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終章

Brave New World

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「ねえ、ガジおばあちゃん、何で、ニンゲンさんたちは居なくなったの?」
「おばあちゃんにも判らないのだ。人間さんたちは……この世界を恐竜さんたちが暮し易い世界に変えてくれたのだ。でも……今のこの世界は、人間さんたちにとっては暮しにくい世界だったのだ。人間さんたちは頭が良かったのだ。でも、人間さんたちの、とっても良い頭でも……この世界で生きてく方法を見付ける事は出来なかったのだ」
「おばあちゃん、ないてるの?」
「そうなのだ……。おばあちゃんの友達だった人間さんも、どんどん、死んでいったのだ。病気になったり……体が弱ったり……人間さんたちが好きな食べ物がこの世界に無くなって、おなかをすかせるようになっていって……人間さんたちは……みんな居なくなったのだ。おばあちゃん、悲しいのだ」
「ニンゲンさんたちって、バカだったの?」
「それが不思議なのだ。人間さんたちはすごく頭がいい筈なのに、馬鹿な事をしてしまったのだ。おばあちゃん、いまだに不思議なのだ」
 でも……ガジくんに体を貸してくれてた人間の女の子の脳味噌の中に有ったのだ……。
 なのだ。
 親玉を倒すと子分たちが全部動きを止める変な侵略者の話なのだ。
 ガジくんにとっては……それは、のだ。
 多分、人間さんは、作り話のワルモノに自分の駄目な所を投影する習性が有るのだ。
 そして、二〇世紀とかいう時代……人間さんたちは、のだ。
 でも……本当にトロいのは人間さんじゃないかなのだ。
 人間さんたちのむれは……一〇〇匹ぐらいを超えるとトロくなるのに、人間さんたちには自分達の群を一万匹・十万匹・百万匹にまで大きくしたがる習性が有ったのだ……。
 一〇〇匹の群を一〇〇個作った方が良い時でも、一万匹の群を一つ作ろうとしてしまう習性が有るのが人間さんって生物なのだ。
 でも……一万匹の群だと群全体の動きはトロくなるのだ。
 そして、十万匹の人間さんの群は、一万人の人間さんの群の百倍はトロくなるのだ。
 更に、百万匹の人間さんの群は、一万人の人間さんの群の一万倍はトロくなるのだ。
 だから……人間さんは、みんな死んで居なくなったようにしか思えないのだ。
 人間さんたちが大好きな「絆」「家族」「友情」「仲間」って言葉が人間さんたちを滅ぼしたのだ。
 人間さんたちの中にもいいヒトはいたので、人間さんたちがみんな居なくなったのは寂しいのだ。
 それに……。
 みんな齢を取って死んでしまったのだ。
 スーお姉ちゃんも、タル坊・たけ坊の兄弟も小さい頃は暴れん坊だった6姉弟も、角竜のちびすけさんも……みんな居なくなったのだ。
 そして……ガジくんもそろそろ……死んで居なくなる時なのだ……。もう、齢で体があっちこっち痛くてたまらないし……最近、思い出すのは昔の知り合いの事ばかりなのだ。
 この世界は……これから……ガジくんの孫たちに任せるのだ。
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