1 / 1
言う通りにしないと、何もしないぞ
しおりを挟む
「競り落せたのか?」
『閣下……流石に、これはマズいのでは?』
「俺は『競り落せたのか?』と聞いている」
『はい……』
「そうか、では、すぐに空港に向い、ワシントンDC行きの便に乗れ。こっちの空港に到着したら、すぐにホワイトハウスまで持って来い。万が一、ブツを紛失しやがったら、お前ではなく、お前の嫁を中東のテロリストのスパイに仕立て上げて強制収容所に送ってやるから、そう思え」
『ですが……機密費で閣下の私物を購入するなど……その……』
「俺は軍事・経済の両面で世界最高の国の大統領だぞ。この程度の事が何故許されない?」
『あの……機密費の使途は、いずれ公開する事になって……』
「ああ、それか。その頃には俺は死んでいるから大丈夫だ」
『私は生きてる可能性が……』
「それがどうかしたか?」
『ですから……その……閣下が私に命じたのは時効が無い犯罪……』
「うるさい。これ以上、俺に逆らうと、お前の嫁だけではなく、娘も強制収容所送りだ」
娘へのプレゼントとして国家予算で買ったのは……世界最大とまではいかなくても「最大級」ではあるダイヤだ。
娘が、まだ高校生だった頃から、娘と俺は、普通の父娘としては、あまりないような関係だった。
とは言え、俺は、すごぉぉぉぉ~く偉いので、それも許される筈だ。
今度、夜中に娘の寝室に行った時に、事が終った後に娘に、このダイヤをプレゼントする予定だ。
俺は、期待に胸を膨らませながら眠りにつき……。
俺の体は青空に浮いていた。
目の前には人の姿にも見えない事もない巨大な入道雲。
その表面には、時折、稲妻が走る。
「ようやく見付けたぞ……。我にとっては須臾の間であったが、人間にとっては長い年月だったようだな」
俺は唖然としてしまった。
「何だ、そのしゃべり方はッ? シェイクスピアかッ?」
「妙であるな? 我は人間から数多の名前で呼ばれる存在だが『シェイクスピア』なる名前で呼ばれた記憶は無い」
「じゃあ、お前は何者だ?」
「我は天空を主宰す者、風や雨の神々を統べる者、雷を武器とする者、大地に天の恵みをもたらす者……人間達が我を呼ぶ呼び名で一番気に入っているものは『神々の中で最も力ある者』である」
「何だ、マーベル映画に出てるマイティ・ソーの同類か」
「ああ、たしかに、その名前でも呼ばれた覚えがあるが……自己紹介は、これ位にして、本題に入ろう。我が所有物を返せ。人間がインドと呼ぶ地に有る我を祀る神殿に戻すが良い」
「何の話だ?」
「人間どもの間でしか通用せぬ空虚なる決まり事により、汝の所有物となった石である。早く返せ」
「俺が競り落したダイヤの事か?」
「その通りだ。人間がダイヤと呼ぶ石である。我々、神々にとっては信者の敬虔なる気持ちがこもったもの以上の意味は無いが、信者達の想いを無碍にするのは、我としても望まぬ所である。さあ、返せ」
「だから、あれは俺の所有物になったんだ。お前のじゃない」
「これほど頼んでもか?」
「そんな上から目線の頼み方が有るかッ? 俺は、世界最強最悪の軍事独裁国家の元首だぞッ‼」
「我にとって、お前の国を壊滅させるなど容易いが……我が力を思い知らせる為に、少しばかり手加減してやろう。お前が我が所有物を返すまで……」
「返すまで……何だ?」
「何もしないぞ」
「はぁっ?」
その夢の事を思い出したのは……国が……と言うより世界が滅びかけた頃になってだった。
世界で最も偉大な国の大統領の筈の俺が……好きなモノを満足に喰えなくなっていた。
世界中で天候がおかしくなり農作物も家畜の肉も満足に作れなくなっていたのだ。
天候がおかしくなったせいで妙な病気も流行り出し、医者や薬も足りなくなっていった。
嵐や大雨や竜巻でいくつもの町が壊滅し……1年につき数百万人の国内難民が発生し……。
「どうなっているんだ、一体?」
「地球温暖化による影響としては予想通りです」
ホワイトハウスに呼んだ学者は、そう答えた。
「何か、おかしいだろう? 何で、俺が大統領に返り咲いてから、急に、その地球温暖化とやらが酷くなったんだ?」
「それが……」
「何だ?」
「わかりません」
「阿呆かッ? お前、学者じゃないのかッ?」
「ですが……まぁ、偶然だと思うのですが……」
「だから、偶然、何が起きたって言うんだ?」
「はい、大統領が再選されて間も無い時期に……その……地球温暖化による悪影響を緩和していた未知の何かが突然消えてしまった可能性が最も高いとしか……」
