上 下
7 / 9
第一章:Berandal

ヒメミコ (2)

しおりを挟む
 そいつは、私が蘇ったこの時代で、たまに見掛ける格好をしていた。
 要は……ライダースーツと呼ばれるモノだ。もっとも、大仰な防具が付いているが……私のこれまでの経験と、この体の主の知識からすると……町中ではそれほど見ないが、違和感を感じる程では無いタイプだ。
 ただ、妙な点は有った。それは……そいつの体から妙な霊力を感じた事。
 しかも……そいつの額からは、まるで「角」のように霊力が延びていた。
 まるで「鬼」……この体の主の記憶に有る、昔話の怪物。いや……昔話と言っても、私が生きていた頃より後に生まれた話なので、「昔話」と呼ぶのも変だが……。
 ともかく、そいつは、私の敵を次々と倒していった。
 だが、そいつが、敵の親玉を額から延びる「霊力」の角で攻撃した時……。
 ……防がれた。
 どうやら、敵の親玉は自分の鎧にだけ防御用の呪術をかけていたようだ。
 今回の敵には、呪術師やそれに近い能力を持っている奴……生まれ付き呪術に似た力を使えるような……は居ないらしいので、多分、他の誰かに頼んだのだろうが……結構な金がかかるようだ。
 私も、同業(要はチンピラやゴロツキだ)に、その手の依頼をされた事が有ったが……まぁ、ウチの下っ端の1月分の給料と同じぐらいの金額を請求しても文句は言われなかった。
 やがて、敵の親玉の鎧に浮かぶ「呪紋」が少しづつ薄れてゆく。
 「鬼」の「霊力の角」の方が押し勝ちつつ有るようだ。
 丁度いい。
 敵の注意が「鬼」に向けられたお蔭で、こっちの術を使う時間が出来た。
「行け」
 私が、この時代に蘇えった後に手下にした精霊すだまの一体にそう命じた。
 何ヶ月か前に、私と戦った異国流の呪術を使う者の配下だった「貪り喰らうモノ」とだけ呼ばれる精霊すだまだ。
 元の主を殺した後に、使えそうだったので奪ってやった。
 「貪り喰らうモノ」は、まず敵の親玉を噛み砕き……と言っても体ではなく、ヤツを護っていた呪術とヤツの生気をと……と云う意味だが……そして……。
しおりを挟む

処理中です...