当時の基準では合法だっただろッ‼ 何が悪いって言うんだよッ⁉

蓮實長治

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当時の基準では合法だっただろッ‼ 何が悪いって言うんだよッ⁉

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「あのなぁ、当時は、まだ、外国人技能実習制度は合法だった筈だよな? で、俺が当時経営していた会社で、外国人技能実習生を使っていて何の問題が有るんだ?」
「いや……あのですね……」
 私が、その元・企業経営者に取材を行なうのは2度目だったが、彼は、何故か、1回目と同じ事を繰り返していた。
「例えば、南北戦争以前のアメリカ南部の奴隷制度を今の基準で裁くなど間違ってるよな? 今の基準で過去を裁くな。それは常識だろ?」
 いや、私が聞きたいのは……法律上・倫理上の問題ではない。彼が、あんな鹿選択を行なった理由なのだ。
 「地元の大物」だった彼の選択のせいで、この地域の地場産業が1つ潰えたのだ。私の故郷を無茶苦茶にしたのは……この男なのだ。
「そんなザマだから『これだからマスゴミは』とか言われるんだよ……。おやっ? 反論がねぇな。『はい、論破』と思っていいのか?」
 彼の古い価値観と……そして、彼が使ったネットジャーゴンで……私は薄々抱いていた、ある推測が正しいのでは無いか、と云う思いを強めた。
「あの……写真を撮らせていただいてよろしいですか? 記事に使いたいので」
「おぉ、いいぞ。いい男に撮ってくれ……あれ? 珍しいスマホだな。メーカーはどこだ?」
 彼の年代の人達にとっても……最早、と云う単語は死語になっている。
 だが、彼は、その言葉を使った。
 「マスゴミ」「論破」……彼が使ったネットジャーゴンも……とっくに廃れているモノばかりだ。
「えっ? おい、誰の写真だ? え……まさか……これが……俺だって? 悪い冗談はよしてくれ……。何のアプリで加工したんだ?」
 私は、今撮った彼の写真を彼に見せた……。
 九十近い老人の写真を……。

 地元の同業者を巻き込んで、あの馬鹿な事業を始めた時、既にそうだったのだろうか?
 それとも、あの事業が破綻したショックで、ああなったのだろうか?
 少なくとも……喩えるなら「心の時間が止まってしまっている」彼からは……今回の記事を書くのに必要な情報は聞き出せないだろう。
 私が……まだ子供だった頃……そして、彼がまだ五十代だった頃の二〇二〇年代に……あの失敗した……いや、失敗するのが明かな事業を立ち上げた理由は……。
 何故、三年以内に外国人技能実習制度の廃止が確実と言われていた時期に、外国人技能実習制度の存続を前提にした十年計画の事業を行なおうとしたのか……そして、そんな地獄へ真っ逆さまの超特急に、地元の同業者や地銀も相乗りをしたのか……その謎を解くには、他の関係者に取材するしか無いようだ。……「他の関係者」が生き残っている内に。
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