『閣下……流石に、これはマズいのでは?』
「俺は『競り落せたのか?』と聞いている」
『はい……』
「そうか、では、すぐに空港に向い、ワシントンDC行きの便に乗れ。こっちの空港に到着したら、すぐにホワイトハウスまで持って来い。万が一、ブツを紛失しやがったら、お前ではなく、お前の嫁を中東のテロリストのスパイに仕立て上げて強制収容所に送ってやるから、そう思え」
『ですが……機密費で閣下の私物を購入するなど……その……』
「俺は軍事・経済の両面で世界最高の国の大統領だぞ。この程度の事が何故許されない?」
『あの……機密費の使途は、いずれ公開する事になって……』
「ああ、それか。その頃には俺は死んでいるから大丈夫だ」
『私は生きてる可能性が……』
「それがどうかしたか?」
『ですから……その……閣下が私に命じたのは時効が無い犯罪……』
「うるさい。これ以上、俺に逆らうと、お前の嫁だけではなく、娘も強制収容所送りだ」
娘へのプレゼントとして国家予算で買ったのは……世界最大とまではいかなくても「最大級」ではあるダイヤだ。
娘が、まだ高校生だった頃から、娘と俺は、普通の父娘としては、あまりないような関係だった。
とは言え、俺は、すごぉぉぉぉ~く偉いので、それも許される筈だ。
今度、夜中に娘の寝室に行った時に、事が終った後に娘に、このダイヤをプレゼントする予定だ。
俺は、期待に胸を膨らませながら眠りにつき……。
俺の体は青空に浮いていた。
目の前には人の姿にも見えない事もない巨大な入道雲。
その表面には、時折、稲妻が走る。
「ようやく見付けたぞ……。我にとっては須臾の間であったが、人間にとっては長い年月だったようだな」
俺は唖然としてしまった。
「何だ、そのしゃべり方はッ? シェイクスピアかッ?」
「妙であるな? 我は人間から数多の名前で呼ばれる存在だが『シェイクスピア』なる名前で呼ばれた記憶は無い」
「じゃあ、お前は何者だ?」
「我は天空を主宰す者、風や雨の神々を統べる者、雷を武器とする者、大地に天の恵みをもたらす者……人間達が我を呼ぶ呼び名で一番気に入っているものは『神々の中で最も力ある者』である」
「何だ、マーベル映画に出てるマイティ・ソーの同類か」
「ああ、たしかに、その名前でも呼ばれた覚えがあるが……自己紹介は、これ位にして、本題に入ろう。我が所有物を返せ。人間がインドと呼ぶ地に有る我を祀る神殿に戻すが良い」
「何の話だ?」
「人間どもの間でしか通用せぬ空虚なる決まり事により、汝の所有物となった石である。早く返せ」
「俺が競り落したダイヤの事か?」
「その通りだ。人間がダイヤと呼ぶ石である。我々、神々にとっては信者の敬虔なる気持ちがこもったもの以上の意味は無いが、信者達の想いを無碍にするのは、我としても望まぬ所である。さあ、返せ」
「だから、あれは俺の所有物になったんだ。お前のじゃない」
「これほど頼んでもか?」
「そんな上から目線の頼み方が有るかッ? 俺は、世界最強最悪の軍事独裁国家の元首だぞッ‼」
「我にとって、お前の国を壊滅させるなど容易いが……我が力を思い知らせる為に、少しばかり手加減してやろう。お前が我が所有物を返すまで……」
「返すまで……何だ?」
「何もしないぞ」
「はぁっ?」
その夢の事を思い出したのは……国が……と言うより世界が滅びかけた頃になってだった。
世界で最も偉大な国の大統領の筈の俺が……好きなモノを満足に喰えなくなっていた。
世界中で天候がおかしくなり農作物も家畜の肉も満足に作れなくなっていたのだ。
天候がおかしくなったせいで妙な病気も流行り出し、医者や薬も足りなくなっていった。
嵐や大雨や竜巻でいくつもの町が壊滅し……1年につき数百万人の国内難民が発生し……。
「どうなっているんだ、一体?」
「地球温暖化による影響としては予想通りです」
ホワイトハウスに呼んだ学者は、そう答えた。
「何か、おかしいだろう? 何で、俺が大統領に返り咲いてから、急に、その地球温暖化とやらが酷くなったんだ?」
「それが……」
「何だ?」
「わかりません」
「阿呆かッ? お前、学者じゃないのかッ?」
「ですが……まぁ、偶然だと思うのですが……」
「だから、偶然、何が起きたって言うんだ?」
「はい、大統領が再選されて間も無い時期に……その……地球温暖化による悪影響を緩和していた未知の何かが突然消えてしまった可能性が最も高いとしか……」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる