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プロローグ
闇に鎖された男
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十年と少し前の富士山の噴火と、それによる「本物の関東」の壊滅で大量発生した関東難民が暮す4つの……いや、もう5つ目と6つ目が出来上がったんだっけか?……ともかく4つ人工島「NEO TOKYO」の計二〇個の地区の中でも、この千代田区の「有楽町」地区だけは地元警察が機能している「中立地帯」だった。
ただし「だった」。過去形だ。
そうだ……俺の元・所属組織「英霊顕彰会」の凋落が始まった、あの日、「本土」から来たヤクザ達が、地元警察と広域警察の支局の「殴り込み部隊」をまとめて壊滅させたのだ。
いや……正確には……本土から来た、たった一匹の狼男が……。
警察の「殴り込み部隊」の強化服の装甲を易々と斬り裂き穿つ爪と牙を持ち……「パワー型」の強化服に単純な力で打ち勝ち、銃弾も刃物も……噂では並の「魔法」さえ通じない化物に……。
その化物さえ、本土の「正義の味方」どもにブチのめされて……今は、この「人工島」に最も近い「人工島」である台東区の「御徒町刑務所」にブチ込まれているらしい。
そして……俺の元・所属組織も……1月ほど前に壊滅した。「本土」から来た、たった4人の「正義の味方」の手によって。
俺達が、この人工島でダラけてた間、「本土」は、とんだ「修羅の国」になっていたようだ。
しかし……俺は、その「修羅の国」に逃げ込むしか無い。
2ヶ月前にようやく営業が再開した、この人工島最大の港「銀座港」。そこで博多行きのフェリーの切符を買おうとした直前……。
近くに居た、スキンヘッドに迷彩模様の戦闘服、首にはゴツい数珠をかけている警備員が、俺の方を観て、肩ポケットの無線機で、誰かと通話を始める。
ここで言う「観る」とは……霊的・魔法的な手段で、俺の「気」を探った、って意味だ。
俺が「観」られた事に気付くのを判った上で……。
もちろん……この警備員は……。
スキンヘッドに数珠。
それは、この千代田区の4つの自警団……「九段」の「英霊顕彰会」、「神保町」の「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」、「秋葉原」の「サラマンダーズ」と「アーマード・ギークス」……が壊滅した後に台東区から進出してきた2つの自警団の片方「寛永寺僧伽」の「制服」だ。
一番愚かな選択なのは判っている。
しかし……ここ数日……いや一ヶ月ぐらいだったかな? ともかく、ずっと、アルコール漬けになっていた俺の脳味噌はマトモに働いてくれない。
俺の足は反射的に走り出し……。
だが、次の瞬間、俺の足に何かが巻き付く。
多分だが……ほんの数分か数秒……転んだ時の脳震盪か何かで気を失なっていたのだろう。
俺は……スキンヘッドに数珠の連中と……色とりどりのスカジャンの連中に囲まれていた。
スカジャンの連中は……台東区から進出してきた、もう1つの「自警団」である「入谷七福神」の連中だ。
「制服」は背中に七福神が乗った宝船の絵が描かれたスカジャン。
「顔認識終りました。『英霊顕彰会』の元幹部・小堀利昭です」
スカジャンの1人が携帯電話を俺に向けて、仲間どもにそう言った。
「すまんが、御同行願おうか?『自警団』でありながら、護るべき一般人を虐殺したクズどもの一員が……無事で済むと思うなよ。おっと、ミランダ警告を読み上げるべき……ん?」
だが、次の瞬間……爆発音と煙……そして……。
涙。
鼻水。
よだれ。
催涙ガスか?
