Dystopia Now!!/「正義の味方」監査委員に選ばれてしまった「悪の組織」の末端構成員ですが……

蓮實長治

文字の大きさ
6 / 24
第一章:ルーズ戦記

(5)

しおりを挟む
「あの……意識を取り戻されたばかりで、こんな質問をするのは何ですが……」
「へっ?」
 目が覚めると、目に飛び込んで来たのは鬼女の顔。
「貴方は会社員との事ですが、職場に何か問題は有りますか?」
「い……いえ……」
「では、カルト宗教などに入信された御経験は?」
「い……いえ……」
「妙ですね……」
「何がですか?」
「貴方の脳または精神には……暗示や洗脳にかかりやすい性質が有るようです。異常とまでは言えないにせよ、二〇人か三〇人に一人しか居ない程度のレベルで」
「へっ?」
「先程、私がかけた脳を調べる『魔法』も、平均的な人なら、ある程度の時間は『抵抗する』か『受け流す』事が可能な筈なんですが……」
「ご……ごめんなさい……心当りが無いです」
「しかし、調べてみた限り、貴方の脳の暗示や洗脳にかかりやすい性質は後天的なモノのようです。例えば、学生時代に入っていた部活が、今時、めずらしい超体育会系なモノだったとか、お勤め先が、いわゆる『理不尽企業』だったりなどの事は、本当に有りませんか?」
 うわあああああッ‼
 たしかに、その通りだ。
 「正義の味方」達に「悪」として断罪された組織の大半には……ある共通点が存在する。
 そして、それは、ウチの会社やその上部組織にも当て嵌る。
 早い話が「超体育会系」。
「あ……あの……それだと監査委員には……」
「監査委員の方は『御自分なりの意見』を持たれている必要が有ります。他の監査委員や監査対象である『特殊武装法人』側の意見・主張に唯唯諾諾と従うなら……監査委員の意味が有りません」
「は……はぁ……では、その……私は……御役御免でしょうか?」
 考えろ、考えろ、考えろ。
 ここで、「正義の味方」監査委員を馘になって会社に戻ったら殺される。
 しかし、監査委員になろうとして、うかつな事を口走れば……ウチの会社が「正義の味方」達が「悪の組織」と見做してるとこのフロント企業だとバレて……最もマシなケースでも、俺の職場はこの世から消えてなくなり、俺は露頭に迷う。
 いや……待て……俺の勤め先が「悪の組織」のフロント企業だとバレてないなんて……有り得るのか?
 だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。
 考えがまとまらない。
「貴方には2つの選択肢が有ります。1つは、このままお帰りいただく事」
「あの……もう1つは……」
「こちらの内容を良く読まれて御理解した上で、サインするかを決めて下さい。サインいただけない場合は、何もせずにお帰りいただく事になります。貴方の場合、監査委員の公務を行なう場合には、この訓練を受けていただく必要が有ります」
「は……はあ……えっ?」
 白い鬼に渡された書類の一番上には、ゴシック体で、こう書かれていた。
 「精神操作・洗脳・暗示・催眠等への抵抗訓練の受講同意書」と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...