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8 回想④
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さくらの葬式から程なくして、僕は大学の入学式のため、再び新幹線に揺られていた。
あの時見た車窓とはまた少し違う景色だった。
僕は部屋に入るとすぐベッドに飛び込んだ。
急に部屋が広くなった様な気がした。本来二人で住もうと考えて選んだ部屋だ、決して狭くはない。
僕はその日、現実を受け入れることが出来ず、気づくと僕は朝を迎えていた。
僕は母が卒業祝いで買ってくれたスーツに着替えて、家を後にした。
履きなれない革靴に靴擦れを心配しながら、あの日さくらと歩いた道を歩く。
大学の門はまだ高校生だった時に足を踏み入れた時とまるで違くて、とても誇らしい感覚に陥った。
入学式と書かれた大看板を抜け、順路を回って大体育館へと移動する。
周りには見知らぬ顔が大勢いて、保護者も参加可であったから一人で歩く学生は僕以外ほとんど居なかった。
高校の倍大きい体育館へとたどり着く。そして数え切れない椅子の数に圧倒される。見たことの無い他の生徒によって、全ての椅子が埋め尽くされると思うと少し怖い。
僕はゆっくりと指定されている椅子に座り指示を待っていた。
その間も近くの人とは一言も話すことなく、ただそれぞれが緊張しているように感じた。
大体育館を出たのは11時頃。
学長先生、学部長の先生による挨拶と激励。多少のサークル紹介と芸術学部による演奏を聞き、僕は多少の眠気と戦いながらその時間を乗り越えた。
学長先生が言っていた言葉を思い出す。
「大学で学ぶことは専門的なことがほとんどです。1人で悩まず、信頼出来る友達を作りなさい。」
とそのようなことを。
大学の講義は高校と全く違くて、一人でやっていくにはかなり厳しい面もある。
本当なら僕の横にさくらの姿があった。
さくらの存在が必要だった。
僕はそのまままっすぐ家に帰り、書類を書く。
バイトの申し込み。
家の近くにまだ新しい雰囲気のコンビニがあって、そこに申し込むつもりだ。
たしかに二人で暮らそうと言ったが、家賃のことを考えるとバイト無しではやって行けない。
重要な書類を一人で書くのは受験の時の願書以来で、ペンを進める手が震えてしまう。
「よし、出来た。」
誤字、脱字無し。
僕ら書類をそっとファイルに入れ、カバンの中にしまう。
そのまま僕はすぐそこにあるコンビニに向かう。いつも家の鍵を閉める時は、この家には今僕しかいないんだなと確信する。
コンビニの奥にある事務室のような部屋に連れられて、女性店員が入ってきた。
すらっとした体格。さくらより少し高い身長。黒髪のポニーテール。
「えっと、福田くんだね?私は篠原と言います」
「はい、よろしくお願いします。」
篠原さんは別紙に何かを書きながら、いくつかの質問を投げる。
「えっと、一週間でどのくらい入れる?」
「日曜日と祝日以外なら基本どこでも大丈夫です」
僕は大学の予定のコピーを一緒に提出し、日曜以外なら基本どこでも大丈夫だった。
「夜と昼だったらどっちがいい?」
「昼でお願いします」
それからも面接は続き、外に出たのはそれから1時間くらい経ってからだった。
しっかりとそのコンビニで夜食べるであろうお弁当と飲み物を買って、店を出る。
家に帰り、カーテンを開ける。
まだ明るい内だからいいようなものの、さくらの居ないこの部屋に帰ると、なんだか心が寂しくなってしまう。
僕はプリントしてあった写真を窓の近くの小テーブルの上に写真立てとして置いた。
きっとさくらの事だから、
「私よりも早く新しい人見つけなよ」
なんて言うんだろうな。
僕は立ち上がり、がらんとした部屋のソファに座りスマホを見る。
その時、さくらとの思い出の一部が蘇り、気づくと僕はスマホで検索をしていた。
「この近くのケーキ屋さん......」
まだ慣れていない土地。大学までの道もまだ不安だ。せめて近所くらいの店舗も知っておこうと色々と検索をかける。
ここから歩いて15分くらいのところに自営業のケーキ屋さんがある。
お店の看板メニューにはチーズケーキが目立つように掲げられていた。
「これだ......!」
僕はスマホを握ったままガッツポーズ。
本当ならさくらと二人で買いに行く未来も、あったかもしれない。
だがそれは数量限定のため今日はもう売り切れらしかった。
僕はスマホを置いて、さくらの写真の前に行って、大学で貰った書類やら説明書を見ていた。
でもその時の僕の頭には何も入ってこなくて、あの日からなんだか全てが流れ作業のように感じてしまう。
家の隅で一人、思い描いていた未来が突然消え去った僕にとって、さくらの居ないこの現実に耐えられなかった。
さくらの元に行こうかと何度も思った。
でも絶対さくらは止めるだろうし、僕はさくらの分まで生きなきゃ行けない。
