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番外編 ルドルファン王国訪問記
その6
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ルドルファン王国で数日過ごした後、いよいよ今回の訪問における主要行事がやって来た。
今パレットたちがいるのは、運動会の様子を見下ろす観客席だ。
椅子に座るオルレイン導師の隣にパレットが立ち、その背後にジーンとガーランドが立っていた。
そのパレットたちの隣の席に、王族たちが座っている。
ちなみにアヤは魔法具を壊さないように不参加だ。
アヤは運動会を毎年楽しみにしているらしく、観戦できないことをずっと嘆いていた。
そんなアヤの代わりに、ハルキが聖獣の子供を抱いて座っている。
聖獣の子供は赤白柄の上着を着ており、時折ハルキが聖獣の前足を持って、客に向けてピコピコ動かしている。
なんでもマスコットキャラクターに任命された聖獣のお仕事なのだろうだ。
ミィがその仕草が気になったのか、真似て前足を動かしていた。
普段はなにもない王城前の広場に運動会の会場として、大きな階段状の客席が設置されている。
そこには貴族や庶民が詰めかけて、冬の寒さなど感じられないほどに熱気で溢れかえっている。
「運動会、とはどんな行事なのですか?」
パレットはジーンが必要な軍事行事だと聞いていたので、大々的な演習の類かと思っていた。
だがこの観客の熱狂ぶりを見ると、そういうのとはちょっと違う気がした。
「騎士たちの普段の訓練を、騎士じゃない人たちに知ってもらおうという目的で始まったんだけれどね。
今では冬の初めの一大行事だよ」
パレットの疑問に、エクスディアが答えてくれた。
「赤騎士と白騎士で別れて点を競うんだ。
毎年なかなか白熱するよ」
運動会を始めたきっかけは、訓練をしたがらない高位貴族の子息からなる白騎士を、どうにか真面目に訓練させるのが目的だったそうだ。
なんとこの運動会の発案者も、件の聖女様であるアヤだという。
聖女様という名前は、ルドルファン王国ではどんなことにも出てくる。
運動会の実行委員長を務めているのは、オルディアだ。
風来坊だったオルディアも運動会を始めて以来、どこへ出かけてもこの時期になると帰って来るようになったという。
――王太子殿下の前では、やりたくないは通じないというわけね。
だがこの運動会という行事、果たしてマトワール王国でも同じようにできるだろうかと、パレットは疑問に思う。
「以前からいる貴族の騎士を相手にするには、不向きだな」
パレットと同じことを考えたらしいジーンが、そう言ってバッサリと切って捨てた。
「己の家が恥をかくのが目に見えている行事を、王城の貴族らがやりたがるとは思えん」
同じくガーランドも頷く。
先の騒動で騎士の数を大きく減らしたとはいえ、未だ細剣で剣舞を舞うことが騎士であるとする連中は多数いる。
彼らは恐らく大反対するだろう、とガーランドは語る。
ルドルファン王国で白騎士たちをやり込められたのも、王族たちの力が強いからだ。
自らの意見を通すのに必死なマトワール王国の王族に、同じことを求めるのは酷というものだ。
「だが時代の流れで厭われるようになった、本来の騎士の役割を守ってきた家を、再び盛り上げるには最適かもしれぬ」
ガーランドのように副団長の身内という高位貴族ならばともかく、位の低い騎士の家は、古い教えを貫くのも容易ではない。
細剣を持って剣舞を舞う騎士たちからの圧力に負けて、心を病んで辞めた者が多くいたそうだ。
――腕力では上でも、数の暴力には勝てなかったのね。
だが今、そういった騎士たちに再度声をかけつつ、兵士から騎士になった者たちにも、本来の騎士の姿を説いているそうだ。
