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第一部:来たるべき種族─The Coming Race─
第一章:大連(五)
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だが、その時、奇妙な3人連れが「大連銀座」に入って来た。そして、3人のリーダー格らしき者が、群集を制止するように、右手に持っていたステッキを高く掲げた。
「ええっと……だ……誰じゃ? あんたがた……何者じゃ?」
その3人連れが目に入った瞬間、木村は、戸惑ったような口調で、そう言った。
「昭和通商の梅村と申します。その白人の男性と2人のお子さんは、私共の会社の関係者でして。ウチの会社で保護したいので、お引き渡し願えますか? 怪我をしているようですが、我々で、ちゃんとした治療を受けさせますので」
丁寧な口調で、そう言ったのは、若い女性だった。いや、女性ではあるが、髪は短かく、男ものの靴に、男もののシャツ、男もののネクタイに、男ものの背広とコートを着て、右手に持っているのも男もののステッキだ。身に付けている服や靴は、どうやら全て「舶来物」らしい小粋な感じの仕立ての良いものばかりだ。
そして、その背後には2人の男が控えていた。1人は、木村に負けず劣らずの体格の丸刈りで黒い中国服の三〇半ばの男。もう1人は、長い髪を後ろで束ね、顎と額に刺青を入れている協和服のもう少し若い男だ。
「ええっと……先輩……昭和通商って……何ですか?」
山口は、助けを求めるように天を仰いだ。
「おや、山口先生……山口剛玄先生ではありませんか?」
梅村と名乗った女性は、面白そうにそう言った。
「知合いですか?」
「さっきのメガネより会いとうなかった相手じゃ……」
「下手すっと、憲兵よりマズか相手じゃな……」
山口と義一の口調は、この世の終りでも来たかのようだった。
「あの……梅村さん……助け……」
情けない声で、そう言っている憲兵少尉を、梅村は一瞥をくれただけで無視した。
「残念ながら、山口先生は、我々の事を何か誤解されているようですね。とは言え、我々に従った方が得策だとは御理解されているご様子……えっ⁉」
梅村が山口に白人の男を引き渡すように要求しているその最中に、梅村の顔に向って自転車用の電気ランプが飛んだ。
「山口さん‼ こっちじゃ、こっち‼」
屋台街の奥から古賀の声がする。
「え……っと、この白人のおっちゃんは、どうすりゃええんですか?」
「ゆ~っくりとと運べ、ゆ~っくりとな……」
体の大きい義一と木村が未だに意識を失なったままの白人の男の手と足をそれぞれ持ち、山口が2人を守るように梅村達の間に立ちはだかる。
「怪我人を抱えて逃げられると……」
梅村が、そう言いかけた時、露店の群集達が、1人、また1人と、梅村と山口の間に割って入り、身振り手振りで、山口達に早く逃げるように示した。
「すまん……」
山口達は頭を下げると、屋台街の奥に進む。どうやら、屋台街に居た人々は、日本人であっても、日本の憲兵を叩きのめした山口達を「味方」と認識したようだった。
「タダオ……行きなさい。片付けるのは邪魔者達だけにして、白人の男と、娘2人は殺さないで」
梅村は2人の連れの内、協和服の男にそう命じた。
協和服の男は軽くうなづくと、やや下った後、走り出して飛び上がる。次の瞬間、男の姿は屋台の屋根の上に有った。
「なぁ、俺が日本語を良く判らんから、勘違いしただけだろうが……」
梅村の連れの中国服の男が、河北訛りの中国語で、そう言った。
「何?」
梅村が、綺麗な北京官話で聞き返す。
「今、『2人の娘』って言ったか?」
「私が『女』と言えるなら、あの2人の齢上の方も立派な『女の子』よ」
「ええっと……だ……誰じゃ? あんたがた……何者じゃ?」
その3人連れが目に入った瞬間、木村は、戸惑ったような口調で、そう言った。
「昭和通商の梅村と申します。その白人の男性と2人のお子さんは、私共の会社の関係者でして。ウチの会社で保護したいので、お引き渡し願えますか? 怪我をしているようですが、我々で、ちゃんとした治療を受けさせますので」
丁寧な口調で、そう言ったのは、若い女性だった。いや、女性ではあるが、髪は短かく、男ものの靴に、男もののシャツ、男もののネクタイに、男ものの背広とコートを着て、右手に持っているのも男もののステッキだ。身に付けている服や靴は、どうやら全て「舶来物」らしい小粋な感じの仕立ての良いものばかりだ。
そして、その背後には2人の男が控えていた。1人は、木村に負けず劣らずの体格の丸刈りで黒い中国服の三〇半ばの男。もう1人は、長い髪を後ろで束ね、顎と額に刺青を入れている協和服のもう少し若い男だ。
「ええっと……先輩……昭和通商って……何ですか?」
山口は、助けを求めるように天を仰いだ。
「おや、山口先生……山口剛玄先生ではありませんか?」
梅村と名乗った女性は、面白そうにそう言った。
「知合いですか?」
「さっきのメガネより会いとうなかった相手じゃ……」
「下手すっと、憲兵よりマズか相手じゃな……」
山口と義一の口調は、この世の終りでも来たかのようだった。
「あの……梅村さん……助け……」
情けない声で、そう言っている憲兵少尉を、梅村は一瞥をくれただけで無視した。
「残念ながら、山口先生は、我々の事を何か誤解されているようですね。とは言え、我々に従った方が得策だとは御理解されているご様子……えっ⁉」
梅村が山口に白人の男を引き渡すように要求しているその最中に、梅村の顔に向って自転車用の電気ランプが飛んだ。
「山口さん‼ こっちじゃ、こっち‼」
屋台街の奥から古賀の声がする。
「え……っと、この白人のおっちゃんは、どうすりゃええんですか?」
「ゆ~っくりとと運べ、ゆ~っくりとな……」
体の大きい義一と木村が未だに意識を失なったままの白人の男の手と足をそれぞれ持ち、山口が2人を守るように梅村達の間に立ちはだかる。
「怪我人を抱えて逃げられると……」
梅村が、そう言いかけた時、露店の群集達が、1人、また1人と、梅村と山口の間に割って入り、身振り手振りで、山口達に早く逃げるように示した。
「すまん……」
山口達は頭を下げると、屋台街の奥に進む。どうやら、屋台街に居た人々は、日本人であっても、日本の憲兵を叩きのめした山口達を「味方」と認識したようだった。
「タダオ……行きなさい。片付けるのは邪魔者達だけにして、白人の男と、娘2人は殺さないで」
梅村は2人の連れの内、協和服の男にそう命じた。
協和服の男は軽くうなづくと、やや下った後、走り出して飛び上がる。次の瞬間、男の姿は屋台の屋根の上に有った。
「なぁ、俺が日本語を良く判らんから、勘違いしただけだろうが……」
梅村の連れの中国服の男が、河北訛りの中国語で、そう言った。
「何?」
梅村が、綺麗な北京官話で聞き返す。
「今、『2人の娘』って言ったか?」
「私が『女』と言えるなら、あの2人の齢上の方も立派な『女の子』よ」
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