Neo Tokyo Site 01:第一部「Road to Perdition/非法正義」

蓮實長治

文字の大きさ
27 / 59
第二章:未来昔日 ― Days of Future Past ―

(ⅰ)

しおりを挟む
 尿意と空腹が、俺を現実に引き戻した。
 俺は、レナ達を追い出してから、ずっと、親父の形見の強化服「水城みずき」を見つめ続けていた。
 何をすべきか、当の俺が何を望んでいるか俺自身にも判らないまま、結構な時間が過ぎた。
 ヒーローごっこは、あっけなく終った。いや、俺が、その「ヒーローごっこ」から、あっさりハブられた。
 多分、レナ達は、正義と仁愛にあを取り戻すのに成功するだろう。そして、その後は、また、いつもと同じ日々が続く。
 それで何も問題ない筈なのに、何故か、俺はモヤモヤした気持ちを抱えていた。
 トイレに行って、そして、昼飯を喰う為に外に出る。
 車のエンジンは全開なのに、どこへ行くべきか判らない。折角、得た「力」の使い道が無くなったのに、「力」だけは残っている。そんな中途半端な状態。下品な言い方をすれば、チンコがギンギンにおっ勃ってるのに、自分が何に興奮してるかも判らず、オナニーのやり方も知らないような、そんな感じだ。
 表通りまで出て、一番安い牛丼屋に入り、さっさと飯を済ませようとしたが……俺が店に入ってから、ほんの五分かそこらの間に、外で「何か」が起きたようだ。
 外では銃弾と……そして、「魔法使い」達が使う「式神」だか「使い魔」だかが飛び交っていた。
 まぁ、年に3~4回は有る事なので、驚く程では無いが……。
「はい、牛丼大盛りね」
「おい、あの『使い魔』、『神保町』の連中が使ってるのとも、『靖国神社』の連中のとも違くねぇか?」
 近くの席の客が、外を見ながら、そう話していた。
「どっちみち、魔法使い相手だと『サラマンダーズ』の方が不利だな」
「しっかし、よりにもよって、『慰霊祭』の日に騷ぎを起すかね?」
 親父が死んだ時の事を思い出した。「魔法」を防げるのは、基本的に「魔法」だけらしいので、魔法使いが相手だと、強化服だろうと、パワーローダーだろうと、戦車や装甲車だろうと、基本的に「人が乗ったり着装したりする武器」は不利になる……らしい。
 そのせいで、最近は、無線操作が可能なパワーローダーや戦車・装甲車が軍隊や警察だけじゃなくて、犯罪組織や自警団でも使われるようになってるらしいが……。
 そして、もちろん、俺の親父も……「神保町」の自警団のトップに、「水城みずき」を着て殴りかかろうとして……あっさり呪い殺された。
 騒ぎが収まった頃を見計らって、俺は牛丼屋を出る。
 丁度、俺の居る辺りを挟んで、後方には、倒れてる「サラマンダーズ」の連中や動かなくなってる防弾SUVや4足歩行ヴィーグルが有った。そして……前方には……。
「おい……居たぞ……あのガキだ」
 やたらとガタイのいい連中が二〇人弱。男女問わず、スキンヘッドか、長くても五分刈り位の髪。服は動き易そうな普段着で、女でもスカートをはいてるのは居ない。そして、全員が数珠のようなモノを首にかけている。
「おめぇが、石川智志さとしの息子か?」
 リーダー格らしい三〇過ぎのマッチョなスキンヘッドが、俺にそう言った。
 スキンヘッドの魔法使い……まさか……。何故、台東区Site04の自警団「寛永寺僧伽」の連中が「秋葉原」に居るんだ?
 船で片道1時間はかかる、この千代田区Site01に?
 そして、何故、俺と親父の事を知っている?
「訳が判んねぇ、ってつらぁしてんな……。ちょいと借りが有るヤツに頼まれてな……お前がやろうとしてる事を手助けする事になった」
「えっ?」
「早く準備をしろ。『靖国神社』に誘拐ぶっさらわれたガキどもを取り戻しに行くぞ」
「ま……待ってくれ……あんた達は……その……『本土』から来る『御当地ヒーロー』と何か関係が有るのか?」
「……はぁ? そっちこそ待て、何の事だ?」
「いや……その……誘拐された俺の弟と妹を取り戻す為に……『本土』から御当地ヒーローを呼んだヤツが居るんだ」
「誰が、どうやって、そんな真似をした? どうなってんだ、一体?」
「ええっと……その……たまたま、この件に巻き込まれた『本土』から来た大学生が、『本土』の『御当地ヒーロー』にツテが有ったみたいで……」
 スキンヘッドの一団は、俺の話を聞いて……ポカ~ンとした顔をした。
「冗談抜きで……何がどうなってる?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

レオナルド先生創世記

山本一義
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...