騎士が拭抜けたせいで防衛を全て兵士が担う羽目になり、無理が重なった結果、兵士の死亡率は高くなった。
しかし兵士の背後にもっと強い軍事力が控えているとなると、兵士の力では足りない場面で助けを呼べる。
そうすれば、若く未熟な兵士が命を落とさずに済む。
――そんな未来が、近いといいわね。
パレットたちがおしゃべりしている間に、実行委員長のオルディアの挨拶が終わり、競技が始まった。
初めの競技はパレットたちにもわかりやすいものだった。
走る速さを競うのは、勝ちがわかりやすくていい。
次の綱引きという綱を引き合う競技も、力自慢の騎士が集うと圧巻だった。
ただ、謎なのが玉入れと大玉ころがしだ。
玉入れは玉が籠により多く入った方が勝ちだそうだ。
「これって、どうすれば玉が入るの?」
走り回り、時折魔法で威嚇する籠の乗った棒を見て、パレットは眉を寄せる。
「あの馬鹿者……」
宰相が頭が痛そうな顔をする。
なんでも玉入れを監修しているのはアリサで、去年までは魔法の威嚇はなかったのだとか。
「騎士同士の争いというよりも、もう騎士とアリサの争いだね。
アリサも玉を入れさせまいと躍起になってるし」
奮闘している騎士を眺めつつ、そう言ったエクスディアが苦笑した。
大玉ころがしも、砦の破壊工作に使われそうなすごい大玉が出てきた。
あれを少しずつ動かしていく騎士たちの筋肉の盛り上がりがすごい。
一度転がればずっと転がってくれるのだが、その代わり軌道修正がきかないらしい。
競技場で退避命令が飛び交っていた。
「アレはさすがに無理だ」
「我が国は、もう少し難易度の低い競技を考えよう」
ジーンとガーランドが難しい顔をしている。
午前中はこうして楽しく観戦していたのだが、ジーンにとっては午後からが本番だ。
一般参加競技の障害物競争に、ジーンが参加するのだ。
会場設営のために休憩時間が設けられ、競技場では裏方の騎士たちがさまざまな仕掛けを施していく。
振り子のように揺れる複数の大きな刃、鋭いナイフの飛び交う場所、底なし沼、吹きあがる炎の壁、などなど。
障害物というには物騒なものが設置してある。
「ちょっと……大丈夫?」
あれに出場することになるジーンを、パレットは青い顔で見上げた。
「ははぁ、派手に演出していることで」
ジーンも障害物の数々を見て苦笑している。
「心配は無用です。
ちょっと見た目を怖くしてありますけれど、あれらは全て兵士ならば訓練必須のものばかりです」
外面モードのジーンが、冷静に解説する。
「そう、なの?」
全く同様している様子ではないジーンに、パレットは目を瞬かせる。
「振り子の刃は攻撃を避ける訓練、ナイフは飛び道具を避ける訓練、炎は対魔法士の訓練。
他のものも全て、訓練内容を工夫したに過ぎません。
派手な見た目で動揺を誘う意味もあるかと思います」
「さすがマトワール王国自慢の騎士、全てお見通しというわけか」
ジーンの解説に、王様がおかしそうに笑った。
会場設営が終わり、特別参加としてジーンの名前が会場に響き渡ると、観客から歓声が上がった。
なおも不安を拭えないパレットに、ジーンは外面でなくいつものようにニヤリと笑った。
「パレット、上着と剣を頼む」
「……頑張って!」
パレットはそれらを受け取りながら、声援を贈る
「少々派手にやって構わん」
オルレイン導師にそそのかされ、ジーンが頷く。
「よろしく、ミィ」
ジーンが声をかけて、尻尾を振るミィの背中に跨る。
「みゃ!」
ミィは「任せろ!」と言うように鳴いて、ジーンを乗せたまま観客席を駆け下りて、競技場へと跳び出した。
「きゃあ!」
観客から悲鳴が上がる中、ジーンを乗せたミィが競技場へと降り立った。
噂の魔獣を一目見たいと熱望している観客へのサービスだが、ミィの姿を見た観客は盛り上がっていた。
ジーンの他に出場するのは、腕自慢の冒険者や傭兵が多い。
