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第48話
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「……じゃあ、最後に一言だけ。
さっきは助かったよ」
「……ん? なんのこと……?」
ゼマは彼女にお礼を言われるようなことをしたかなぁ、と思い出す。そしてすぐに、クリスタルロッドを魔人ハライノスに投げつけた時の事ではないのかと考えた。正確には、あの時はまだクララではなくララクだった。けれど、あのおかげで【デュアルシフト】は正常に作動した。
「っあ、もしかして、あれのこ……」
ゼマが答えようとしたとき、その先を聞かずにクララがスキルを発動してしまった。
「またね、ゼマ。
【デュアルシフト】」
今度こそ【デュアルシフト】が発動を開始した。クララの体は魔力に包まれ、別の姿へと変化していく。
「っげ、逃げられた。
でも、ちょっとは心開いてくれたかな。
もしかして、ツンデレ~?」
クララがいなくなったというのに、ゼマは彼女をいじるような発言をする。ずっとニヤニヤしており、もう次会って何を話そうか考えだしていた。
しばらくすると、【デュアルシフト】の効果により、クララはララクにバトンタッチをすることになる。
ララクは目をつむったまま顕現すると、ゆっくりと瞼を開く。さっきまでクララの視界を通して同じ景色を見ていたはずだが、なんだか違った世界を見ているようでならなかった。
目の前には、ずっと笑みをこぼしているゼマの姿があり続けていた。
「っお、戻ったんだ。あんたさぁ、あんな可愛い子ちゃんがいるなら、はやく紹介しなさいよ」
ゼマはフランクな対応で、彼の胸を肘で突っつく。何故クララの事を話していなかったのか、純粋に疑問でもあった。
「すいません。一度外に出したことあったんですけど、本人が出るの嫌がっていて」
ララクは【追放エナジー】を獲得して、少ししてから彼女の存在に気がついた。そしてどんな人物かと気になり前に出て貰ったが、全く乗り気ではなかったのだ。
理由はやはり、クララが自分の存在意義を見いだせていなかったせいだろう。
「そっか。じゃあさ、あっちから出たいって思うぐらい、仲良くなんなきゃね。
ララク、あんたもちゃんとクララを呼び出すんだよ」
「っは、はい。承知しました」
ララクは苦笑いを浮かべる。あまり話したくないクララと、それに反して仲を深めたいゼマ。板挟みになって、ララクは困惑していた。
今まではゼマと2人だけのパーティーだったので、彼女と気が合いさえすればそれでよかった。けれど、もう1人の存在が公になったことにより、そことのバランスも考えなければいけなくなった。
リーダーという大変さを、ララクは少しずつ感じ始めている。
「っあ、そうだ。どうやら力は元に戻ったみたいです。随分、体が軽いです」
ララクは封印されたいくつものスキルが、再び使用可能になったことを体感し始めている。アクションスキルに関しては使ってみないと分からないが、常時発動型のパッシブスキルは、使用可能か不可能なのかが感覚ですぐに分かるようだ。
「ようやく、最強の復活だ。
よーし、これで一件落着……。あれ?」
ゼマは厄介な相手を退けたと、大きくのけぞり背中を伸ばしていく。しかし、何か大事なことを忘れていることに気がつく。
「そうです、まだクエストは達成していません。
他の皆さんも気になりますし、先を急ぎましょう」
「はぁ、そっかぁ。今までのタダ働きかぁ。ショックぅ……。
帰りてぇ~」
愚痴をこぼすゼマ。
確かに魔人ハライノスとカエル掃討作戦に直接のかかわりはないかもしれない。
だが、クエストに全く貢献していないわけではなかった。
魔人ハライノスによって【ディスキル】されたスキルを取り戻したのは、彼だけではないのだから。
さっきは助かったよ」
「……ん? なんのこと……?」
ゼマは彼女にお礼を言われるようなことをしたかなぁ、と思い出す。そしてすぐに、クリスタルロッドを魔人ハライノスに投げつけた時の事ではないのかと考えた。正確には、あの時はまだクララではなくララクだった。けれど、あのおかげで【デュアルシフト】は正常に作動した。
「っあ、もしかして、あれのこ……」
ゼマが答えようとしたとき、その先を聞かずにクララがスキルを発動してしまった。
「またね、ゼマ。
【デュアルシフト】」
今度こそ【デュアルシフト】が発動を開始した。クララの体は魔力に包まれ、別の姿へと変化していく。
「っげ、逃げられた。
でも、ちょっとは心開いてくれたかな。
もしかして、ツンデレ~?」
クララがいなくなったというのに、ゼマは彼女をいじるような発言をする。ずっとニヤニヤしており、もう次会って何を話そうか考えだしていた。
しばらくすると、【デュアルシフト】の効果により、クララはララクにバトンタッチをすることになる。
ララクは目をつむったまま顕現すると、ゆっくりと瞼を開く。さっきまでクララの視界を通して同じ景色を見ていたはずだが、なんだか違った世界を見ているようでならなかった。
目の前には、ずっと笑みをこぼしているゼマの姿があり続けていた。
「っお、戻ったんだ。あんたさぁ、あんな可愛い子ちゃんがいるなら、はやく紹介しなさいよ」
ゼマはフランクな対応で、彼の胸を肘で突っつく。何故クララの事を話していなかったのか、純粋に疑問でもあった。
「すいません。一度外に出したことあったんですけど、本人が出るの嫌がっていて」
ララクは【追放エナジー】を獲得して、少ししてから彼女の存在に気がついた。そしてどんな人物かと気になり前に出て貰ったが、全く乗り気ではなかったのだ。
理由はやはり、クララが自分の存在意義を見いだせていなかったせいだろう。
「そっか。じゃあさ、あっちから出たいって思うぐらい、仲良くなんなきゃね。
ララク、あんたもちゃんとクララを呼び出すんだよ」
「っは、はい。承知しました」
ララクは苦笑いを浮かべる。あまり話したくないクララと、それに反して仲を深めたいゼマ。板挟みになって、ララクは困惑していた。
今まではゼマと2人だけのパーティーだったので、彼女と気が合いさえすればそれでよかった。けれど、もう1人の存在が公になったことにより、そことのバランスも考えなければいけなくなった。
リーダーという大変さを、ララクは少しずつ感じ始めている。
「っあ、そうだ。どうやら力は元に戻ったみたいです。随分、体が軽いです」
ララクは封印されたいくつものスキルが、再び使用可能になったことを体感し始めている。アクションスキルに関しては使ってみないと分からないが、常時発動型のパッシブスキルは、使用可能か不可能なのかが感覚ですぐに分かるようだ。
「ようやく、最強の復活だ。
よーし、これで一件落着……。あれ?」
ゼマは厄介な相手を退けたと、大きくのけぞり背中を伸ばしていく。しかし、何か大事なことを忘れていることに気がつく。
「そうです、まだクエストは達成していません。
他の皆さんも気になりますし、先を急ぎましょう」
「はぁ、そっかぁ。今までのタダ働きかぁ。ショックぅ……。
帰りてぇ~」
愚痴をこぼすゼマ。
確かに魔人ハライノスとカエル掃討作戦に直接のかかわりはないかもしれない。
だが、クエストに全く貢献していないわけではなかった。
魔人ハライノスによって【ディスキル】されたスキルを取り戻したのは、彼だけではないのだから。
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