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全員が安全になるまでは、誰も安全とは言えない
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「『国民の内、1人でもゾンビ化する可能性が有る者が居る限り、他の国民は安全とは言えない』。……それはドグマでもイデオロギーでもなく、客観的な事実だ。……ここまでは良いかね?」
我が党の中でも、健康福祉行政が専門の長老議員は私にそう言った。
「はい」
「しかし、残念ながら、国民全員に行き渡るだけの抗ゾンビ化薬が用意出来るのは、早くても1年後だ。これもまた事実だ」
「その通りです」
「そして、我が党に所属している政治家達が、コネを使い、様々な役所に圧力をかけ、自分や自分の家族に優先的に抗ゾンビ化薬を投与している事が明るみに出た。君は、それに何の問題が有るのか? とSNSに投稿した」
「私個人としては、何1つ間違っていないと考えているのみならず、国民の中でも、冷静で合理的な人々は、私の意見に賛同してくれています。反対意見は一部の感情論だけです」
「判っているのか? 総理が国民に対して、この事態を謝罪したにも関わらず、一期目の若造とは言え、与党所属の国会議員である君がSNSで余計な事を言った。君は総理が折角やった謝罪を台無しにしたんだ。君のようなマヌケが居るから、総理は、何度も何度も何度も何度も謝罪し続けねばならんのだよ」
「しかし、抗ゾンビ化薬を優先的に投与されるようなコネを持っている人物は……同時に社会的に重要な人物である可能性が高いでしょう。そのような人達の安全を優先すべきです」
「だから……最初に言っただろう。『国民の内、1人でもゾンビ化する可能性が有る者が居る限り、他の国民は安全とは言えない』と……」
「丁度いいじゃないですか」
「はぁ?」
「抗ゾンビ化薬を優先的に投与されるようなコネを持っている人物は社会的に重要な人物であると云う事は、裏を返せば、そうでない人間は……国にとって、居ても居なくても同じ、代りなどいくらでも居る人間でしょう。不要な国民を整理するチャンスです」
「なるほど……『国民の内、1人でもゾンビ化する可能性が有る者が居る限り、他の国民は安全とは言えない』しかし『抗ゾンビ化薬は足りない』。この矛盾に対する君の答がそれか……」
「ええ、『抗ゾンビ化薬は足りない』が『国民の内、1人でもゾンビ化する可能性が有る者が居る限り、他の国民は安全とは言えない』のなら『国民の数を抗ゾンビ化薬に合わせて減らせば良い』。単純な話でしょう。何か理由を付けて、現政権に批判的な者達を優先的に……」
「良い考えだ。時に君に会わせたい人が居てね……」
「えっ?」
そう言いながら、長老議員は席から立ち上がった。
「君が良く知っている方だよ。3人水入らずの時間を過ごしたまえ」
「3人?」
「ああ、そうだ……君の結婚相手である総理のお嬢様だが……君が、今から、ここに来る2人にやった事について……非常にお怒りで、婚約を解消するとの事だ」
そ……そんな……まさか……。いや……でも……「2人」とは、どう云う意味だ?
「あ……あの……」
「ああ、それと、君が生き延びる事が出来ても……当然ながら、抗ゾンビ化薬の優先投与は受けられない。君の理屈が正しかったが最後、君は国にとって、居ても居なくても同じ、死んでもかまわぬ人間になった訳だ」
そして……長老議員は、慌てて部屋から出て行き……。
「ま……待って下さい……。そ……そんな……」
その代りに部屋に入って来たのは……クソ……あの野郎、いい加減な仕事しやがって……。
この御時世に、口を封じるのはいいが……死体をそのままにしておけば……。
「お……おい……君と僕の仲だろ……見逃して……」
「ぐるっ?」
ゾンビと化した、かつての恋人……総理の娘と結婚する為に「消した」筈のその女は……ゆっくりと僕に近付き……。
次の瞬間……彼女の大きくなった腹から飛び出てきた、僕の子供の成れの果てであろうゾンビが、僕の喉笛を……。
我が党の中でも、健康福祉行政が専門の長老議員は私にそう言った。
「はい」
「しかし、残念ながら、国民全員に行き渡るだけの抗ゾンビ化薬が用意出来るのは、早くても1年後だ。これもまた事実だ」
「その通りです」
「そして、我が党に所属している政治家達が、コネを使い、様々な役所に圧力をかけ、自分や自分の家族に優先的に抗ゾンビ化薬を投与している事が明るみに出た。君は、それに何の問題が有るのか? とSNSに投稿した」
「私個人としては、何1つ間違っていないと考えているのみならず、国民の中でも、冷静で合理的な人々は、私の意見に賛同してくれています。反対意見は一部の感情論だけです」
「判っているのか? 総理が国民に対して、この事態を謝罪したにも関わらず、一期目の若造とは言え、与党所属の国会議員である君がSNSで余計な事を言った。君は総理が折角やった謝罪を台無しにしたんだ。君のようなマヌケが居るから、総理は、何度も何度も何度も何度も謝罪し続けねばならんのだよ」
「しかし、抗ゾンビ化薬を優先的に投与されるようなコネを持っている人物は……同時に社会的に重要な人物である可能性が高いでしょう。そのような人達の安全を優先すべきです」
「だから……最初に言っただろう。『国民の内、1人でもゾンビ化する可能性が有る者が居る限り、他の国民は安全とは言えない』と……」
「丁度いいじゃないですか」
「はぁ?」
「抗ゾンビ化薬を優先的に投与されるようなコネを持っている人物は社会的に重要な人物であると云う事は、裏を返せば、そうでない人間は……国にとって、居ても居なくても同じ、代りなどいくらでも居る人間でしょう。不要な国民を整理するチャンスです」
「なるほど……『国民の内、1人でもゾンビ化する可能性が有る者が居る限り、他の国民は安全とは言えない』しかし『抗ゾンビ化薬は足りない』。この矛盾に対する君の答がそれか……」
「ええ、『抗ゾンビ化薬は足りない』が『国民の内、1人でもゾンビ化する可能性が有る者が居る限り、他の国民は安全とは言えない』のなら『国民の数を抗ゾンビ化薬に合わせて減らせば良い』。単純な話でしょう。何か理由を付けて、現政権に批判的な者達を優先的に……」
「良い考えだ。時に君に会わせたい人が居てね……」
「えっ?」
そう言いながら、長老議員は席から立ち上がった。
「君が良く知っている方だよ。3人水入らずの時間を過ごしたまえ」
「3人?」
「ああ、そうだ……君の結婚相手である総理のお嬢様だが……君が、今から、ここに来る2人にやった事について……非常にお怒りで、婚約を解消するとの事だ」
そ……そんな……まさか……。いや……でも……「2人」とは、どう云う意味だ?
「あ……あの……」
「ああ、それと、君が生き延びる事が出来ても……当然ながら、抗ゾンビ化薬の優先投与は受けられない。君の理屈が正しかったが最後、君は国にとって、居ても居なくても同じ、死んでもかまわぬ人間になった訳だ」
そして……長老議員は、慌てて部屋から出て行き……。
「ま……待って下さい……。そ……そんな……」
その代りに部屋に入って来たのは……クソ……あの野郎、いい加減な仕事しやがって……。
この御時世に、口を封じるのはいいが……死体をそのままにしておけば……。
「お……おい……君と僕の仲だろ……見逃して……」
「ぐるっ?」
ゾンビと化した、かつての恋人……総理の娘と結婚する為に「消した」筈のその女は……ゆっくりと僕に近付き……。
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