ここで目立つことで、仕事が増えるのを狙っているのかもしれない。
参加者が全員そろったところで、パァン、と合図の魔法具が鳴り、参加者が一斉に走り出す。
ジーンが走る後ろに、何故かミィも付いて走る。
「ミィ、あなたは戻って来るのよ!」
パレットが慌てて制止を呼びかけるものの、ミィは止まらない。
パレットの隣でオルレイン導師は楽しそうにしているので、さては彼の入れ知恵かもしれない。
ジーンは振り子の刃を上手く避け、飛んでくるナイフを手刀で叩き落す。
底なし沼も、小さな飛び石をうまく蹴って飛び越える。
ミィはといえば、そもそも魔獣に普通の武器は通用しないので、障害物は木の枝や小石を避けるくらいの感覚でしかないだろう。
底なし沼も、ミィの跳躍力をもってすればひとっ跳びだ。
「ジーンもミィもすごいわ!」
パレットは思わず前のめりになる。
そうこうしている内に、ジーンに最後の難関の炎の壁が差し迫る。
どうするのかとパレットがドキドキしながら見ていると、ジーンは走る速度を落とさず、炎が薄い場所を狙って超えた。
衣服に燃え移ろうとする火を、うまく転がって消している。
続くミィはどうするのかと思ったら。
「グァ!」
大きく口を開けると、ゴウッと勢いよく炎を吐いた。
すると――
ドガァアン!
魔法具であろう炎とミィの炎がぶつかり、大きな爆発が起こった。
「ミィ、なに対抗しているの!?」
パレットは思わず頭を押さえる。
「なるほど、魔獣の炎は魔法の炎に近いのだな」
「ミィの炎は、また威力が上がっていますね」
宰相とオルレイン導師の魔法士二人が、冷静に観察している。
ミィは爆発で一瞬消えた火の中を、悠々と通り抜けた。
最後はミィが走るジーンを追い抜き、一位でゴールした。
「こらミィ、このやんちゃめ!」
ジーンがミィの首根っこを掴んで揺さぶると、ミィがご機嫌でじゃれ付いている。
魔獣が一位という番狂わせもあったが、ジーンは大歓声を受けながら無事に出番を終えた。
その後も様々な競技を観戦し、馬を使わない騎馬戦という大迫力の競技を楽しみ、運動会は閉会となった。
今パレットたちがいるのは、運動会の様子を見下ろす観客席だ。
椅子に座るオルレイン導師の隣にパレットが立ち、その背後にジーンとガーランドが立っていた。
そのパレットたちの隣の席に、王族たちが座っている。
ちなみにアヤは魔法具を壊さないように不参加だ。
アヤは運動会を毎年楽しみにしているらしく、観戦できないことをずっと嘆いていた。
そんなアヤの代わりに、ハルキが聖獣の子供を抱いて座っている。
聖獣の子供は赤白柄の上着を着ており、時折ハルキが聖獣の前足を持って、客に向けてピコピコ動かしている。
なんでもマスコットキャラクターに任命された聖獣のお仕事なのだろうだ。
ミィがその仕草が気になったのか、真似て前足を動かしていた。
普段はなにもない王城前の広場に運動会の会場として、大きな階段状の客席が設置されている。
そこには貴族や庶民が詰めかけて、冬の寒さなど感じられないほどに熱気で溢れかえっている。
「運動会、とはどんな行事なのですか?」
パレットはジーンが必要な軍事行事だと聞いていたので、大々的な演習の類かと思っていた。
だがこの観客の熱狂ぶりを見ると、そういうのとはちょっと違う気がした。
「騎士たちの普段の訓練を、騎士じゃない人たちに知ってもらおうという目的で始まったんだけれどね。
今では冬の初めの一大行事だよ」
パレットの疑問に、エクスディアが答えてくれた。
「赤騎士と白騎士で別れて点を競うんだ。
毎年なかなか白熱するよ」
運動会を始めたきっかけは、訓練をしたがらない高位貴族の子息からなる白騎士を、どうにか真面目に訓練させるのが目的だったそうだ。
なんとこの運動会の発案者も、件の聖女様であるアヤだという。
