月曜日が大好きな奴を僕は信じない

にゃむ

文字の大きさ
1 / 1

月曜日が大好きな奴を僕は信じない

しおりを挟む
僕は理解するのがおそい、

なんだって目の前を通り過ぎてしまったところでやっと気がつく。

人生も半ばを過ぎて、やっとそのことに気がついた。



僕は月曜日が好きな人を信じない。

その人は嘘つきに違いない。

僕は嘘をつくのが苦手だ。だから月曜日は、学校を休む。



学校ってなんだろう。怖い先生も嫌だけど、

怖い友達も苦手だ。

気分のいい時は、優しいのに意味もかからず急に怒り出す。

僕はどうしたらいいのかわからない。さっきまで笑い合っていた友達同士が、

別の場面では、悪口を言っている。僕は、むずかしいことはわかんないけど、

学校に行くのがこわい。

僕はまるでエイリアンだ。どうしたらみんな、みたいに振る舞えるのか。

「大人になんなきゃね」

いつも言われる言葉だ。

僕は“大人”の意味を考え続けている。

きっと普通は誰も気にしないくらい些細ない言葉なんだろう。




8月31日夜23時59分・・

あと、8時間で新学期の登校時間だ。

僕はもう一度鞄の中身を確認した。

筆箱、連絡ノート、絵日記、算数のプリント60枚綴り、


読書感想文。

全部まっさら。

そして一通の茶色の封筒に朱雀富江先生の手紙。





7月の終業式の日、

僕は朱雀富江先生の机から一通の手紙を盗んだ。表紙には退職届と書いてあり、

中身には先生の仕事をやめたい、ということが書いてあった、

朱雀富江先生の名前が書いてあった。

富江先生に学校をやめてほしくなかったから盗んだ。



僕は、この手紙を机の上に返さないといけない。

先生が来る前に、学校が始まる前に。

職員室に入って、元のように、富江先生の机に退職届を置いてこなくてはならない。




僕は、9月1日の朝の5時に家を出た。

まだ外はうす暗かった。

僕はゆっくり腐っていく悪臭がする歩く生ごみだ、僕に中には何もない。

こう考えている僕は、本当に僕だろうか。

幻みたいにくだらない過剰な自意識。

いっそ消えてほしい、僕の体ごと。





誰かに見られないように、足おとを消して歩いていく。

校門に先生が立っていた。僕は身を固くした。

見つかってしまった。

若い女性の朱雀富江先生だった。

「先生おはようございます」

「これはこれは」

富江先生は、片手に持った缶ビールを一口飲んだ。酒臭い。




「新学期の初登校、ごくろう、君そんな学校大好きだったっけ?」

富江先生は呂律の回らない口振りでいった。

僕は、何かおかしいとは感じながらも、

もう富江先生に一度頭を下げた。



富江先生は僕のカバンについてあるキーホルダーの人形を見た。

「それ、星環軌道都市ランダの、ミランダ・ヌーベルバーグ・ジェイド3世のフィギアじゃない?」

「はい、夏休みに家族で映画を見に行って、かいました」

富江先生は、もう一口ビールを飲んで僕の目を覗きこんでいった。

「あなたの推しキャラは、ミランダちゃんなのね?速撃ち0.03秒、

二丁拳銃の使い手、情け容赦ない巨乳の殺し屋ミランダちゃん、いいよね、可愛いいよね」



これは、ひっかけ問題か?

ここで先生の誘いにのって、

ミランダの話をしてもいいのか?

否、ダメだ。最後はきっとこうなる。

君が学校にいけないのは、そんな馬鹿みたいなアニメにのめり込んでるからね、

二学期がら二次元禁止。お母さんにもそういうから。



僕は冷静に答えた。

「いいえ、たまたま、上映記念でもらっただけです。映画は家族のコミュニケーションの一環です」

本当は一人でみた。

父親の口癖は漫画なんて早く卒業しなきゃな、だった。




僕と家族の周りでは時間の流れ方が違う。

ちょうど巨大な重力のもとでは時間がゆっくり流れるように。

僕はその重力に飲み込まれないように必死でもがいている。

家族の揉め事に巻き込まれるのなんてまっぴらごめんだ。




「二次元・・」やっぱりきた。先生は夢見るような表情で目を閉じて続きを暗唱し始めた。

「その次は三次元、三次元の後は四次元そして・・」

これは、映画星環軌道都市ランダのダイナモ博士のせりふだ。

その後は“そして給食時間がはじまる”




僕は、巨大な校門に書かれた私立戦慄学園の文字を見た。

創立200年、地元の名門校、私立戦慄学園は、

小学生の頃の僕には憧れだった。

かっこいい詰襟服、黒い帽子、男らしい応援団。

あのかっこいい詰襟服を着たい、

そうして僕は一生懸命勉強して私立戦慄学園中等部の試験に合格した。




人生で初めての華々しい目に見える結果だった。

しかし中学生になって気がついた。

人生の長さを。他の生徒の優秀さを、

そして自分の小ささを。

中学試験を合格しても世界は終わりじゃない。

高校、大学、就職、それでも広大な人生はまだ終わらない。




それに気がついたとたん、僕は人生の方から弾き出された。

僕、そんなに頑張れないや。もう限界、起き上がれない。

そうして僕は学校に行かなくなった。





「あなたは、ジョー・ハニカム・ダイレクトには興味ない?」

先生はそう言ってバッグにつけられたジョーのフィギアを僕に見せた。

僕は黙っていたが、ジョーのことはよく知っている。



ジョー・ハニカム・ダイレクト。表向きは放浪の詩人、

しかし空間認識の天才、どんな複雑な建造物も、

写真を一枚見ただけで内部の構造を忠実に再現することができる。

先の一年戦争の英雄だけれど、メンタルを破壊され、引きこもり状態にあったところを、

アリンライム3世に救われる。誰にも理解されない孤独な英雄。僕はその言葉を心に飲み込んだ。

「知らない?私、ジョーのファンなの」




富江先生は無邪気な笑顔で答えた、

朝日が先生の横顔を赤く染めていくのが見えた。

「先生はいいや、もう、私先生じゃないのよ。1学期でやめたの、先生。今日は忘れ物をとりにきただけ」





先生はそう言った。

「先生、やめたんですか?せんせいを」

「うん、今は新聞の配達している。今、朝刊配り終えたところ」

先生はビールを飲み干した。





「君にミランダの二丁拳銃を渡してあげられたらと思う」

先生は突然にいった。

「どうして?」

「大人は逃げることができる、でも子供は逃げることができない」


そうって先生は足もとの石を拾って誰もいない空に放り投げた。

「よっ」

その後、先生は目にも止まらない速さで、スカートの裾から2丁の拳銃を取り出して、

空中の石を撃った。

二発の弾丸は正確に落下していく空中の石に、同時に命中した。

「やりい!」

石は空中で粉々になり、数えきれないくらいの小さなは破片になって、学校の運動場に落ちた。

その時間わずか0.03秒。

僕が瞬きをするよりも早く、2丁の拳銃は、先生のスカートの奥におさまっていた。

「退職届は、適当に捨てといて、さようなら」

先生は、朝焼けの太陽の方に向かって歩いていった。

僕は先生に何か叫びたかったけれども、結局何も言えなかった。

そして僕の第二幕が始まった。


FIN















しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

月影 流詩亜(旧 るしあん)

先生は全てを知っていたのですね。

月曜日なんて大嫌いさ! と云う歌を思い出しました。

面白かったです。

解除

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。