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世界同時多発……
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「貴方は、有色人種にしては優秀なジャーナリストだと思っていたが、そんな陰謀論を信じるとはね……」
香港からアメリカに亡命したジャーナリストは、アメリカでも報道関係の仕事に就こうとしたが……彼女の亡命を支援したアメリカのシンクタンクは、あくまでも彼女にアメリカで新しい仕事に就く事ではなく「中国の人権抑圧の被害者」の象徴で有り続ける事を要求した。
「ところで、TVをつけてよろしいですか?」
「この話と何か関係が有りますか?」
「ええ……」
そのシンクタンクの理事長の執務室の大型TVには、ニュース専門チャンネルが映し出された。
「私がアメリカに亡命してきた頃から、この調子です。ニュース番組のアナウンサーは白人ばかり……それも、アナウンサーを能力よりも外見で選んでいるとしか思えない」
「外見も白人である事も立派な能力ですよ。適者生存と云うヤツですな」
「何を言っているのですか?」
「貴方は、我々が白人至上主義を広めようとしていると言われるが、とんだ誤解です。全ては心有るアメリカ国民の選択であり、我々は後押しや地均しをしたに過ぎない。優秀な人種が再びアメリカの主導権を握らねば、中国がアメリカに勝利してしまう事も有り得る」
彼女に助けの手を差し延べたのは……とんでもない連中だった。どうやら、彼らにとっての「アメリカ国民」には……いや「人間」には有色人種は含まれていないらしい。
「もちろん、貴方が『有色人種が作った国が万が一にも自滅しなければ全体主義国家と化す』と云う事実を広めるシンボルになっていただければ、我々にも都合が良いので、今後とも……」
「ふざけないで下さい」
ほどなくして、彼女の亡命を支援したシンクタンクは「彼女のアメリカへの亡命は、民主化運動により香港に居られなくなったからではなく、中国のスパイとしてアメリカで諜報活動を行なう為だった疑惑が有る」との声明を出し……しかも、ホワイトハウスも、それを「真実」だと認定した。
香港に続いてアメリカからも追われる事になった彼女を受け入れたのは、アメリカ・中国に続く「第3の超大国」となりつつ有るインドだった。
「あの……マハトマ・ガンディー廟に参拝をしたいのですが……。香港で民主化運動をやっていた頃、マハトマ・ガンディーのインド独立運動の手法を参考にしていましたので……」
インドに到着した彼女は、彼女の再亡命を支援したインド政府のエージェントにそう言った。
「ああ、外国では、まだ、そのような認識なのですね?」
「えっ?」
「今のインドでは、ガンディー氏が率いたインド国民会議よりも、現与党の方がインド独立に果した役割は大きかった、と云う認識が一般的です」
彼女は、その一言で、何か不穏なモノを感じた。
「より端的に言いますと……今のインドでは『ガンディー廟に行く』事そのものが、現政権に反対する不穏分子の行動と見做されかねないのですよ」
ふと、彼女の脳裏に、民主主義そのものが世界から消えつつ有るのでは? と云う嫌な想像が浮かんだ。
頭を切り替えるつもりで、空港から移動する車から、外を見ると……ヒンドゥー至上主義者団体の旗を掲げ、銃を抱えた男達の集団が、まるで軍隊のように堂々とパレードを行なっていた。
香港からアメリカに亡命したジャーナリストは、アメリカでも報道関係の仕事に就こうとしたが……彼女の亡命を支援したアメリカのシンクタンクは、あくまでも彼女にアメリカで新しい仕事に就く事ではなく「中国の人権抑圧の被害者」の象徴で有り続ける事を要求した。
「ところで、TVをつけてよろしいですか?」
「この話と何か関係が有りますか?」
「ええ……」
そのシンクタンクの理事長の執務室の大型TVには、ニュース専門チャンネルが映し出された。
「私がアメリカに亡命してきた頃から、この調子です。ニュース番組のアナウンサーは白人ばかり……それも、アナウンサーを能力よりも外見で選んでいるとしか思えない」
「外見も白人である事も立派な能力ですよ。適者生存と云うヤツですな」
「何を言っているのですか?」
「貴方は、我々が白人至上主義を広めようとしていると言われるが、とんだ誤解です。全ては心有るアメリカ国民の選択であり、我々は後押しや地均しをしたに過ぎない。優秀な人種が再びアメリカの主導権を握らねば、中国がアメリカに勝利してしまう事も有り得る」
彼女に助けの手を差し延べたのは……とんでもない連中だった。どうやら、彼らにとっての「アメリカ国民」には……いや「人間」には有色人種は含まれていないらしい。
「もちろん、貴方が『有色人種が作った国が万が一にも自滅しなければ全体主義国家と化す』と云う事実を広めるシンボルになっていただければ、我々にも都合が良いので、今後とも……」
「ふざけないで下さい」
ほどなくして、彼女の亡命を支援したシンクタンクは「彼女のアメリカへの亡命は、民主化運動により香港に居られなくなったからではなく、中国のスパイとしてアメリカで諜報活動を行なう為だった疑惑が有る」との声明を出し……しかも、ホワイトハウスも、それを「真実」だと認定した。
香港に続いてアメリカからも追われる事になった彼女を受け入れたのは、アメリカ・中国に続く「第3の超大国」となりつつ有るインドだった。
「あの……マハトマ・ガンディー廟に参拝をしたいのですが……。香港で民主化運動をやっていた頃、マハトマ・ガンディーのインド独立運動の手法を参考にしていましたので……」
インドに到着した彼女は、彼女の再亡命を支援したインド政府のエージェントにそう言った。
「ああ、外国では、まだ、そのような認識なのですね?」
「えっ?」
「今のインドでは、ガンディー氏が率いたインド国民会議よりも、現与党の方がインド独立に果した役割は大きかった、と云う認識が一般的です」
彼女は、その一言で、何か不穏なモノを感じた。
「より端的に言いますと……今のインドでは『ガンディー廟に行く』事そのものが、現政権に反対する不穏分子の行動と見做されかねないのですよ」
ふと、彼女の脳裏に、民主主義そのものが世界から消えつつ有るのでは? と云う嫌な想像が浮かんだ。
頭を切り替えるつもりで、空港から移動する車から、外を見ると……ヒンドゥー至上主義者団体の旗を掲げ、銃を抱えた男達の集団が、まるで軍隊のように堂々とパレードを行なっていた。
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