聖女様という名前は、ルドルファン王国ではどんなことにも出てくる。
運動会の実行委員長を務めているのは、オルディアだ。
風来坊だったオルディアも運動会を始めて以来、どこへ出かけてもこの時期になると帰って来るようになったという。
――王太子殿下の前では、やりたくないは通じないというわけね。
だがこの運動会という行事、果たしてマトワール王国でも同じようにできるだろうかと、パレットは疑問に思う。
「以前からいる貴族の騎士を相手にするには、不向きだな」
パレットと同じことを考えたらしいジーンが、そう言ってバッサリと切って捨てた。
「己の家が恥をかくのが目に見えている行事を、王城の貴族らがやりたがるとは思えん」
同じくガーランドも頷く。
先の騒動で騎士の数を大きく減らしたとはいえ、未だ細剣で剣舞を舞うことが騎士であるとする連中は多数いる。
彼らは恐らく大反対するだろう、とガーランドは語る。
ルドルファン王国で白騎士たちをやり込められたのも、王族たちの力が強いからだ。
自らの意見を通すのに必死なマトワール王国の王族に、同じことを求めるのは酷というものだ。
「だが時代の流れで厭われるようになった、本来の騎士の役割を守ってきた家を、再び盛り上げるには最適かもしれぬ」
ガーランドのように副団長の身内という高位貴族ならばともかく、位の低い騎士の家は、古い教えを貫くのも容易ではない。
細剣を持って剣舞を舞う騎士たちからの圧力に負けて、心を病んで辞めた者が多くいたそうだ。
――腕力では上でも、数の暴力には勝てなかったのね。
だが今、そういった騎士たちに再度声をかけつつ、兵士から騎士になった者たちにも、本来の騎士の姿を説いているそうだ。
騎士が拭抜けたせいで防衛を全て兵士が担う羽目になり、無理が重なった結果、兵士の死亡率は高くなった。
しかし兵士の背後にもっと強い軍事力が控えているとなると、兵士の力では足りない場面で助けを呼べる。
そうすれば、若く未熟な兵士が命を落とさずに済む。
――そんな未来が、近いといいわね。
パレットたちがおしゃべりしている間に、実行委員長のオルディアの挨拶が終わり、競技が始まった。
初めの競技はパレットたちにもわかりやすいものだった。
走る速さを競うのは、勝ちがわかりやすくていい。
次の綱引きという綱を引き合う競技も、力自慢の騎士が集うと圧巻だった。
ただ、謎なのが玉入れと大玉ころがしだ。
玉入れは玉が籠により多く入った方が勝ちだそうだ。
「これって、どうすれば玉が入るの?」
走り回り、時折魔法で威嚇する籠の乗った棒を見て、パレットは眉を寄せる。
「あの馬鹿者……」
宰相が頭が痛そうな顔をする。
なんでも玉入れを監修しているのはアリサで、去年までは魔法の威嚇はなかったのだとか。
「騎士同士の争いというよりも、もう騎士とアリサの争いだね。
アリサも玉を入れさせまいと躍起になってるし」
奮闘している騎士を眺めつつ、そう言ったエクスディアが苦笑した。
大玉ころがしも、砦の破壊工作に使われそうなすごい大玉が出てきた。
あれを少しずつ動かしていく騎士たちの筋肉の盛り上がりがすごい。
一度転がればずっと転がってくれるのだが、その代わり軌道修正がきかないらしい。
競技場で退避命令が飛び交っていた。
「アレはさすがに無理だ」
「我が国は、もう少し難易度の低い競技を考えよう」
ジーンとガーランドが難しい顔をしている。
午前中はこうして楽しく観戦していたのだが、ジーンにとっては午後からが本番だ。
一般参加競技の障害物競争に、ジーンが参加するのだ。
会場設営のために休憩時間が設けられ、競技場では裏方の騎士たちがさまざまな仕掛けを施していく。
振り子のように揺れる複数の大きな刃、鋭いナイフの飛び交う場所、底なし沼、吹きあがる炎の壁、などなど。
障害物というには物騒なものが設置してある。