クソ……素人にも可能な「魔法使い」対策の中でも定石中の定石だ。
術を使うのに必要な精神集中が出来なくなった「魔法使い」なんてイ○ポのチ○コ以上に役に勃たねえ……。
誰かが俺の首根っこを掴み……。
ようやく目がマトモに見えるようになった時には……男用か女用かは不明だが……トイレの中。
俺の首を掴んで持ち上げてるのは……多分、二十前のメスガキ。
「あたしの事を覚えてるか?」
「あああ……」
知らねえよ。
第一……簡易式とは言え、防毒マスクと防護ゴーグルをしてるんで、顔が見えねえよ。
……と言いたい所だが……巧く言葉が口から出ない。
だが、そのマスクとゴーグル越しにもメスガキの顔が歪むのが判る。
「時間切れか……」
メスガキは、そう言うと、俺を降す……。
どうやら……一時的に「火事場の馬鹿力」を出す「魔法」か自己暗示を使っていたらしい……。
「ずいぶん、零落れてんな、あんた」
「へっ?」
「ここ何日かロクに風呂に入ってないし……酒だけは飲んでるクセにマトモな飯を食ってないだろ」
「あ……ああ……」
「臭えよ、ホント。あと……何で、そこまで霊力が落ちてる?」
「え……えっと……」
「ちくしょう……何で、あたしが……こんな事しなきゃいけね~んだよ?」
「あの……だから……その……」
「まずは……お前に何が有ったか話せ」
「へっ?」
「とりあえず……こっちでは、こう呼んでんだっけ?『NEO TOKYOの最も長い夜』事件の辺りからさ……」
ただし「だった」。過去形だ。
そうだ……俺の元・所属組織「英霊顕彰会」の凋落が始まった、あの日、「本土」から来たヤクザ達が、地元警察と広域警察の支局の「殴り込み部隊」をまとめて壊滅させたのだ。
いや……正確には……本土から来た、たった一匹の狼男が……。
警察の「殴り込み部隊」の強化服の装甲を易々と斬り裂き穿つ爪と牙を持ち……「パワー型」の強化服に単純な力で打ち勝ち、銃弾も刃物も……噂では並の「魔法」さえ通じない化物に……。
その化物さえ、本土の「正義の味方」どもにブチのめされて……今は、この「人工島」に最も近い「人工島」である台東区の「御徒町刑務所」にブチ込まれているらしい。
そして……俺の元・所属組織も……1月ほど前に壊滅した。「本土」から来た、たった4人の「正義の味方」の手によって。
俺達が、この人工島でダラけてた間、「本土」は、とんだ「修羅の国」になっていたようだ。
しかし……俺は、その「修羅の国」に逃げ込むしか無い。
2ヶ月前にようやく営業が再開した、この人工島最大の港「銀座港」。そこで博多行きのフェリーの切符を買おうとした直前……。
近くに居た、スキンヘッドに迷彩模様の戦闘服、首にはゴツい数珠をかけている警備員が、俺の方を観て、肩ポケットの無線機で、誰かと通話を始める。
ここで言う「観る」とは……霊的・魔法的な手段で、俺の「気」を探った、って意味だ。
俺が「観」られた事に気付くのを判った上で……。
もちろん……この警備員は……。
スキンヘッドに数珠。
それは、この千代田区の4つの自警団……「九段」の「英霊顕彰会」、「神保町」の「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」、「秋葉原」の「サラマンダーズ」と「アーマード・ギークス」……が壊滅した後に台東区から進出してきた2つの自警団の片方「寛永寺僧伽」の「制服」だ。
一番愚かな選択なのは判っている。
しかし……ここ数日……いや一ヶ月ぐらいだったかな? ともかく、ずっと、アルコール漬けになっていた俺の脳味噌はマトモに働いてくれない。
俺の足は反射的に走り出し……。
だが、次の瞬間、俺の足に何かが巻き付く。
多分だが……ほんの数分か数秒……転んだ時の脳震盪か何かで気を失なっていたのだろう。
俺は……スキンヘッドに数珠の連中と……色とりどりのスカジャンの連中に囲まれていた。
スカジャンの連中は……台東区から進出してきた、もう1つの「自警団」である「入谷七福神」の連中だ。
「制服」は背中に七福神が乗った宝船の絵が描かれたスカジャン。
「顔認識終りました。『英霊顕彰会』の元幹部・小堀利昭です」
スカジャンの1人が携帯電話を俺に向けて、仲間どもにそう言った。
「すまんが、御同行願おうか?『自警団』でありながら、護るべき一般人を虐殺したクズどもの一員が……無事で済むと思うなよ。おっと、ミランダ警告を読み上げるべき……ん?」
だが、次の瞬間……爆発音と煙……そして……。
涙。
鼻水。
よだれ。
催涙ガスか?
クソ……素人にも可能な「魔法使い」対策の中でも定石中の定石だ。
術を使うのに必要な精神集中が出来なくなった「魔法使い」なんてイ○ポのチ○コ以上に役に勃たねえ……。
誰かが俺の首根っこを掴み……。
ようやく目がマトモに見えるようになった時には……男用か女用かは不明だが……トイレの中。
俺の首を掴んで持ち上げてるのは……多分、二十前のメスガキ。
「あたしの事を覚えてるか?」
「あああ……」
知らねえよ。
第一……簡易式とは言え、防毒マスクと防護ゴーグルをしてるんで、顔が見えねえよ。
……と言いたい所だが……巧く言葉が口から出ない。
だが、そのマスクとゴーグル越しにもメスガキの顔が歪むのが判る。
「時間切れか……」
メスガキは、そう言うと、俺を降す……。
どうやら……一時的に「火事場の馬鹿力」を出す「魔法」か自己暗示を使っていたらしい……。
「ずいぶん、零落れてんな、あんた」
「へっ?」
「ここ何日かロクに風呂に入ってないし……酒だけは飲んでるクセにマトモな飯を食ってないだろ」
「あ……ああ……」
「臭えよ、ホント。あと……何で、そこまで霊力が落ちてる?」
「え……えっと……」
「ちくしょう……何で、あたしが……こんな事しなきゃいけね~んだよ?」
「あの……だから……その……」
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