドロールには、出資者として、やたらと歯医者が名前が出て来ると云う話を聞いたが……まさか……。

「古川リョウさん……準備が出来ましたので入って下さい」
 本名ではなく、小説投稿サイト「小説家を始めよう」で使っているペンネームで呼ばれた。
 後にして思えば……逃げれば良かった。
 この時が……最後のチャンスだったのだ……。

 歯茎に麻酔を打たれた時、診察室に、例の宗教団体の教祖の写真が飾ってある事に気付いた。
 あ……もう、全て遅い。
 その時に、そう気付いた。
「『小説家を始めよう』の投稿されてる小説を読ませてもらいましたよ……」
「あ……どうも……」
 俺は……既に……恐怖の虜になり………逃げ出すと云う発想さえ浮かばなくなっていた。
 キュイイイイ~ン。
 何て名前だったか知らないが……例の歯を削る機械の音……。
「ある人に……古川さんを推薦したいんですよ……。ええ……映画の脚本のリライトの仕事なんですけどね……。古川さんの作風に合った仕事だと思うんですよ。古川さんの名前は出せないけど……報酬はかなりの額になりますよ……。並のサラリーマンのボーナス2~3回分ですけど……どうします?」
 口の中から、歯が削られる音。
「OKなら片手を上げて下さい……。そう……アメリカの大統領の就任の宣誓の時みたいな感じで……」
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