「ちょっと……大丈夫?」
あれに出場することになるジーンを、パレットは青い顔で見上げた。
「ははぁ、派手に演出していることで」
ジーンも障害物の数々を見て苦笑している。
「心配は無用です。
ちょっと見た目を怖くしてありますけれど、あれらは全て兵士ならば訓練必須のものばかりです」
外面モードのジーンが、冷静に解説する。
「そう、なの?」
全く同様している様子ではないジーンに、パレットは目を瞬かせる。
「振り子の刃は攻撃を避ける訓練、ナイフは飛び道具を避ける訓練、炎は対魔法士の訓練。
他のものも全て、訓練内容を工夫したに過ぎません。
派手な見た目で動揺を誘う意味もあるかと思います」
「さすがマトワール王国自慢の騎士、全てお見通しというわけか」
ジーンの解説に、王様がおかしそうに笑った。
会場設営が終わり、特別参加としてジーンの名前が会場に響き渡ると、観客から歓声が上がった。
なおも不安を拭えないパレットに、ジーンは外面でなくいつものようにニヤリと笑った。
「パレット、上着と剣を頼む」
「……頑張って!」
パレットはそれらを受け取りながら、声援を贈る
「少々派手にやって構わん」
オルレイン導師にそそのかされ、ジーンが頷く。
「よろしく、ミィ」
ジーンが声をかけて、尻尾を振るミィの背中に跨る。
「みゃ!」
ミィは「任せろ!」と言うように鳴いて、ジーンを乗せたまま観客席を駆け下りて、競技場へと跳び出した。
「きゃあ!」
観客から悲鳴が上がる中、ジーンを乗せたミィが競技場へと降り立った。
噂の魔獣を一目見たいと熱望している観客へのサービスだが、ミィの姿を見た観客は盛り上がっていた。
ジーンの他に出場するのは、腕自慢の冒険者や傭兵が多い。
ここで目立つことで、仕事が増えるのを狙っているのかもしれない。
参加者が全員そろったところで、パァン、と合図の魔法具が鳴り、参加者が一斉に走り出す。
ジーンが走る後ろに、何故かミィも付いて走る。
「ミィ、あなたは戻って来るのよ!」
パレットが慌てて制止を呼びかけるものの、ミィは止まらない。
パレットの隣でオルレイン導師は楽しそうにしているので、さては彼の入れ知恵かもしれない。
ジーンは振り子の刃を上手く避け、飛んでくるナイフを手刀で叩き落す。
底なし沼も、小さな飛び石をうまく蹴って飛び越える。
ミィはといえば、そもそも魔獣に普通の武器は通用しないので、障害物は木の枝や小石を避けるくらいの感覚でしかないだろう。
底なし沼も、ミィの跳躍力をもってすればひとっ跳びだ。
「ジーンもミィもすごいわ!」
パレットは思わず前のめりになる。
そうこうしている内に、ジーンに最後の難関の炎の壁が差し迫る。
どうするのかとパレットがドキドキしながら見ていると、ジーンは走る速度を落とさず、炎が薄い場所を狙って超えた。
衣服に燃え移ろうとする火を、うまく転がって消している。
続くミィはどうするのかと思ったら。
「グァ!」
大きく口を開けると、ゴウッと勢いよく炎を吐いた。
すると――
ドガァアン!
魔法具であろう炎とミィの炎がぶつかり、大きな爆発が起こった。
「ミィ、なに対抗しているの!?」
パレットは思わず頭を押さえる。
「なるほど、魔獣の炎は魔法の炎に近いのだな」
「ミィの炎は、また威力が上がっていますね」
宰相とオルレイン導師の魔法士二人が、冷静に観察している。
ミィは爆発で一瞬消えた火の中を、悠々と通り抜けた。
最後はミィが走るジーンを追い抜き、一位でゴールした。
「こらミィ、このやんちゃめ!」
ジーンがミィの首根っこを掴んで揺さぶると、ミィがご機嫌でじゃれ付いている。
魔獣が一位という番狂わせもあったが、ジーンは大歓声を受けながら無事に出番を終えた。
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