メタデスゲーム

第一章：アクション映画の序盤に最大の見せ場を持ってくる阿呆が居るか？

北海道小樽市某個人事業主

「一体全体、これ、何なんですか？」
「知りませんよ、こんなの」
　漫画家（自称だが）の森修一は、口座を持っている銀行の支店長に呼び出されて、ここ１時間以上、同じような押し問答をやっていた。
　普段は、同年代の平均程度のサラリーマンの半分程度の収入しかない森の銀行口座に、突如として、大企業の管理職クラスの給料一〇年分ほどの金が振り込まれたのだ。
　振り込んだ相手は「メイク・ア・デス・ウィッシュＬＬＣ日本支社」。
　ＬＬＣは日本で言う「有限会社」で認可権は各州政府にあり各州法により認可条件その多が違うらしい。
　そして、このフザけた名前の会社の本社はアメリカのカルフォルニア州。
　その名前は……おそらくは有名な慈善団体「メイク・ア・ウィッシュ財団」をもじったものだろう。
「マネーロンダリングなんてやってませんよね？」
「やってないです」
「でも、この金額は……」
「ですから、心当りが無いんですよ」
「一体全体、どうなってんですか？」
「こっちが訊きたいですよ」
「あの……失礼します」
　その時、２人が押し問答をやっていると、銀行の会議室のドアが開き、１人の若い男性の行員が入ってきた。
「どうした？」
「ちょっと調べてみたんですが……変なものが見付かりました。手掛かりになるかは不明ですが……」
「何が？」
「本州に、ウチと同じ略称の地銀が有りますよね？」
「ああ、岩手のあそこか？」
「全くの偶然で……関係有るかは不明ですが……岩手県のある市にここと同じ丁名の場所が有るみたいで、同じく略称がＨ銀の２つの銀行に同じ名前の支店が有りまして……」
「おい、待て、まさか……そんな偶然が……」
「はい……岩手のＨ銀行のウチと同じ名前の支店に、そちらの森さんと口座番号の口座が有りました」
「ちょっと待ってくれ、間違って振り込まれた金だとしても……何の為の金だとか……振り込んだのは何者だとか……えっと……それらの謎の答が……何って言うか……出てないし……」
「そもそも……その岩手の人って何者なんですか？」