前に、進まなければならない。
その日僕はさくらの写真の前で、一人でこの生活を乗り越えていくことを決意した。
あの時見た車窓とはまた少し違う景色だった。
僕は部屋に入るとすぐベッドに飛び込んだ。
急に部屋が広くなった様な気がした。本来二人で住もうと考えて選んだ部屋だ、決して狭くはない。
僕はその日、現実を受け入れることが出来ず、気づくと僕は朝を迎えていた。
僕は母が卒業祝いで買ってくれたスーツに着替えて、家を後にした。
履きなれない革靴に靴擦れを心配しながら、あの日さくらと歩いた道を歩く。
大学の門はまだ高校生だった時に足を踏み入れた時とまるで違くて、とても誇らしい感覚に陥った。
入学式と書かれた大看板を抜け、順路を回って大体育館へと移動する。
周りには見知らぬ顔が大勢いて、保護者も参加可であったから一人で歩く学生は僕以外ほとんど居なかった。
高校の倍大きい体育館へとたどり着く。そして数え切れない椅子の数に圧倒される。見たことの無い他の生徒によって、全ての椅子が埋め尽くされると思うと少し怖い。
僕はゆっくりと指定されている椅子に座り指示を待っていた。
その間も近くの人とは一言も話すことなく、ただそれぞれが緊張しているように感じた。
大体育館を出たのは11時頃。
学長先生、学部長の先生による挨拶と激励。多少のサークル紹介と芸術学部による演奏を聞き、僕は多少の眠気と戦いながらその時間を乗り越えた。
学長先生が言っていた言葉を思い出す。
「大学で学ぶことは専門的なことがほとんどです。1人で悩まず、信頼出来る友達を作りなさい。」
とそのようなことを。
大学の講義は高校と全く違くて、一人でやっていくにはかなり厳しい面もある。
本当なら僕の横にさくらの姿があった。
さくらの存在が必要だった。
僕はそのまままっすぐ家に帰り、書類を書く。
バイトの申し込み。
家の近くにまだ新しい雰囲気のコンビニがあって、そこに申し込むつもりだ。
たしかに二人で暮らそうと言ったが、家賃のことを考えるとバイト無しではやって行けない。
重要な書類を一人で書くのは受験の時の願書以来で、ペンを進める手が震えてしまう。
「よし、出来た。」
誤字、脱字無し。
僕ら書類をそっとファイルに入れ、カバンの中にしまう。
そのまま僕はすぐそこにあるコンビニに向かう。いつも家の鍵を閉める時は、この家には今僕しかいないんだなと確信する。
コンビニの奥にある事務室のような部屋に連れられて、女性店員が入ってきた。
すらっとした体格。さくらより少し高い身長。黒髪のポニーテール。
「えっと、福田くんだね?私は篠原と言います」
「はい、よろしくお願いします。」
篠原さんは別紙に何かを書きながら、いくつかの質問を投げる。
「えっと、一週間でどのくらい入れる?」
「日曜日と祝日以外なら基本どこでも大丈夫です」
僕は大学の予定のコピーを一緒に提出し、日曜以外なら基本どこでも大丈夫だった。
「夜と昼だったらどっちがいい?」
「昼でお願いします」
それからも面接は続き、外に出たのはそれから1時間くらい経ってからだった。
しっかりとそのコンビニで夜食べるであろうお弁当と飲み物を買って、店を出る。
家に帰り、カーテンを開ける。
まだ明るい内だからいいようなものの、さくらの居ないこの部屋に帰ると、なんだか心が寂しくなってしまう。
僕はプリントしてあった写真を窓の近くの小テーブルの上に写真立てとして置いた。
きっとさくらの事だから、
「私よりも早く新しい人見つけなよ」
なんて言うんだろうな。
僕は立ち上がり、がらんとした部屋のソファに座りスマホを見る。
その時、さくらとの思い出の一部が蘇り、気づくと僕はスマホで検索をしていた。
「この近くのケーキ屋さん......」
まだ慣れていない土地。大学までの道もまだ不安だ。せめて近所くらいの店舗も知っておこうと色々と検索をかける。
ここから歩いて15分くらいのところに自営業のケーキ屋さんがある。
お店の看板メニューにはチーズケーキが目立つように掲げられていた。
「これだ......!」
僕はスマホを握ったままガッツポーズ。
本当ならさくらと二人で買いに行く未来も、あったかもしれない。
だがそれは数量限定のため今日はもう売り切れらしかった。
僕はスマホを置いて、さくらの写真の前に行って、大学で貰った書類やら説明書を見ていた。
でもその時の僕の頭には何も入ってこなくて、あの日からなんだか全てが流れ作業のように感じてしまう。
家の隅で一人、思い描いていた未来が突然消え去った僕にとって、さくらの居ないこの現実に耐えられなかった。
さくらの元に行こうかと何度も思った。
でも絶対さくらは止めるだろうし、僕はさくらの分まで生きなきゃ行けない。
前に、進まなければならない。
その日僕はさくらの写真の前で、一人でこの生活を乗り越えていくことを決意した。
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