31 / 36
第三章:自由と平和の護り手
(12)
しおりを挟む
「お姉さん達も、コンビニで買ってきたヤツじゃなくて、こっちの食事にすればいいのに……」
ヒロイン役の眞木洸が、近くの席で、あの「出資者の1人」と……もう1人、二十代後半ぐらいの眼鏡に男もののスーツの女性に、そう言っていた。
「気が進まん。頑張っているスタッフや出演者の為のモノを横取りするような真似は……」
「台湾のベンチャー企業の創業者」なのに、何故か綺麗な日本語だった。
「でも、ベジタリアンじゃなかった? いいの、肉が入ったサンドイッチ食べて? こっちならベジタリアン用のメニューも有るよ」
「健康目的でのベジタリアンだ。肉を少しでも食べた奴らは残らず地獄に堕とすような心の狭い神様を信仰してる訳じゃない。少しぐらい肉を食っても、後で他に何か健康にいい事をすればいいだけだ」
その時、3人の女性が居るテーブルの上に有る変なモノが目に入った。
「それは……何……ですか?」
俺が指差したモノ……それは……2本のケーブル。
1つは暗い青。もう1つはピンクと赤の中間ぐらいの明るい色。
長さは……共に十数㎝。
「この現場で『アニマトロニクス・ドロイド』と呼ばれている撮影用のロボットに使われている人工筋肉だ。今、彼女に説明していた」
そう言って「出資者」は、まず赤っぽい色の方を手にした。
「御存知だと思うが……人間の筋肉は力を入れると縮む性質が有る。それを再現したのが、この赤い方だ。通電すると縮む性質を持つ新素材で出来ている」
「では、青い方は?」
「ウチの会社の技術者達は……筋肉が基本的に『縮む』事しか出来ないのを非効率だと考えた。例えば……体の使い方が巧く無い者が『力を入れているつもり』で誰かを殴っても……遅くて威力の無いパンチになってしまう事は良く有る」
たしかに……そうだ。
だからこそ……。
「私も多少は武術やスポーツをやっているが……例えば、多くの武術やスポーツで謂う『脱力』は人間の筋肉が持つ制約から生まれたノウハウだろう。『筋肉に力を入れようとすればするほど、関節を延ばす動きの効率が落ちてしまう』と云う人体の制約を回避するには『体から力を抜く事をイメージする』と云うのは、中々、効率的・合理的な発想だと思う」
言っている言葉の意味は判る……だが……。
何故、その「人工筋肉」とやらが2種類有るのだ?
「この青いのは……人間の筋肉とは逆の動きをするもの……。通電により延びる性質を持っている」
なるほど……発想は理解出来る……が……。
話は、そんな単純なモノなのか?
人間のモノより効率が良い人工筋肉を作っても……それから構成されるモノは「人体より効率的かも知れないが、あくまで人体とは別のシステム」「人間とは別の何か」であって、「人間の動きを模倣する事に長けた何か」に、本当に成るのだろうか?
「だが、当然、問題が生じた。人間の筋肉より効率的かも知れないが、性質が違うモノで、人間を模倣しようとしても、巧くいくとは限らない」
「じゃあ、どうしたの?」
眞木洸は、そう訊き返した。
「そこにウチの会社の収益の秘密が有る」
「へっ? 今まで技術の話だったのに、急にお金の話?」
「ウチの会社が取ってる特許は……この人工筋肉だけじゃない。人間の動きを……この人工筋肉を使って作られたロボット用の動きに巧く変換する為の……計算式やアルゴリズムだ」
ヒロイン役の眞木洸が、近くの席で、あの「出資者の1人」と……もう1人、二十代後半ぐらいの眼鏡に男もののスーツの女性に、そう言っていた。
「気が進まん。頑張っているスタッフや出演者の為のモノを横取りするような真似は……」
「台湾のベンチャー企業の創業者」なのに、何故か綺麗な日本語だった。
「でも、ベジタリアンじゃなかった? いいの、肉が入ったサンドイッチ食べて? こっちならベジタリアン用のメニューも有るよ」
「健康目的でのベジタリアンだ。肉を少しでも食べた奴らは残らず地獄に堕とすような心の狭い神様を信仰してる訳じゃない。少しぐらい肉を食っても、後で他に何か健康にいい事をすればいいだけだ」
その時、3人の女性が居るテーブルの上に有る変なモノが目に入った。
「それは……何……ですか?」
俺が指差したモノ……それは……2本のケーブル。
1つは暗い青。もう1つはピンクと赤の中間ぐらいの明るい色。
長さは……共に十数㎝。
「この現場で『アニマトロニクス・ドロイド』と呼ばれている撮影用のロボットに使われている人工筋肉だ。今、彼女に説明していた」
そう言って「出資者」は、まず赤っぽい色の方を手にした。
「御存知だと思うが……人間の筋肉は力を入れると縮む性質が有る。それを再現したのが、この赤い方だ。通電すると縮む性質を持つ新素材で出来ている」
「では、青い方は?」
「ウチの会社の技術者達は……筋肉が基本的に『縮む』事しか出来ないのを非効率だと考えた。例えば……体の使い方が巧く無い者が『力を入れているつもり』で誰かを殴っても……遅くて威力の無いパンチになってしまう事は良く有る」
たしかに……そうだ。
だからこそ……。
「私も多少は武術やスポーツをやっているが……例えば、多くの武術やスポーツで謂う『脱力』は人間の筋肉が持つ制約から生まれたノウハウだろう。『筋肉に力を入れようとすればするほど、関節を延ばす動きの効率が落ちてしまう』と云う人体の制約を回避するには『体から力を抜く事をイメージする』と云うのは、中々、効率的・合理的な発想だと思う」
言っている言葉の意味は判る……だが……。
何故、その「人工筋肉」とやらが2種類有るのだ?
「この青いのは……人間の筋肉とは逆の動きをするもの……。通電により延びる性質を持っている」
なるほど……発想は理解出来る……が……。
話は、そんな単純なモノなのか?
人間のモノより効率が良い人工筋肉を作っても……それから構成されるモノは「人体より効率的かも知れないが、あくまで人体とは別のシステム」「人間とは別の何か」であって、「人間の動きを模倣する事に長けた何か」に、本当に成るのだろうか?
「だが、当然、問題が生じた。人間の筋肉より効率的かも知れないが、性質が違うモノで、人間を模倣しようとしても、巧くいくとは限らない」
「じゃあ、どうしたの?」
眞木洸は、そう訊き返した。
「そこにウチの会社の収益の秘密が有る」
「へっ? 今まで技術の話だったのに、急にお金の話?」
「ウチの会社が取ってる特許は……この人工筋肉だけじゃない。人間の動きを……この人工筋肉を使って作られたロボット用の動きに巧く変換する為の……計算式やアルゴリズムだ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる